軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22 14歳 11

クレープ屋は最近できた店らしい。手頃な値段で買えるから人気があるそうだ。

「手頃って言っても僕たちには中々手が出ないけどね」

クレープなら作れるから今度作ってあげよう。でもサラの故郷でしか食べられないクレープがここで売っているってことはサラの故郷の人が作っているのかな。

サラに教えてあげたいけど侯爵家にいるサラに連絡はとることは出来ない。

「ほら、あそこだ」

「あれ? 並んでないよ。さっきまではすごい人だったのに」

でも人が並んでいないほうが早く買えるからいいと思う。

「あー、やっぱりだぁ。売り切れだよ」

「なんだって? またか」

マルとフリッツががっかりしたように叫んでいる。よく見るとマルたち以外にも嘆いている人がたくさんいる。

クレープってすごい人気があるのね。

「いくらで売っているの?」

「一番安いので二銅貨だ」

「それって安いの?」

私には値段のことはよくわからない。先ほど買った米の安さが分かったのは横にあった小麦の値段と比べることができたからだ。

「屋台で売っている中で一番安いね。普通は四銅貨から五銅貨はするよ」

半額ってことはかなり安く売っているみたい。それで儲けはあるのだろうか。

「アンナ様!」

突然敬称付きで呼ばれて振り返る。今でも私のことをそう呼ぶなんていったい誰だろう。

「サラ、どうしてここにいるの?」

サラと会えなくなったのは一月前だった。私が学院に通うことになるから料理を習う必要はもうないと判断された為だ。それでも侯爵家で働いているものと思っていた。学院への合格がはっきりしたら会いに行くつもりだった。まさか合格発表の日に侯爵家から追い出されるとは思っていなかったので、サラにお別れが言えなかったことが心残りだった。

そのサラが目の前にいる。

「セネット侯爵家であのまま雇われても良かったのですが、シェフがとても堅苦しい人で合わなかったのですっぱり辞めることにしました。アンナ様に報告したかったけど、会わせてもらえませんでした…。まさかここで会えるとは思いませんでした」

「そうだったの。まさかサラが侯爵家を出ていたとは思わなかったわ。サラは私がセネット侯爵家の子供ではなかったことは知っているの?」

「はい。セネット侯爵家のハウスメイドだった人がクレープを買いに来た時に伺いました。追い出されたとは聞いていましたが、まさか庶民として暮らしているのですか?」

サラは私の服装やいつもはメイドたちに整えられていた髪を見て驚いた顔をしている。自分でも頑張ってみたけどベテランのメイドにはかなわない。結局後ろで結ぶだけになっていた。侯爵令嬢として暮らしていた時とは大違いだからサラが驚くのもわかる。

「ええ、妖精によって取り換えられていたから元に戻っただけ。今はこの子たち本当の家族と一緒に暮らしているの。貴女から習ったおかげで料理だけは作る事ができるから助かっているわ」

マルとフリッツはサラを前にして戸惑っているようだ。その二人にサラは片付けていた箱の中から取り出したものにジャムと白いクリームを乗せたものを渡した。

「クレープを買いに来たのでしょう? 残念ながら材量がないから作ることは出来ないけど、破れたせいで売り物にならないクレープが残っているから食べてちょうだい」

「えっ?」

マルとフリッツは奇麗に飾られたクレープを見ながら戸惑っていた。

「失敗作だから嫌かしら」

心配したように呟くサラに二人はぶんぶんと首を横に振った。むしゃむしゃと食べる二人を横目で確認しながら私はサラにお礼を言う。

「ありがとう。二人とも喜んでいるわ。それにしてもこのクレープの生地はいつも作っていたのと違うみたいね」

二人が食べているクレープを見ながら呟くとサラが笑った。

「やっぱりわかりますか? 小麦粉だけだと高くなるから安いそば粉も加えて作っているのです」

「そば粉?」

私が習ったときは小麦粉だけで作っていた。そば粉を混ぜて作るクレープは習っていない。

「小麦粉の安いのを探していたら、そば粉がとても安く売っていたから、これを使うことにしましたんですよ。利益がでないと商売にならないですから」

きちんと利益まで考えて商売をしているサラは輝いていた。

「美味しい! このクレープすごくおいしかったです」

「うん、マジ美味しい!」

マルとフリッツは大満足という顔をしている。あんなに喜んでくれるのだったら、今度はクレープを作ってあげよう。

「それにしてもこの時間に売り切れるなんて、もっと材料を用意したほうがもっと売れると思うけど?」

「アンナ様もそう思いますか? でも材料って結構重いから運ぶのが大変で私一人では難しいのです」

サラが言うように小麦粉もたくさん買えば重たくて運ぶのが難しい。しかも材料は小麦粉だけではない。

「あれ? 自分で材料を運んでいるの?」

「えっ? そうだけど?」

「冒険者に依頼したらいいのに。荷物運びを頼む人多いですよ」

マルも薬草が採れない冬は荷物運びで稼いでいるそうだ。サラは良いことを聞いたと喜んだ。そしてマルとフリッツに指名依頼をしてくれることになった。

昼からはマルとフリッツは薬草取りがあるので、初めての買い出しはこれで終わった。