作品タイトル不明
そんなわけで、言った側から。
セレンデの王族とラーハイトが接触した際、その隣にはアークリアルがいた。アークリアルがその時のことを溢していたのをツドァリが覚えていたのだ。
ツドァリの報告を聞き、私は即座にアークリアルの元にモラリを送り込んだ。ユグラの星の民が本腰を入れてセレンデの王族を調べようとすれば、王族達はアークリアルの口を封じようと何かしらの手を打ってくると読んだからだ。
だがモラリを送り込んだ理由は、その時に接近してきたセレンデの手の者を捕らえ、情報を得るつもりだったからであり、今後ユグラの星の民と交渉する際、優位になれるよう恩を得ようと思ったからだ。
「まさか、アークリアルをここまで追い詰められる者がいるとはね」
ベッドに寝かされたまま、意識の戻らないアークリアルを見下ろす。呼吸は落ち着いているが、当分は様子を見る以外に手の施しようがない。
アークリアルが受けた傷は主に二箇所。胸の傷は深いことには深かったが、今では完全に処置が済んでいる。問題は頭の方、頭蓋を破壊し脳へと届いた一撃の方だろう。
仕組を大まかに解明されている他の臓器とは違い、脳の仕組みは未だ謎が多い。脳に干渉する魔法はあっても、その原理は不確かなのだ。ゆえに回復魔法で形だけは再生できても、何かしらの障害が残ることが多い。
治療措置の済んだ彼が目覚めないのは、脳にダメージを受けたことが原因なのは明らか。だがこれ以上我々にできることはもうない、あとはアークリアル自身の回復力に期待する以外にないのだ。
「申し訳ありません……」
「君が謝る必要はないよ、モラリ。君がツドァリと共にセレンデに向かったからこそ、ツドァリが情報を思い出せ、アークリアルの元に君を送り込む判断ができたのだから。君のおかげでアークリアルは助かったんだからね」
私がアークリアルのことを分析し、その後に向かったとされる場所にいくつか当たりをつけた。モラリはそこを巡り、アークリアルの元へと辿りつけた。
モラリがアークリアルを見つけた時には既に、彼は刺客と戦闘をしており、モラリは目の前でアークリアルが倒れる光景を目撃した。
刺客の方も相当な傷を受けていたが、当然のように立っており、アークリアルにとどめを刺そうとしていたらしい。瀕死であっても、アークリアルを追い詰めた実力者と戦うのは危険と判断したモラリはアークリアルを連れて即座に逃走。そして今に至る。
「しかしアークリアルが敗れるとは……。やはり落とし子でしょうか?」
「決めつけはしない方が良いね、ヤステト。アークリアルを打倒したという意味だけなら、それこそ何の力を持たない一般人にも成し遂げられたのだからね。ただまあ……そちらの可能性が高いことは否めない」
ユグラの星の民がアークリアルを抑え込めたのは、アークリアルの弱点を、才能に全てを任せ自身の経験として身につけてこなかった経験の浅さを利用したものだ。今回の刺客はその才能すら凌駕し、その一撃をアークリアルへと到達させている。
モラリから聞いた情報を含めて考えれば、その刺客がどのような手段でアークリアルを追い詰めたのかは想像できる。できるのだが、それは理論上の話であり現実感があまりにもない。それを可能とできるのはやはりユグラの落とし子としての才能を持つ者なのだろう。
まさか本拠地として利用していたセレンデに、まだ知らぬ落とし子がいたとは。おそらくはその才能が異端として周囲に認識される前に王族関係者に拾われたと考えられるが……。
「ユグラの星の民にはこのことを?」
「刺客の姿はモラリが目撃している。その情報を伝えればすぐにその刺客の素性は調べられるだろう。しかし……」
