作品タイトル不明
次に包囲するは。
ラーハイトから聞かされていた情報に誇張はなかった。ユグラの星の民は個としての強さは皆無でも、その在り方は十分脅威に値する。
あの若さであの染まりよう、あれは自ら進んで人の心の闇を覗いてきた者の眼だ。
何を好き好んでそんな道を選んだのかは定かではないが、少なくともこの世界の裏に生きる者達と同等以上であるとの認識をしなくてはならない。
空き家とされる屋敷の敷地内へと入り込む。そこには既に我らが同胞、レイティスの中でも戦闘に長けた者達が、個の識別を避けるための目深なローブを羽織り佇んでいる。
それぞれが各国の暗部にも引けを取らない工作の達人。ジェスタッフ達が国に対し反旗を翻した際に、国の抵抗力を奪う仕掛けとして機能させる予定の者達だ。
その数六十名、物事の背後で動く分ならばこれで十分に機能する。
「リティアル様、緊急の招集とありましたが。如何なる理由で?」
「私の素性がバレました。これ以上はクアマにいられません」
周囲の者達が僅かに動揺しているのがわかる。私は若くして世界に認められる冒険者として名を馳せていた。その勝ち取った信用はそう簡単に揺らぐものではないからだ。
しかしジェスタッフ達の心が動かぬよう、この『真眼』を持つ私自らが接触をせざるを得なかったのが裏目に出た。
「皆さんには最後に、このクアマの機能をある程度落として貰おうと思います。各員、当初の予定であった者達の始末をお願いします」
「しかし緋の魔王が動くまではまだ時間が……」
「そうですね。しかし一度弱りさえすればそれを口実に新たな駒を導く切っ掛けにも、他国の意識を誘導する手段にもなります」
クアマが自力で立て直そうというのであればその隙を突けばよい。他国に協力を求めればそれはそれで他国の意識が分散されるので構わない。
ここまで忍び込ませたレイティスの者達を使わずに下げるのは、只の逃走行為でしかない。
ある程度の犠牲は出るが、そこはまた補充を行えば良い。
伝達役の者を手招きで呼び寄せる。まずはクアマの現状の把握からだ。
「件の者の様子はどうですか?」
「リティアル様が監視しろといった黒髪の男ですが、現在他の仲間、クアマ兵を連れて南の拠点へと進軍しております」
「やはりそこを嗅ぎ付けましたか。敵ながら見事ですね」
モルガナのギルド本部には僅かながらに痕跡を残してあった。それは意図的に用意した囮の拠点の情報だ。だが囮だと悟られぬために、その場所を見つけ出すにはそれ相応の知恵が回る必要がある。
この短期間に解き明かし、粛々と包囲の準備を進めているのは流石というべきだろう。
しかしそれだけで安心するには早い。
「監視している者が精神魔法の影響を受けている可能性は確認しましたか?」
「はい。三人態勢でそれぞれ違う箇所からの報告を受け取っております」
「引っ掛かったフリ、というわけでもないようですね」
「慎重過ぎではないでしょうか? そもそもあの南の拠点でさえ、囮としては勿体ない立地だと思うのですが」
「最善の場所というのは敵でも予測できます。これが軍事ならば我先にと確保する利点はありますが、私達の行うことは秘密裏の革命です。敵と同じ土台に立つこと自体が愚策となります。囮としてこれ以上に美味しく見えるようにした方が良いのです」
あの男ならばこれが囮である可能性も十分に考えているでしょう。ですが確認せずにはいられない。最も厄介な位置に陣取られれば困ることは事実なのだから。
「包囲が済み、拠点がもぬけの殻だとわかれば再び兵を展開しての捜索が始まるでしょう。そのタイミングを以て混乱を招き、可能な限りかき回しましょう」
「「はっ!」」
