作品タイトル不明
18話 情けなんていらないよね?
最初の一手は静かに始まった。
見張り二人の真上へ跳ぶ。
夜闇に紛れて音を殺し、そして、着地と同時に二つの首を刎ねる。
悲鳴を上げる暇もない。
それでいい。
見張りの役目を果たせぬ者に声を上げる資格などない。
死体はそのまま放置した。
次に必要なのは、洞窟そのものを『罠』に変えることだ。
事前に集めておいた草木を入口へ次々と積み上げる。
ぽい。
ぽい。
ぽい。
「うむ、これくらいでよいかのう」
量は十分。
そして、風向きも悪くない。
儂は指先へ小さく魔力を集める。
身体強化は得意だ。
しかし、攻撃魔法などは正直なところ苦手だ。
前世でも剣に全てを寄せていたし、今世でも得意の中心はそちらにある。
とはいえ、初歩の初歩くらいなら扱える。
「ファイア」
草木へ火をつけた。
たちまち炎が広がる。
「ウインド」
続けて風を送り込み、煙と熱を一気に洞窟の奥へ押し込んだ。
洞窟は天然ものらしい。
非常用の立派な抜け道など、そう都合よくないだろう。
奥にいる盗賊どもは、煙に燻されて熱に追い立てられて、結局は入口から飛び出すしかなくなる。
……その入口を儂が押さえている。
「うあああっ!?」
「な、なんだよこれ!?」
「はいはい、二名様ご案内」
刃を振るう。
「……あの世へな」
たまらず飛び出してきた最初の二人を、抜き打ちのように斬り捨てる。
奥から悲鳴と混乱の声が聞こえてきて、さらに何人かが飛び出してきた。
三人、四人、五人。
煙に目をやられ、熱に煽られ、まともに周囲も見えていない。
ただ逃げたい一心の連中など斬るのは容易い。
「このっ、なんなんだてめえは!?」
「こんにちは、お邪魔するのじゃ」
返事と同時に首を飛ばす。
「そして、さようなら」
三人の盗賊は物言わぬ躯と化す。
よし、かなり効いているな。
正直、こういう流れ作業は戦いとしては少々つまらぬ。
だが、今日は気持ちよさを求めておるわけではない。
目的は掃除。
ゴミ掃除に風情などいらない。
「まるで釣りじゃな」
もっとも、釣れて嬉しい相手では全くないのだが。
……しばらくして火の勢いが少し弱くなったので、さらに草木を追加し、用意しておいた油まで注いだ。
ついでに近くの丸太も切り出して、入口を半ば塞ぐように積む。
「いちいち出てきたところを斬るのも面倒じゃしな」
うむ、これでよい。
中からは咳き込む声、怒鳴り声、何かが倒れる音。
それから悲鳴。
地獄絵図が広がっていることだろう。
だが、知ったことか。
村人をいたぶった時、お主らは少しでも情けをかけたか?
泣き叫ぶ声に手を止めたか?
ならば、こちらも同じじゃ。
「情けなんていらぬよな?」
誰に向けた問いでもなく、そう呟いた。
……三十分ほど経って、ようやく火勢が落ちた。
「そろそろよいかのう」
儂は水魔法で残り火を消して、剣で灰を薙ぎ払って入口を開けた。
一気に中に風と空気が流れ込んでいく。
洞窟の中は、熱気と煤の匂いに満ちていた。
足元には死体、壁際にも死体。
まだ息のある者もいたが瀕死だ。
もちろん助ける義務も理由もないので放置した。
そのまま奥へ進むと、簡易なバリケードが見えた。
なるほど。
ここで熱と煙をいくらか防いだわけか。
「くそっ、なんでこんな……!」
「む? やはり、まだ生き残りがおったか」
バリケードの陰から出てきた盗賊が、こちらを見て顔をしかめる。
「あぁ? なんでこんなところにガキが……」
「おい、馬鹿!」
別の盗賊が叫ぶ。
「こんな状況でガキがいるわけねえだろ!」
ほう、少しは頭が回る者もおるか。
だが、気づくのが遅すぎる。
「こんにちは」
大剣を軽く持ち上げる。
「て、てめえ、いったい……」
「そして、やっぱりさようならなのじゃ」
一気に踏み込み、最初の男の首を飛ばした。