ラーハイトに協力した王族が、アークリアルのことを思い出し刺客を送り込んだ。これはそんな簡単な話ではない気がする。そもそもアークリアルを殺せるほどの刺客を持つ王族ならば、その刺客をユグラの星の民に差し向ければ済む話ではないか。
多人数と戦うのに向いていない刺客なのか、刺客にユグラの星の民を殺せない要素でもあるのか。いや、それだけならば他にも取れる手段はあるだろう。
私が出した結論は、アークリアルがラーハイトと共に接触した王族と、刺客を送り込んだ王族が別だという答え。ならばその刺客を送り込んだのはワシェクト王子か、ヒルメラ王女辺りだろう。
ユグラの星の民の存在は王位継承を狙う者達にとって、天秤を揺らす存在となる。上手く他の王子達の秘密を暴き、王位継承の優位を奪うのが目的なのだろう。故に、その情報をアークリアルや私から得ることを防ごうと刺客を送り込んだのだ。
ワシェクト王子とヒルメラ王女ならば私がユグラの星の民と接触したことは知っているはず。その上でアークリアルを狙った……アークリアルの情報が私のところまで上っていないと判断した要素があった?ユグラの星の民の動きが他の王子に対し均等過ぎるか、当たりの王子を後回しにしているか、その辺だろう。
「リティアル様?」
「少しばかり様子見をするとしようか。下手につつくと彼の身が危険に晒される可能性が高い」
分かっているのは、彼に協力的な王族側にアークリアルを追い詰めた刺客がいるということ。現段階で三人の王族に疎まれている彼に、新たな障害を増やさせるのはあまりよろしくない。
◇
ラクラが暗殺されかかり、メリーアが拐われそうになった。その報告を聞いても同胞の顔に驚きはなく、ただ静かに俺達の報告を聞いていた。
「生きていた女性ですが、金で雇われており、合図と共に私にぶつかれとの指示を受けていただけでしたな」
「こちらの老婆もそうだ。俺達が話を聞きに来たら、上手いことメリーアを納屋の方へと分断しろと命令されていただけだったな」
俺達は捕らえた男達を運ぶ為に応援としてマセッタを呼び、そのついでに老婆に問い詰めを行った。しかし結局のところこれと言った情報は得られなかった。
ラクラを襲った男とは違い、俺の捕獲した男達だが、奴らは毒を保有してはいなかった。実行犯を捕まえられたことは喜ばしいのだが、恐らくは……
「『迷う腹』で男達の情報を抜いて見たが、手紙からの指示に従っただけで誰の手先かさえ自覚していなかった」
「だよなぁ、はぁ……」
デュヴレオリの報告を受け、同胞は少しばかり間の抜けた声でため息をついた。男達はゴロツキのような存在で、商会や貴族の実働部隊のようなものだろう。計画を告げられそれを実行するだけの、王族からすれば捕まっても何一つ痛くない連中だ。
デュヴレオリの詳しい話によると、奴らの溜まり場では定期的に仕事内容を記された手紙と金の入った袋が届けられ、それに従っていただけに過ぎないとのこと。手紙を運んだのは一般人、恐らくは匿名の手紙を受け取って指示された立場なのだろう。
「気に食わんな。未熟な者共に指示を出すだけで、自身は高みの見物などと。成果を出す気がまるで感じられん」
「こういうのは出ればラッキー程度のつもりで仕掛けてるんだよ。基本的な目的は警告や脅しの方だ。『さぁ、ここからはどんどん手を出していくぞ』ってな」
この様子だと、療養中のハークドックにも何かしら仕掛けてくる可能性は高い。同胞が既にバトラー・アーミーをベッドの下や箪笥の影に潜ませているので、直接的な危害には対応できるとは思うが……。
そういえば先日の報告でハークドックのところにツドァリが現れたらしいが、同胞は放っておけと流していたな。リティアルから何かしらのアプローチがあったのではと思ったのだが……ツドァリ個人の用事でもあったのだろうか?