同胞達が一同に返事をする。私も可能な限り行動をし、機会があればラーハイトの救出とクアマからの脱出を行わねば。
「あら? 随分と少ないわね? 国を転覆させるだなんて聞いていたから、てっきりあと十倍はいると思ったのだけれど?」
響いた声にほぼ全員が同時に探知魔法を発動させる。ここにいるのは全員、あらゆる異変に対して反射的に行動できるように訓練された者達だ。その技術を与えた私も例外ではない。
探知魔法を使用し、この場にいる同胞以外の存在を探り、そして思考が僅かに止まった。
囲まれている。人ではない。今この場は無数の魔物によって包囲されている。
それを認識するのと同時に視界が暗くなっていくのがわかる。魔法の類ではない。
この屋敷の周囲が物理的な壁により、月明かりから隔絶されたのだ。
分かったことは二つ、一つは突如屋敷を囲んだ黒い壁が無数の魔物、悪魔達を変化させたものであるということだ。
そしてもう一つは、囲まれた空間内に二つ、明確な敵がいるということ。
一人は即座に分かった。先ほどギルド本部にて遭遇したユニーククラスの悪魔だ。
そしてもう一人は……。
「まさか、こんな所に直接出向いてくるとは思いませんでしたよ。『紫の魔王』」
煌びやかな宝石の装飾品を豪勢に使用した紫のドレス。そのドレスよりもさらに艶やかな紫の長髪。それらを引き立たせる、透き通るような白い肌。
過去の歴史において、最も広大な土地を魔界に染め、数多の英雄たちを籠絡した魔王が佇んでいた。
「心外ね? 私は彼の仲間なのだから、私が動くことだってあるでしょう?」
「あの男は出し抜けたと思ったのですがね」
「彼は自分が監視されていることを考慮していたわ? だから素直に貴方の囮に引っかかりにいったのよ?」
「……それで、貴方は私をどうやって見つけたので?」
「簡単よ、普通に匂いで追っただけよ? デュヴレオリの『嗅ぎ取る鼻』はあらゆる事象を嗅ぎ分けられるけど、普通に猟犬としても優秀なのよ?」
「主様、その表現はどうかと。犬程度に劣る私ではありません」
「あら怒ったの? 他に嗅覚の良い動物を知らないのよね? でもそういうわけよ? 小細工をしていたようだから、最もシンプルな方法で追いかけさせてもらったわ?」
体臭ならば当然消している。それでもなお嗅ぎ分けられるという時点で生物としての鼻ではない。私が持つ『真眼』に近しい異能の類なのだろう。
それだけでも厄介ではあるのだが、単純な実力差でもなかなかに辛いものがある。
あと二十年も若ければ、あるいはといったところではあるが……。
いや、省みる点はそれだけではない。監視され、私に囮情報が上手く機能したと認識させ、このような手段で追い詰める。あの男、最初からこの展開を狙っていたのだろう。
今回は私が一手足りなかったと素直に負けを認めるほかない。
「貴方達は彼の明確な敵よね? なら思う存分、殺しても良いのよね?」
予想に反して前に出てきたのは執事服の悪魔ではなく、紫の魔王。
私の眼が教えてくれている。多少の動きはできるが隣の悪魔に比べればその能力は酷く拙い。
魔力の禍々しさはあるが、その絶対量は計測できる程度でしかない。
「主様、やはりここは私が……」
「デュヴレオリ、貴方は私を男の帰りを待つだけの女にしたいのかしら?」
「そんなことは……。ですがあの男も私に任せろと……」
「ええ、彼は心配性だもの? その言葉はとても嬉しいわ。だけど大切に扱われるだけじゃ不満なのよ?」
「……ですが」
「もちろん無理はしないわ。私が相手をするのはそこにいる初老の男以外の全員だけにしてあげる。貴方はあの男が何かしないように牽制していなさい?」
「随分と高く見積もられましたね。昔は名のある冒険者として自信はありましたが、今ではすっかりと衰えているのですが」
