軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34話 魔刃剣

「ルゥオオオオオォッ!!!」

前足を一本失ったにもかかわらず、ドラゴンの戦意は衰えなかった。

むしろ、さらに燃え上がっているように見える。

さすが、というべきか。

魔物の頂点に立つ存在。

人間ごときに腕や翼を奪われたくらいで怯むようなら、そもそもドラゴンなどと恐れられてはいないだろう。

怒りを燃やして、屈辱を刻み込んだ相手を噛み砕いてやる。

そういう、はっきりとした殺意が残った片目に宿っていた。

「それでよい」

儂は新しい剣を抜き、静かに構える。

逃がすわけにはいかない。

故に、立ち向かってこい。

その命、ここで終わらせる。

「……」

「……」

儂は何も言わぬ。

そして、ドラゴンも二度は吠えない。

最初の時のような見下しは、もうそこにはなかった。

儂のこと明確に『敵』として認めたのだろう。

それは少しだけ誇らしくもあり、同時に致命的な緊張を伴うものでもあった。

今、欠片でも油断した方が死ぬ。

残り三撃。

儂の魔力も予備の剣も、もはや潤沢ではない。

ここで仕留めきれなければ敗北だ。

そして、この国が燃える。

……そのような未来、絶対に認めない!!!

「今度こそっ!!!」

ダンッ! と地を強く蹴る。

空気を押しのけて、風を置き去りにして、一直線に突っ込む。

ドラゴンも読んでいたのだろう。

儂の加速に合わせるようにしつつ、残った前足を叩きつけてくる。

軌道は完璧。

タイミングも正確。

威力も申し分なし。

まともに食らえば終わりだが……

「それは読んでいたぞ!」

跳躍。

振り下ろされた前足の甲へ着地し、そのまま一歩、二歩、三歩と駆け上がる。

そのままドラゴンの頭を踏み台に、さらに高く跳ぶ。

背面側へ抜けながら、体をひねり、斬り下ろす。

「魔刃剣っ!!!」

剣へ魔力を叩き込む。

刃が悲鳴を上げるけど、それでも構わず出力だけを限界まで引き上げる。

キィンと砕ける。

だが、その代償で、斬撃はドラゴンの鱗を深く貫いた。

「ギャアアアオオオオッ!!!」

ニ度も。

しかも、同じ相手に。

人間にここまで傷つけられるなど、ドラゴンにとっては屈辱以外の何物でもないだろう。

怒りはついに理性を焼き切ったらしい。

ドラゴンは、今まで以上にでたらめに暴れ始めた。

山……というか、世界が怒り狂っているかのようだ。

「ちとまずいのう」

後ろには兄様がいる。

他にも、戦闘不能になった騎士達がまだあちこちに倒れておる。

ここで暴れさせては巻き込まれる。

ならば、さらに儂へ怒りを向けさせるしかない。

儂は二本目の剣を腰だめに構えた。

弓を引き絞るようにして狙いを定める。

狙うは瞳。

通常、ドラゴンの瞳は鱗よりも硬いと言われている。

宝石のような価値を持ち、鱗の数十倍の値で取引されることもあるとか。

それほどに貴重で、そして何よりも硬い。

ドラゴンにとって瞳は弱点ではなく、むしろ誇るべき箇所なのだ。

ならば、それを貫いてみせようではないか。

「はぁっ!!!」

二度目の突撃。

己自身を矢と化して、最大限に加速。

限界を超えて、さらに加速。

大地を蹴り、全身の筋肉を絞り上げ、身体強化も最大まで引き上げる。

今の儂にできる、最速最強の一撃。

「……っらぁあああああっ!!!」

剣が折れるだけでは済まなかった。

衝撃に耐えきれず、その場で粉々に砕け散る。

だが……狙いは通った。

「ギャアアアアアア!?!?!?」

ドラゴンの片目が潰れていた。

のたうち回り、咆哮を上げて、痛みに狂ったように頭を振る。

やがて残ったもう片方の目で、ギロリと儂を睨みつけてきた。

怒り。

憎悪。

殺意。

普通の者なら、その視線だけで膝をつくだろう。

だが、儂には通じない。

恐怖?

そんなものはない。

国を再び失う方が、また守れない方が……何倍も何十倍も恐ろしい。

だからこそ、ドラゴンの怒りは、逆に儂へ不屈の闘志を与えてくれる。

ここで退くわけにはいかない。

絶対に負けられない。

そう思えるからこそ、さらに剣が冴えていく。

「さあ、来るがよい!」

剣を構え、ありったけの声で叫ぶ。

「お主は、ここで終わりじゃ!!!」

「グルァアアアアアッ!!!」

儂の言葉に、ドラゴンが咆哮で応えた。