「念の為、ハークドックの見舞いに行くマセッタの送り迎えは俺が受け持とう」
「そうしてくれると助かるぞ、エクドイク。それでメリーアなんだが――」
名前を呼んだことで、メリーアの体がビクリと震える。危うく捕まりかけたことを気にしているのだろう。
「同胞――」
「これからは決して一人にならないようにし、エクドイクの鎖を常備するように。迂闊にトイレにも行けないから、水分補給を含めた体調管理をこれまで以上に徹底してくれ」
同胞は俺の言葉を遮り、その決定をメリーアに伝えた。俺がメリーアのフォローを入れると予測し、その必要はないと遮ったのだろう。確かに同胞がその判断をしてくれるのであれば、俺から言うことは何もない。
「は、はい」
「前にも言ったが、メリーアが狙われる可能性については十分にあると警戒していた。エクドイクの対応で防げたのだから、それで問題ない。怖いと思うのであれば言ってもらえれば拠点での作業にも回せられるから、そこは自分の判断で決めてくれ」
「大丈夫です!」
「なら良し。確かにメリーアは他の連中よりも実戦経験が浅いかもしれないが、『俺』よりも百倍以上マシだ。『俺』なら背後からの奇襲で最悪死んでた」
「はは……」
メリーアが乾いた笑顔をしているが、同胞は別に冗談のつもりで言ったわけではないのだろう。この世界の住人と同じ扱いで攻撃された場合、下手をすれば同胞は本当に死にかねないわけなのだからな。
そしてその次の日、同胞とイリアスを連れて街を歩くことになった。メリーアも大丈夫そうではあったのだが、少しだけ瘤が残っていたので休ませておくことにしたのだ。
「しかし大丈夫なのか、同胞。昨日の今日だから仕掛けてくるとは思えないが……」
「心配ならメリーアの数倍過保護に頼む。プライドとか微塵もないから気を使わずに守れるぞ」
「わ、わかった。……そこまで分かるのだな」
「メリーアも聖騎士として成長したいと思っている立場だからな。足手まといだと思われたくないことくらい誰でも察せる。そんなメリーアを見たらお前がどう接するかもな」
あの時俺がメリーアを庇うような発言をすれば、その分だけメリーアは自分のことを責めてしまっていたかもしれない。多少張り詰めているような印象は受けるが、仲間のことを考えられているだけ、まだ同胞の心には余裕があるようだ。
今日は特にこれといって決めた情報収集先があるわけではない。これまで俺達が集めた情報をまとめ、同胞なりにこのセレンデの街を見て回りたいとのことだ。
「――良い国だとは思うのだが……な」
街を歩いていると、イリアスがポツリと溢した。良い国であることは十分共感できる。それぞれの人が自分の人生を生きており、その懸命さが彼らの声や表情から伝わってくる。セレンデの街並みも、他の国と同じで活気はあるのだ。
そんなイリアスも、最後に言い淀むほどにはこの異質さを感じとっているのだろう。時折街並みの中から感じる俺達に向けられる視線、それに込められた感情を。
そこまで強い敵意は感じないが、警戒されているのは間違いない。多くの者が、『あの連中を監視しろ』と命じられているのだろう。これだけの視線、おそらく同胞もある程度は感じているに違いない。
しかしそんなこととは裏腹に、同胞はイリアスに向けて皮肉混じりの笑顔を浮かべてみせた。
「あんまり気を張り詰めても仕方ないぞ。殺気とか感じたら教えてくれりゃいいさ。視界の外の感情には反応できないもんでな」
「それは頼まれるまでもないが……」
同胞からすれば、突然の奇襲については俺やイリアスに全てを任せるしかない。考え過ぎれば心を消耗するだけだ。みすみす王子達の狙い通りになることはないと考えているのだろうか。
そのまま街を歩き続け、同胞は手頃な者に話しかけては雑談を行っていた。
メリーアが行っていたそれに近い印象だったが、会話を切り上げるタイミングが早かったり遅かったりとまばらだ。会話をしながら情報が引き出せる人物かどうかを見極めているのだろう。
