軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

74 18歳 3

「えっ? 姉ちゃん結婚するの? 誰と?」

フリッツは目を大きく見開いて私に詰問する。

「それは聞いていないけど、婚約しているんだから相手はエドだと思うわよ」

「そこは一応聞かないと。でも当分会えなくなるのかぁ。俺も会いたかったよ」

そうだよね。フリッツやマルは会いたかったよね。話したいこともいっぱいあるだろうに、どうしてアネットは弟たちではなく私にだけ会いに来たのだろうか。もしかして私に遠慮したのかしら。

「もう少し詳しく聞けばよかったわね。あれだったら会いに行ってみる?」

セネット家の門番は厄介だけど、門に立っていれば会えるかもしれない。

「う~ん、いいや。迷惑になるといけないし」

「そう? アネットは迷惑だとか思わないわよ、きっと」

「たぶんね。でも庶民の弟がいるって恥ずかしいかもしれないだろ。婚約者に知られることにでもなったら悪いよ」

「エドなら知ってるから大丈夫よ」

「だから相手がエドモンド様とは限らないだろ。もし違ってたら大変じゃないか」

「そうかなぁ。婚約していたんだからエドで間違いないと思うけど」

「とにかく迷惑になることはしたくないんだ。それにきっといつか会いに来てくれるだろうから、その時にいっぱい話すことにするよ。俺たち姉ちゃんに頼ってばかりだった。同じ年になった時、姉ちゃんがどれだけ大変だったかよくわかったよ。あの頃はそれが当たり前だと思っていたから受け入れるだけだった。だからありがとうって言いたいんだ」

俺たちというのはマルのことだろう。二人はずっと気にしていたんだね。私はそのことにずっと気づかなかった。やっぱりアネットにはまだまだかなわないね。

「そっかぁ。そうだね。いつかきっと言えるわよ。何年か後には会えるようなこと言ってたもの」

「その時に情けない姿は見せられないから、明日からも頑張るよ」

最近のうどんはフリッツが作っている。クレープも上手に作れるようになったし、フリッツが作るチキン南蛮は店のナンバースリーに入るほどの人気がある。

いつか二号店を出したいと言っていたけど、きっとアネットが再訪するときは立派な店主になってマリーと一緒に店を切り盛りしていることだろう。

「でもそうなると、この店の従業員が私一人になってしまうわね。サラもいずれは宿屋で食堂をするって言ってたし…」

「な、何を言ってるの? ねえ、何の話? もしかして俺を追い出すつもりなの?」

突然私が訳の分からないことを言い出したと、フリッツが慌てている。

「いつかフリッツがマリーと二号店を出したときのことを考えていたのよ。そうするとこの店には私だけになるのかなって思って」

「なんだ。そんなのまだまだ先の話だろ」

フリッツが肩をすくめる。でも私はそれほど先の話だとは思っていない。もう一軒店を出すくらいのお金は貯まっているし、マリーとフリッツが結婚した時に、二号店を出すのも悪くないと思っている。そのくらいの甲斐性がないとマリーの父親を説得できないと思う。

「そんなこと言ってるとマリーに逃げられるわよ。マリーだっていつまでも待ってはくれないでしょ」

「それについては俺だって考えているよ。でも俺の結婚よりアンナの結婚の方が先だろ。やっぱり順番ってものがあるからさあ」

「それこそ、余計なお世話よ。私の結婚を待っていたらいつになるかわからないわ」

「なんか他人事なんだよな。もっと自分の結婚のことなんだから真剣に考えた方が良いよ。一生のことなんだからね」

真剣にとか言われてもね。相手もいないし無理よ。

「わかったわよ。でも二号店の話は考えておいてね。この店は従業員雇えばいいから心配しないで」

「俺たちが店を持つころにはアニーが手伝えるようになってるかもしれないな」

「アニーは他になりたいものがあるんじゃないの? 確か服飾関係の才能があるみたいだってジムが言ってたわよ」

「あれは親バカだから。服飾関係は就職が難しいんだよ。この店に勤めた方がアニーのためにもいいさ」

「また、そんなこと言って。アニーが服飾関係に勤めたいのなら応援してあげるつもりよ」実はすでにアルヴェルト商会のベッテンに根回しをしている最中だ。彼は服飾関係に強いからアニーの仕事場も見つけてくれるだろう。アニーは私と違ってベラに似たらしく裁縫がすごく上手なのだ。ジムが言うように才能があるのなら伸ばしてあげたい。

「やれやれ、ジムよりアンナの方が姉バカだよな。アニーくらいの裁縫の腕は腐るほどいるっていうのに……」

フリッツが首を振っているけど、気にしない。才能が人並みだったとしても努力すればきっと報われると思う。そのためにも就職先が重要なのだ。コネがあるのなら使わない手はない。

「才能がなくてもいいのよ。好きなことをして暮らせるってそれだけで素敵じゃない」

「贅沢ともいうけどな」

「そうかもね。でもお金で苦労しないためにも手に職を持っていたほうがいいわ。服飾関係なら結婚してからも働けるしいいと思うわ」

「……そうだな」

フリッツも渋々ではあったが納得してくれた。

マルもそろそろギルド養成学校を卒業するからどこかのギルドへ配属されることになる。まだどこへ行くかはわかっていないようだ。入学した時はたくさんいた生徒も一割しか残っていないと言っていた。できれば王都に就職してほしいけど、地方に数年飛ばされて経験を積んで、王都に戻ってくる人もいるらしい。もちろんそのまま地方で暮らす人もいる。

こればっかりは運とコネの世界なので、どうなるかはわからない。うちにはコネはないから、マルの運で決まる。いまからドキドキしている。