「貴方のことなんてどうでも良いわ? 彼が貴方を危険だと言ったから、私はその忠告を素直に聞いて最善の対処をするだけよ?」
なるほど、余程あの男の言葉を信用しているとみえる。分析も十分に済んだ。少しばかり揺さぶってみるとしよう。
「生前は名のある姫君だったようですが、よくもあのような悪党の言葉を信じられますね?」
「あら? 良く分かったわね?」
「相手の経緯を見抜ける眼がありますのでね。貴方がどのような過程で魔王となったのか。大よそは察することができます」
「違うわ、私が言ったのは彼が悪党だってことよ? ほら、彼って初対面の人には凄く親切でしょ?」
「私相手には最初から敵対心が滲んでいましたのでね。私には分かります。貴方は良い様に利用されている。あの男は貴方が望む世界の夢を見せて、自らの目的のために貴方をコントロールしようとしている」
「――それで?」
紫の魔王は妖艶な笑顔を浮かべたまま、わざとらしく首を傾げる。
今の言葉は彼女の意識内にある印象のはず、自覚していること。ならばその本心に届いているはずだ。
「貴方はそれで良いのですか?」
「良いに決まっているでしょう? あの人は私に素敵な夢を見せてくれている。そのために尽くしてくれている。彼が私だけのものになることはなくても、私が彼だけのものになれる。ならせてくれる。それはとても幸せな夢だとは思わない?」
「夢はいつか覚めますよ」
「でも思い出には残るわ。泡沫の夢でも美しいものは美しいのよ?」
やれやれ……恋する乙女とは盲目、人間も魔王もそこは変わらないようだ。
少なくともあの魔王に疑いの心を根付かせられるのは、この世界の何処を探してもあの男本人以外にいないのだろう。
この状況をどうにかするのであれば、まずはあのデュヴレオリという悪魔の脅威を払う必要がある。
魔王の配下とはいえ、その強さは遥かに紫の魔王を超えている。
そして本人の持ちうる騎士道にも劣らぬ忠誠心。こちらも心を揺さぶることは無理だろう。
ならば誘いに乗るとしよう。幸運なことにこの場における最大の強者は私一人で抑えることができる。
「私の言葉では籠絡は無理なようですね。残念です」
「そういえば貴方の本名を知らないのよね? リティアル=ゼントリー、貴方の本当のお名前を教えて貰えるかしら?」
最初から私の名が偽名だと踏んでいたようですね。話の通りに名から相手を籠絡するのであれば、演技次第で良い隙が作れたと思ったのですが。
「はっはっはっ、『籠絡』の力を持つ相手に名乗れるほど錯乱しちゃいませんよ」
「ふふ、流石に知られているわね。でも良いわ。私が『籠絡』したいのはもうあの人だけなの。貴方への尋問は他の者に任せるわ」
「では魔王のお手並みを拝見。――同胞らよ、魔王はその禁忌により死しても復活する。だが今の肉体が死ねば蘇るまで数世代分もの時が掛かる。それは同胞らにとって、レイティスにとって有益な時間稼ぎとなる。各員、歴史の怨念と共に正義を果たせ」
◇
リティアルの宣言と同時に、後方に控えていた者達が素早く散開する。
ある者は光を纏い、ある者は影に溶け込む。正面から迫る者、左右から挟み込む者、背後から狙う者。
その速度も十分に速い。私はともかく、主様には全てを見切れるとは思えない。
しかし私が動じることはない。ただ冷静にリティアルの動向を監視する。
万が一を起こせる存在はこの男だけ。しかし主様の強さを知っているのは私だけだ。
主様は正面にいる相手を目で追っている。しかし左右に揺れながら迫りくる敵を前に、目で追うこと自体が面倒だと判断したのだろう。瞳を閉じて嗤った。