「ワシェクト様の遺跡好きはやっぱり有名だね。貴族や商人だけでなく、私達のような国民にも声を掛けて遺跡の保護の協力を求めているんだよ。まあ私らは金とかは出せなくても、休日に清掃の手伝いをするくらいはできるからね。過去の遺産を大切にすることは悪くないと思うんだよ」
「へぇ。清掃って中には入らないんですか?」
「下手に触ると壊れちゃうからね。罠がある遺跡もあるわけだし、命知らずでもなければ勝手に入ることはないよ。でもワシェクト様が企画する遺跡探検ツアーは結構な参加者がいるかな。やっぱり専門家の指示があれば安全だし、皆興味はあるんだろうね」
なるほど。一般人が関わりたがらないのは商会や貴族の影響があるもの。こうして国としての特産とかには特に抵抗感なく情報を与えてくれるのか。こんな会話でも、得られるものはあったりするわけだ。
例えば先程の話から、遺跡の保護には貴族や商会から寄付金があると判断できる。その金の流れを調べれば、ワシェクトを支援している者達の影響力などを調べることができるだろう。不自然な金額が流れていた場合は、そこに何か別の裏があるとも読み取れる。
「相当な遺跡好きだとは聞いていますが、行動力も凄いですね。ヒルメラ王女もその影響を受けているそうですし」
「まあそうだね。ヒルメラ様はワシェクト様の手伝いばかりしているし、もう少し自発的に何かをしても良いとは思うけどね」
「ヒルメラ王女はあまり他の王子とは交流があるようには感じませんけど、不仲なんですかね?」
当たり障りないのない会話だったように感じたのだが、同胞が突然切り込むような質問をした。この人物はワシェクト派のように感じられるが、ワシェクトが親身にしているヒルメラに対して何か棘のあるような物言いだった。それが気になったのだろうか。
俺も同胞が話すところはよくみているが、結構同胞の考えが読めるようになってきたな。話術の技能については……まだまだ差があるとはいえ。
「年の差があるからってのもあるだろうけどね。ただ、ちょっとした噂もあるんだよね」
「噂?」
「あー、いや。なんでもない。王族の陰口は叩きたくないんでね」
「はは、どこに耳があるか分かりませんからね。血が繋がっていないとか、変な事を噂するものじゃないですよね」
「――ッ、あ、ああ。良い噂ならまだしも、悪い噂は流すもんじゃないよな!」
今の反応、同胞は狙って引き起こさせたのか。そのまま同胞は話を切り上げ、人々が休息用に集う広場へと移動した。そこには子供連れの母子が多くいて、親達に見守られながら子供達が楽しそうに遊んでいる。
「同胞、さっきの話だが……」
「結構ありえない話でもないんじゃないか?ヒルメラがワシェクト達と血が繋がっていないってのも」
これまでの調査で分かっていることだが、ヒルメラ王女の母親は王妃となる前、現在のセレンデ王の弟の妻だったそうだ。しかしその弟が死亡した後、セレンデ王が娶ったとされており、その後一年以内にヒルメラ王女を出産している。
つまりは王妃になる前からヒルメラ王女を身籠っていた計算になる。その父親がセレンデ王でない可能性は大いにある。そしてこの考察をセレンデの民はそれなりに意識しているようだ。
「ヒルメラ王女と他の王子の血が繋がっていないとしても、俺達にはあまり関係がないのではないか?」
「直接的にはないな」
「間接的にはあるということか……分かるか、イリアス?」
「ヒルメラ王女がセレンデ王の弟の子だった場合、先代の王位継承を巡る争いでセレンデ王の弟を支持していた者達がヒルメラ王女に付く可能性は高いな」
同胞はその通りだと頷く。なるほど、十年前のヒルメラ王女が幼くても、彼女を利用し権力を取り戻そうとしていた輩がいれば、ラーハイト達に協力していた可能性は高い。
ただヒルメラ王女の周囲を調べた限りでは、そのような人物の影は今の所見当たらない。……何にせよ、この情報は同胞がヒルメラ王女自身の心の在り方を見極める上で役立つのだろう。
「さーて、次はマダム達と仲良くなるとしますか!」
「マダム……あの母親達のことか。どうするつもりだ?」
「そりゃあエクドイク、お前の出番さ」
