軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

50 17歳 5

女性であるだけで就職が限られるのは間違っている。声を大にして言いたい。

でもこれは差別ではなく、女性を守るためなのだとジムは言う。

「女は男に比べるとどうしても体力面で劣る。同じ仕事をすればそれは顕著に表れる。ギルドでも力仕事は男の役割になっている」

「でもね、ギルドでは女性も活躍しているでしょう? そういうのを他の分野でも生かせればいいと思うの。ギルドで働く女性は養成学校を出なくてはならないからどうしてもハードルが高いわ。夫に先立たれるだけで生活が成り立たなくなるのは依存しすぎているからだし世の中の仕組みに問題があるからよ」

もちろん女性の働く場所が全くないわけではない。貴族の屋敷で雇ってもらえばメイドの仕事だってある。でもそれには紹介状がいるし、住み込みの場合が多く子供がいるだけで不採用になってしまう。

うちだってベラの洋裁の腕とアネットの癒しの魔法がなかったらどうなっていたことか…。ただジムはアネットの癒しの魔法がなかったら、家族を見捨てることはなかったのかもしれないけどね。何故って話を聞いていると自分より稼ぐアネットに嫉妬している部分もあったみたい。本当に子供みたいな人で怒る気にもならない。

そんなわけで家族に向かっていろいろと意見を言った私だけど、結局のところ何もできないのが現実だ。

それだけ騒いだところで、世の中を変えることなんて私みたいな庶民にできることではない。ううん、貴族にだって一人では無理だろう。

「それにしてもアルヴェルト商会はすごいわ。厚手の布をたくさん配布していた。あれのおかげで命が助かる人もいると思うわ」

確かに私たちが炊き出しをしている横に突然現れて厚手の布を配布しだしたのには驚いた。上等の布ではなかったけど、とても暖かそうだった。さすがベッテンと思った。スラムの人たちが欲しがっているものをよく把握している。

「でも…売る人もいるんじゃないかな」

「えっ? これから寒くなるのに売っちゃうの?」

「目先のお金の方が大事な人もいるんだよ」

「だがそういうのはたいがい買いたたかれるが」

それでも現金が欲しい人は売ってしまうのだろう。

フリッツの言っていたように厚手の布を売る人は多かったようで、マリーの家族も手に入れていたそうだ。これから寒くなるのにどうして売るのだろう。あの隙間風どころかもろに風が当たるような所で生きていくのは大変なのに…。

「仕方のない事です。それでもその布を売ったお金で飢えをしのげたのなら良いと思うしかありませんね」

ベッテンはそういってほほ笑んでいる。てっきり布を売った人に怒りを向けると思っていたので意外な気がした。

「ベッテンさんは厚意を無にされたとは思わないのですか?」

「私たちが善意でしたことでも相手には迷惑なこともありますからね。そのようなことを気にしていては何もできませんよ」

器の大きさの違いを感じた。私は布を売った人に対して上から目線で考えていたことを恥じた。

私はこれからもできうる限りは炊き出しを続けようと思った。

ラウルの母親のこともベッテンに相談すると、知り合いの薬師に話をしてくれた。そこは一人で店を出していたけど、ちょうど薬について知っている人を探していたとかで雇ってくれることが決まった。ただスラムに住んでいる人は雇えないと言われたので、ラウル親子には新しい住居を紹介した。薬師の人が支度金でひと月分の家賃を払ってくれたので、私たちは引っ越しを手伝った。これからラウル親子がどうなるかはわからないけど、凍死することだけは避けられそうでホッとした。

そして本格的な冬の到来と共に、この王都でもルウルウが広がり始めた。

さすがに店は閉店休業になる。店の中で広がったりしたら大変だから仕方のない事だ。

とはいうもののすることもないので店に来て新しいメニューの開発なんかをしている毎日だ。

「まだ薬が足りないのかしら」

サラが心配そうな声で呟いている。サラの両親も薬がなくて亡くなったので他人事ではないのだろう。

王都は比較的薬が手に入りやすいはずなのに足りないってことは、他の街がどうなっているのか考えるのが怖い。

『ドンドン、ドンドン』

扉を叩く音がする。閉店の張り紙が読めないのだろうか。字の読めない人がいるのでたまに明かりを見て戸を叩く人がいる。

サラは料理を作っている途中なので、私が店の方に顔を出す。

フリッツとマリーが困った顔で『ドンドン』と叩かれる扉を見ていた。

このお客は無視をしていても諦めてくれそうにない。

「すみません、店はやってないんですよ」

店の扉を開けると男が立っていた。旅人の服装をしている。男は私の声が聞こえないのか、そのまま入ってくる。

「あの~、店はやってないのですが…きゃっ!」

男はそのまま倒れてしまった。

「ああ、うどんの匂いがする…」

熱に浮かされたような男の言葉で私は以前来た旅人さんを思い出した。

顔をよく確かめると、サラと同じ国が故郷だと言っていた旅人さんだった。