軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第7話(ブライアン視点)

けがらわしい。

有力商人たちは、最近勢いのある俺に、自分の娘を嫁がせて親戚関係となり、自分の事業をさらに拡大しようと思っているのだろう。

けがらわしい。

けがらわしい。

そして、欲深い。

こんな欲にまみれた結婚で、幸せになれるはずがない。

『本当の愛』が、見つかるはずがない。

……俺がずっと探している、『本当の愛』

それさえ見つかれば、きっと、この『人間不信の呪い』も解けるはずだ。だって『本当の愛』は、憂い、悩み、疑い、苦しみ、惑い――すべての心の闇を照らすほど、明るく、素晴らしいものに決まっているから。

しかし、どれだけ探しても、『本当の愛』は見つからなかった。

何人か、誠実そうな女性と付き合ってみたが、やはり駄目だった。

どうしても、こう思ってしまうのだ。

『彼女たちは、どうせ俺が事業で稼いだ金が目当てに違いない』と。

そして、こうも思ってしまうのだ。

『今は商売がうまくいっているからいいが、失敗したら、きっと逃げていくぞ、あのケイティのように』と。

……俺は、どの女性とも、三ヶ月以上付き合うことができなかった。

誰と付き合っても、大体三ヶ月で、俺の不信感は頂点に達してしまうのである。

多額の手切れ金を渡して『付き合いを解消したい』と言うと、ほとんどの女は困惑しながらも、喜んで金を受け取って去っていく。……そのたびに、俺の心には『それ見たことか。金目当ての卑しい女め。俺は騙されないぞ』という、暗い喜びとでも形容すべき、虚しい勝利の感情が揺らめいた。

ただ、中には、目に涙を浮かべ『あなたのこと、本当に好きだったのに』と言い、銅貨一枚すらも受け取らずに去っていく女もいた。……もしかして彼女となら、『本当の愛』を見つけることができたのだろうか?

いや、違う。

そんなはずはない。

『本当の愛』があったのなら、俺の元から去っていくはずなど、ないのだから。

どんな理由があろうと、姿を消した人間との間に、『本当の愛』などあるはずがない。かつて、『本当の愛』を築けると信じたケイティも、結局はいなくなってしまった。みんなみんな、偽物だ。俺は、偽物の愛なんか、いらない。

そんなある日のこと。

あのローラリアが、結婚するという話を聞いた。

相手は、従兄のアークハルト氏だそうだ。

アークハルト氏は有能だけど、少々軽薄で女好きなのが玉にきずとのことだったが、ローラリアと交際を始めてからは、彼女一人を誠実に愛し、今こうして、結婚することになったという。

久々に、良いニュースだった。

俺は誰も信じないが、落ちぶれた俺を見かね、救おうとしてくれたローラリアに対しては、今でも感謝の念を持ち続けている。彼女が幸せになるのは、素晴らしいことだ。

ふと、ローラリアが言っていたことを思い出す。

『ねえ、ブライアン、『本当の愛』って、どんなものだと思う?』

彼女は真剣な瞳で、俺にそう問いかけたのだ。

ローラリアもきっと、俺と同じく、『本当の愛』を探し続けているのだろう。

そして、そのローラリアが結婚する。

……と言うことは、彼女は『本当の愛』を見つけたのか?

そうなんだな。

そうでなければ、結婚などするはずがない。

ああ。

羨ましい。

『本当の愛』とは、どんなものなのだろう?

ローラリアに会って、是非聞いてみたい。

しかし、それはできない。

俺はもう、二度とローラリアに会わないと、心に決めていた。

……かつて、図々しくも婚約を結びなおそうとした俺に対し、ローラリアはこう言った。

『一度破棄した婚約を、自分の立場が悪くなったからまた結びなおしてくれっていうのは、いくらなんでも、私に対して失礼すぎると思わない? あなた、結局、自分のことしか考えてないのよ。ほんの少しでも私のことを尊重する気があったら、間違ってもこんな行動はしないはずだわ』

おっしゃるとおりである。

一言一句、反論のしようもない。

俺はその言葉を聞いた時、初めて、自分自身の愚かさと無神経さ、そして身勝手さに気がつき、心から自分を恥じて、涙した。……だからもう二度と、ローラリアの意思を軽んじる、無礼な行動はとらないつもりである。

ローラリアは、俺のことが好きではない。

彼女曰く、嫌いでもないらしいが、好きでないことは間違いない。

そんな、好きでもない俺に、いつまでも周囲をウロウロされては、鬱陶しくて仕方ないだろう。だから俺は、二度と彼女の前に姿を現さないと、心に決めている。……もうこれ以上、彼女に嫌な思いをさせたくはないから。

だいたい、ローラリアが『本当の愛』を見つけ、これから愛しい人と新しい生活を始めようという時に、ノコノコ出て行って『本当の愛ってどんな感じだった?』なんて聞くのは、いくらなんでも無粋すぎる。……本音を言えば、とても気になるが、やはり、聞くことはできない。

ただ、祝福の気持ちと感謝を込めて、花束くらいは送るべきだろう。

俺は使いの者に頼み、最も高級な花束に、『本当の愛を見つけたんだね、おめでとう』というメッセージカードを添えて、結婚式場に届けさせた。そして、俺自身も、必ず『本当の愛』を見つけてみせると、決意を新たにしたのだった。

それから、数週間後のこと。

仕事も一段落し、事務所で一休みしていると、思いがけない来客――本当に、少しも、想像すらしていなかった来客が、やってきた。