最初は首を傾げたが、すぐに結果と共に同胞の意図が読めた。
同胞は近くにあった露店で子供向けの人形を購入し、その人形の可動部分と俺の鎖をくっつけた。つまるところ俺に人形使いとして大道芸をやれと言うことらしい。
糸の張りと緩みを利用し、人形を生きているように見せる技術だが、俺の鎖ならばそもそも自在に動かせるのだから造作もない。
二体の騎士の人形を操り、ターイズで見た騎士達の手合わせの光景を思い出しつつ、互いに激しく戦っているかのように演出すると、一人二人と子供達が寄ってきて、目を輝かせながらその光景を眺めていた。
母親達は最初俺達のことを訝しむように見ていたのだが、同胞が大道芸の練習をしたいのでぜひご協力をと言いながら話しかけると、その警戒心は徐々に解けていった。そして今では互いに楽しそうに談笑している。
「へぇ、それだけ質がいいのに、そんなに安く買えるんですね」
「配下の方が集められた食材から、王子達の口に入るものを選ぶの。選ばれなかった食材はそのまま市場に流れるのよ。その分ちょっと傷みが早いけど、質は保証されているから競争が激しいのよね」
王族の口に入るものの流通が独自のものだとは聞いている。手配する者から調理する者、毒味役まで厳選されているそうだが、随分と手間の掛かりそうな話だ。毒殺の歴史が多い国ならではの特徴とも言える。
だがそれよりも驚くのは同胞の会話を引き出す能力だろう。魔法など一切使わず、相手の警戒心を掌握し、喋りたくなるように言葉を誘導していく。
あとなかなか見ない笑顔をしているが、あれが作り笑いだとは到底思えない。俺もあれくらい笑えれば、もう少し情報収集も上手くなるのだろうか。
イリアスは何とも言えない目で主婦達と仲良くしている同胞を見つめている。慣れてはいるのだろうが、呆れることすら放棄してしまっているかのような顔だ。俺が酒に酔いつぶれて地面で寝ているラクラを見た時も、似たような顔をしていたような気がする。
「おつかれ。鎖でできることまた増えたな」
「そうだな。しかし、大道芸として食べていくのであれば、小道具はもう少し本格的にする必要があるな」
「いや、真面目に検討しなくていいぞ」
同胞は子供を抱き上げたりしながら戯れている。最初は警戒していた母親達も今ではその光景を微笑ましく眺めていた。短期間でそこまで信用を得られるものなのか。
子供はどちらかと言えば俺が操っていた人形の方に興味を示している。指でつついたりしているので、それに合わせて人形を動かすと、とても嬉しそうにはしゃぎだしている。普段なら俺の風貌を恐れ、近づこうともしない子供達がこんなにも簡単に笑うとは……不思議なものだ。
「ではそろそろ片付けて戻るとしよう」
「そうだな。よーし、お前達、今日はここまでだ!また今度遊ぼうな!」
「えー、やだー」
「もういっかい、たかいたかいー!」
子供達の警戒心まですっかりと……いや、元々子供のような性格のラクラに懐かれているのだから、この反応はそこまで驚くべきことではないのかもしれない。
「わりと腕が限界なんだが……くそう、仕方ない!ほぅら、並べ!おい、エクドイク、イリアス!お前らも笑って見てないで、こいつらを満足させるのを手伝え!」
「それは構わないが……俺が抱き上げると子供達が痛がるのではないか?」
「イリアスの腕力で掴まれるよりマシだろ」
「ちょっと待て、それは聞き捨てならないぞ?」
子供達は聞き分けよく一列に並ぶ。同胞は腕まくりをして、一人ずつ子供を持ち上げていった。
その様子を見て、どこかほっとする自分がいる。ラーハイトとの戦いが決着してからも、同胞は常に張り詰めた空気の中にいた。
「イリアス、ちゃんと加減しろよな。高い高い言いながら放り投げるなよ」
「するかっ!」
だからこんな穏やかな時間が少しでも長く、同胞の心を癒やしてくれれば良いのだがと願わずにはいられない。同胞の隣で微笑んでいるイリアスも、同じことを考えているのだろう。
「おい、エクドイク」
「なんだ?」
「そこの子供、刺客だ。捕縛しろ」