軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

47 17歳 2

『うどんとクレープ』の店の客層は冒険者や旅人が多い。

フリッツがうどん作りを学びだしたので、厨房の方をフリッツに任せて店の方に出ることが多くなった。まだまだうどんのスープを任せることは出来ないけど、結構筋がいいのですぐに作れるようになるだろう。

「えっ? バルク街でルウルウが流行っているのか?」

「ああ、だからあそこは通らないで迂回して来たから遅くなったんだ。あれは厄介だからな。俺の両親もルウルウにかかって死んだんだ」

「そうかぁ、そりゃあ大変だったな。それにしてもまだ夏の終わりだぞ。ルウルウが流行るには早くないか?」

「そうなんだよ。だから薬が追い付かないらしい」

旅人らしき人の話が耳に入ってくる。その話を聞いていたのは私だけではない。何人かの冒険者たちも聞き耳を立てている。旅人の話は時に重要なことにつながっている場合がある。今回はルウルウだ。サラの両親が亡くなったのもルウルウという風邪が原因だったと聞いている。もし流行っているのなら気を付けなければならない。薬が足りないのならなおさらだ。

「肉うどんと他人丼、お待たせしました」

「おう、待ってたぜ」

「おお~、ここでうどんを食べれるとは思わなかったぜ」

深刻な話をしていた二人は料理が届くと笑顔になった。夏の間は冷やしうどんの方が売れていたけど、暑さが和らぐと温かいうどんの方が売れる。

「ああ、ホッとする味だ」

旅人がうどんのスープを一口飲んで息をついた。

「ホッとする味ですか?」

思わず声が出ていた。

「ああ、故郷の味だ」

「故郷? もしかして東の国ですか?」

「そうだ。東の国ガルヴァルトだ。もう故郷を出て何年にもなるのに忘れられない味だ」

サラも東の国だと言っていた。もしかしたら同じ国なのかもしれない。

「そういうものさ。故郷の味は一生忘れないものだ」

二人が食べ始めたので席を離れた。

「それでまだ見つからないのか?」

「ああ、さっぱりだ。いったいどこにいるのやら…」

誰か探しているのかしら。それで旅をしているの? 好奇心が刺激されたけど店が混んできたのでいつまでも盗み聞きは出来ない。

この時もっと聞き耳を立てていれば良かったと後悔することになるけど、それはまた先の話だ。

店を閉店するとみんなで集まって賄を食べる。

今日の賄はお好み焼きだった。キャベツが安く手に入った時にだけサラが作ってくれるお好み焼きはみんなの好物でもある。お好み焼きに欠かせない甘いソースもサラの手作りだ。

『う~ん、この匂いたまらないなぁ~』

いつもは肩の上の定位置に座っているクリューも匂いにつられてか、私のお好み焼きの皿にしがみついている。行儀が悪いからやめて欲しい。

『クリュー、またつまみ食いして。他の人に見られたらどうするの?』

クリューの姿が見えるのは私だけだけど、お好み焼きが誰もいないのに齧られたりしたら誰かに気づかれるかもしれない。

『大丈夫だよ~。みんな食べることに夢中なんだから』

クリューが言うようにお好み焼きを食べることに集中していて、私のお好み焼きをわざわざ見ている人はいなかった。

クリューの口のまわりはソースで汚れていて思わず笑ってしまった。

「「「!?」」」

突然笑った私にみんなが驚いたような顔をして見た。

「な、何でもないの。思い出し笑いだから」

「思い出し笑い?」

「そ、そうなの。今日のお客さんの中にうどんをお持ち帰りしようとした人がいて、その人麻の袋に入れようとするの。無理だって言ったのに入れて、びしょびしょになってたわ。その時のその人の顔がおかしかったのを思い出して笑っちゃったの。だってその時は笑えなかったから…」

何とか誤魔化すために今日店であったことを話す。

「あれには私もびっくりしたわ。麻の袋で持って帰れるわけないのに…でもお鍋を貸してあげたら喜んでいたわね」

マリーもその様子を見ていたようで笑っている。

麻の袋の中にうどんだけが残っているのを見て、がっかりするその人に話を聞いてみると娘に食べさせたいと言うので、鍋に肉うどんを入れてあげた。次に来た時に返してもらうことになっている。

接客をするようになって思うのは、世の中にはいろんな人がいるってこと。見た目は山賊のような人が意外と優しかったり、善人そうな人がクレーマーだったりする。

ふと今日出会った旅人のことを思いだした。サラの故郷である東の国の人。彼はこのお好み焼きを見たら何て言うだろう。うどんのスープを飲んだ時のようにホッとすると言うだろうか。

もしまた店に来ることがあったら、このお好み焼きを食べさせてあげたいものだ。