軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第59話 2人で過ごす夜②

「え……」

なんて言ったの? え? 可愛い? マリウッツさんが、私を? 可愛いって思っているって? え?

「え? ええ? ええええ?」

混乱してそれ以外の言葉を紡げない私を見て、マリウッツさんはプッと吹き出した。遅れて、カァッと急激に頬に熱が集まる。

「な、何の冗談で……」

「俺が冗談を言うと思うか」

「……思いません」

そうですよね。マリウッツさんは嘘も冗談も言わない人だもの。

「可愛いと言われて嬉しいのなら、これからは会うたびに俺が言おう」

とどめを刺すようにとんでもない提案をしてきた。

「えっ!? そ、そんな……いいですよ! やめてください!」

「何故だ。嬉しくないのか」

「う、嬉しいですけど……それ以上に、その、は、恥ずかしくて……」

あまりに真っ直ぐ見つめてくるものだから、深いアメジストの瞳に吸い込まれてしまいそうで、耐えきれなくて視線を下げてしまう。

「顔を上げろ」

「っ!」

頬に手が伸びてきて強引に視線を合わされる。いや、ち、近いから……!

膝先も、肩も触れるほどの近距離に、私の頭はショート寸前だというのに。

酔ってるな? この人絶対酔っているな?

どこか楽しそうにすら見えるマリウッツさんは、口元に笑みを携えている。

「熱いな。赤くなっているのか?」

「そ、れは……聞いたらダメですよ」

「大事なことだ」

「だ、だって! マリウッツさんが真面目な顔で可愛いなんて言うから……」

「本心からの言葉だ。何の偽りもない」

「だ、だからそういうところ……!」

天然タラシな上に、変に真面目なんだから……!

クエストに出た日に見た煌びやかな双眸。その瞳には今、私しか映っていない。

情けなくも目一杯に眉を下げて、真っ赤な顔をした私しか。

「た、楽しんでません?」

「ああ、少しな」

じとりと睨みつけてみても、返されるのは悪戯っ子のような、けれども、とても朗らかな笑みで――どうしてそんな優しい目をして私を見るの?

う……ううう……

あああああああ! ダメ! もう限界!

頭が茹ってしまう前に、距離を取ろうとマリウッツさんの胸に手を当てた時。

「キューーーーーッ!」

「あ、こら」

クッションで遊んでいたピィちゃんが、マリウッツさんの頭に飛び乗って大きく鳴いた。マリウッツさんは私の頬から手を離し、頭の上のピィちゃんを両手で掴んで膝に乗せる。

よ、よかった……! ピィちゃんに助けられたみたい。

あのままだと目を回して倒れていたに違いない。

「ピィ、ピィ!」

「む、なんだ? 手は出していないだろう」

「ピピッ! ピーッ! ピーッ!」

「なに? どこがアウトだと言うのだ」

パタパタと火照った顔を手で仰いでいる間、マリウッツさんとピィちゃんは何やら口論をしていた。その様子がおかしくて、私は思わず「プハッ」と吹き出してしまった。

2人が同時にこちらを向く。お前のことを話しているのに、何を笑っているのだと、目がそう言っている。

とにかく、何か話題を変えなくっちゃ……!

「えーっと、あっ! そ、そういえば、能力レベルって10が最大なんですよね!?」

何の脈略もない話題になってしまったけれど、実はちょっぴり気になっていたことをこの機会に聞いてしまおうと話題に挙げた。

「ん? そうだが」

突然なんだとでも言いたげに、怪訝な顔をするマリウッツさん。でも、律儀に答える姿勢を示してくれる。

「マリウッツさんも能力レベル10に達していますよね? それ以上はもうスキルも経験値も獲得できないってことですか?」

「いや、経験値は常に獲得している。能力レベルは頭打ちだが、何かをきっかけに新たなスキルに目覚めることもある」

「へぇ……! 興味深いです!」

流石に能力レベル6 になってから、なかなかレベルが上がらなくなっているけれど、解体を続けていれば、いずれレベル10に達する日はやってくる。レベルアップは単純にモチベーションにも繋がるから、上限があるのが残念だと思っていたのだけれど、スキルの獲得に際限はないとはいいことを聞けた。

「実際、俺が能力レベル10に達したのは3年前になるが、それ以降も危機に瀕した時や高ランクの魔物に対峙した時にスキルを獲得したことがある」

「へええ……! あの、私、マリウッツさんの冒険の話が聞きたいです!」

「俺の?」

そう、実は前々から聞きたいと思っていたの。

マリウッツさんは今は王都に長く滞在して、日々のクエストに励んでいるけれど、私が初めて会った時も長期クエストに出ていたと聞く。王都に来襲したドラゴンをマリウッツさんが倒した話も詳しく教えて欲しいし、とにかくマリウッツさんのことが知りたい。

キラキラと期待に満ちた目を向けると、マリウッツさんは観念したようにため息を吐いた。

「俺は自分の話をするのが得意ではない。つまらん話になっても知らんぞ」

「問題ありません! マリウッツさんの説明はいつもとっても分かりやすいですし、マリウッツさんがこれまで経験してきたことを知れるだけで嬉しいですから」

「……そうか」

両手をグッとを握って目一杯アピールすると、マリウッツさんは拳を口元に当てて、フイッと目を逸らした。おや?

「え? なんでここで照れるんですか?」

「お前……いや、なんでもない。そうだな……では、直近の話からするか。ちょうどサチと出会う前に受けたクエストの話だが――」

その後、私たちは夜更けまで2人と1匹で賑やかで楽しい時間を過ごした。

ずっとモヤモヤ渦巻いていた不安な気持ちも溶けて無くなり、これまで知らなかった一面もたくさん知ることができて、なんだか心が温かな気持ちで満たされた気がした。