「ダメね、目で追えないわ? ――追う必要もないのだけれど」
それは闇が破裂したと例えるべきだろうか。主様を中心に無数の影が、周囲へと爆発的に伸びて行く。
その影には夥しい数の爪が、角が、牙が、不規則に突き出しており、迫りくる人間達の血肉を抉った。
身に纏った上級悪魔達、それらを本来の体積へと戻す全方位への飽和攻撃。
圧倒的質量、圧倒的面積による制圧力は、周囲に迫っていた者達を一瞬で肉片へと変貌させた。
「随分な数ですね。服だけではない、その宝石も悪魔達の集合体ですか」
「ええ、服の悪魔達を展開すると肌が露出しちゃうのよね? 彼に指摘されたのだけれど、私としては別に平気なのよ? でも彼以外に見せる必要もないのだから、素直に増やすことにしたのよ?」
「あの男であっても見せる必要はないと申し上げます」
主様の衣類は悪魔を繊維状に変化させ編み込んだもの。だがその身に纏っている宝石はその密度をさらに高め、途方もない数の悪魔を内包している。
その質量を解放するだけでも、人間にとっては多大なる脅威となるだろう。
欠点があるとすれば、主様はあの男が傍に居てはその力を存分に振るえない。今の全方位攻撃は、私も巻き込まれている。
質量が多過ぎるため、細かい作業には不向きな攻撃なのだ。
私の障壁ならば防ぐことは可能だが、他に味方が傍に居ては巻き込む恐れが高い。
今の一撃で数は半分にまで減った。多大な犠牲を払い、人間達が学習したのは、主様が真に魔王であるという事実。
誰もが距離を取り、間合いを計り、知恵を巡らせている。
しかしそれも無駄なこと。虫がどう足掻いたところで、駆除しようとする強者の前には無力でしかない。
主様が手を払う動作に合わせ、影が黒壁まで伸び、主様の視界に映る者を全て薙ぎ払う。
飛び上がり回避した者は、主様が視線を向けるのと同時に伸びあがった無数の影により串刺しにされる。
正面にいて、生き残った者はリティアルと僅か数名のみ。左右や背後に散っている者達は視界に入らぬようにと、主様の視界に入ることを恐れながら立ち回っている。
「随分と大雑把な戦い方ですね」
「虫を潰すのに技巧を凝らす必要があるの?」
「この、魔王がぁ!」
一人が背後から奇襲を仕掛けた。しかしその刃が主様に届くことはない。
主様の纏う悪魔達に自我はない。されど、機能はある。無数の眼がその動きを捉え、高密度の悪魔の肉体が障壁となって攻撃を遮る。
止められた刃から白い煙が立ち込める。刃に対し、浄化魔法のエンチャントを付与していたのだろう。
主様はゆっくりと振り返り、剣の刺さった箇所を見る。
「あら? 見事ね? 悪魔が一匹分死んでしまったわ?」
「くそっ! なんて硬さ――なっ!?」
「折角だから、その分を貴方で埋めさせてもらうわね?」
地面から這い出た影が男を捕らえる。そして四肢を掴んだ瞬間に、その骨が粉々に圧し砕かれた音が周囲に響いた。
「が、あッ!?」
「大丈夫よ? 無駄にはしないわ? 鍛錬した人間の亡骸は、触媒にはとってもいいのよ?」
「な、なんだこれは……体が……まさか……俺を悪魔に変質させているのか!?」
「人を模した悪魔を生み出すのだから、人を素材にすれば手っ取り早いでしょう?」
「や、やめろ! 俺は悪魔なんかになりたくない!」
「勘違いしちゃダメよ? 貴方が悪魔になるわけじゃないのよ? 貴方で悪魔を作るのよ? でも貴方の形になるのは嫌よね? 一度砕かなきゃね?」
「ひ――」
叫び声を上げようとした男は、そのまま影に飲まれて行った。
そして主様の頭上で、形容しがたい音が鳴り響き、文字通りの血の雨が降り注ぐ。
「主様、わざわざ返り血を浴びるような真似をしなくとも……」
「良いじゃない。その方が魔王らしいでしょ?」
「お体が穢れます」
「問題ないわよ。私の悪魔達は人の血を余すことなく舐めとってくれるのだから」
血を浴びた主様を一瞬で影が包む。そして直ぐに返り血の痕跡すら残っていない、美しい姿のままの主様が姿を現す。
「あ、でも少しくらい残しておけば、あの人に舐めとってもらえるかしら?」
「あの人間は人の血を舐めるような嗜好はないかと。あっても流石に止めますが」
その後の戦いは、いや、戦いと呼ぶには相応しくない。一方的な虐殺が行われた。
中には逃げ出そうとする者もいたが、既に悪魔によって固められた黒壁によって退路は塞がれている。主様は残った者達を丁寧に、丁寧にと潰していった。
「無数の悪魔を手足の如く従える『籠絡』の姫。基本能力の低さからは想像もできない戦闘能力ですね」
残るのはリティアルと、その周囲にいる二人。それ以外は全て息絶えた。
主様は意図的にこそ狙わなかったが、リティアルを数度巻き込んで攻撃を行っていた。
しかし奴はそれを難なく回避しきってみせた。実力だけで見ればエクドイクとも互角に戦えると見るべきか。
「取り巻きの二人は掛かってこないのかしら? その男の傍に居られると、あまり狙いたくなくなるのよね?」
「それは失礼。私の指示で残しておいたのですよ」
「そう、なら仕方ないわね?」
主様は影を伸ばして攻撃を行う。その速度は『穿つ左腕』にも劣らない。
だが迫る影を前にして、三人は動かない。
攻撃が命中する直前、膨大な質量を誇る影が弾かれた。
「――あら?」
影を遮ったものの正体は鼻で嗅ぎ取るまでもなく、目視で捉えることができた。
それは結界、それも異常なまで強固なものだ。恐らくは私の張る障壁よりも……。
「……デュヴレオリ、割りなさい」
「御意」
主様は目の前の結界を見て、不穏な気配を感じ取ったのだろう。躊躇することなく私へと命令を下した。
私はそれに応じるのと同時に『駆ける左脚』で距離を詰め、『轟く右脚』を結界の上から叩き込む。
しかし結界はビクともしない。この強度はラクラ=サルフの張っていた物よりも遥かに上だ。
結界を張っているのはリティアルの左側にいる男か。三人を覆う規模の結界でこれほどの強度とは。
こうなると絶えず攻撃を続け魔力切れを狙うか、『 頤使(いし) す舌』を使うか。
「リティアル様、準備が整いました」
「ご苦労様です。では撤退しましょう」
「――ッ!?」
右側にいた者が何かの魔法を発動させた瞬間、三人の姿が消失する。
鼻で周囲を探知、反応せず。『削る尻尾』にて物理的に探るも手ごたえなし。
奴らは完全にこの場所から消えた。これは一体……。
「……今のは転移魔法ね? 発動まで見れたのは随分と久しぶりね?」
「転移魔法……ですか」
「ええ、貴方達悪魔が影を伝って移動するのと似て、空間を伝って移動する高度な魔法よ? 私が知る限りじゃ転移魔法を使えるのはユグラ、『黒』、『色無し』くらいなのだけれど……人間にもいたのね?」
「臭いも追えそうにありません。逃げられました」
「あら、あらあら? どうしましょう? 彼になんて報告すればいいのかしら?」
主様が笑顔を崩し、真顔で私に尋ねてくる。額には僅かな汗、本気で焦っているようだ。
「……取り敢えず私に委ねた後ですから、私のせいにしておけば良いかと」
「その判断をしたのは私なのよね? あ、でもいっそ叱られるのも良い思い出になるかしら? どんな風に怒ってくれるのかしら?」
主様は自らの体を抱きしめて、妄そ……瞑想に入られた。
このお方は、本当に逞しくなられた。ただこれで良いのかどうかは分からない。
……本人が楽しそうなのだから、良いのだろう。ならば私も幸せということだ。多分。多分。