作品タイトル不明
14話 一切合切容赦しない
盗賊どもの目が、一斉にこちらへ向いた。
「なんだ、このガキ……!?」
「さっきの、てめえがやったのか!?」
「おいおい、冗談だろ……」
冗談ではない。
悪夢じゃよ、お主らにとっては……な。
「黙れ」
低く吐き捨てる。
たったそれだけの一言で、空気がビリッと震えた。
五歳の幼女が放つものとは思えぬ圧に、盗賊どもの顔色が変わる。
外見に惑わされている場合ではないと、ようやく理解したらしい。
「よくも、まあ……」
大剣を構える。
「我が国の民をここまで傷つけてくれたものじゃ」
「……っ」
「一切合切、容赦しない」
「このクソガキがぁっ!」
叫びと同時、目の前の盗賊が斬りかかってくる。
浅い、雑、遅い。
避ける必要すらない。
半歩だけ身をずらし、そのまま腹を裂いた。
「ぎゃああっ!?」
悲鳴が響く。
だが、まだ生きている。
ならば足りぬ。
儂は即座に刃を返し、下から顎を突き上げた。
骨を砕き、脳まで届く手応え。
盗賊は痙攣して、そのまま崩れ落ちる。
「て、てめえぇぇっ!」
別の盗賊が慌てた様子で剣を振るう。
が、それも避ける。
今度は間合いの内側へ潜り込み、腹を貫いて、そのまま横薙ぎに抉る。
「が、あ……」
まだ死ねぬか。
とはいえ、胴を半分裂いているので致命傷だ。
せいぜい苦しめ。
我が国の民へ向けた悪意の分だけ、地獄を見るがよい。
「矢だ! 矢を射ろ!」
誰かが悲鳴のように叫ぶ。
今度は弓か。
ようやく少しは頭を使い始めたようだ。
が、すでに遅い。
矢が一斉に放たれる。
雨のように無数の矢が降り注ぐ。
五歳の幼女なら、普通はそこで終わりだが……
しかし、儂は普通ではない。
風を読む。
角度を読む。
軌道を読む。
全てを読んで、矢の先端がどこを裂くか、飛ぶ前から見えていた。
肩を沈める。
腰を捻る。
半歩だけ踏み出す。
最小限の動きで、叩き落とすのではなくて全て避けてみせた。
矢は全部空を切る。
「なっ!?」
「お、おかしいだろ!?」
「速すぎる……!」
おかしいのは、お主らの頭じゃ。
どうして、何の罪もない民を傷つけようとする?
どうして、他者の血を流して、それで腹を満たそうとする?
そのような悪鬼羅刹の所業……断じて許すわけにはいかぬ!!!
矢をかわし切った勢いのまま距離を詰める。
大剣を回し、独楽のように体をひねり、一閃。
五人まとめて胴が裂けた。
血飛沫と肉の裂ける音。
そして、崩れ落ちる体。
まだ生きている村人達の息が止まるのがわかった。
だが、構わぬ。
今は見せつけてやる必要がある。
悪党がどれほどの相手に喧嘩を売ったのかを。
そして、我が力がそなた達の味方であるということを。
「ぐっ……このガキぃっ!!!」
最後に前へ出てきたのは、他よりひときわ大きな男だった。
丸太のような腕、分厚い首、丸太のような巨大な棍棒。
おそらく、こいつが頭目だろう。
「よい面構えではないか」
思わず言う。
「悪党の頭としては、それなりに似合っておるぞ?」
「ふざけやがってぇぇぇっ!!!」
轟音と業風と共に棍棒が振り下ろされる。
直撃すれば、人など容易く潰れるだろう。
だが。
ガンッ!
儂はその一撃を片手で受け止めた。
「な……っ!?」
「軽い」
「ば、ばかな……!」
「お主の心と同じくらい……いや、それよりも軽いかもしれぬな」
頭目の顔が引きつる。
全力で押し潰そうとしても、儂の腕は微動だにせぬ。
そりゃそうじゃ。
たかが盗賊風情の暴力が儂に通じると思うな?
背負っているものが違うのじゃ、背負っているものがな。
「選ばせてやろう」
静かに告げる。
「自分で命を断つか、儂の剣で散るか。どちらがよい?」
「ふ、ふざけるなぁっ!!!」
返ってきたのは、怒鳴り声だけ。
ならば、答えは決まり。
カウンター気味に刃を走らせる。
首筋に深く、確実に裂く。
「か、は……っ!?」
吹き出す血。
頭目が慌てて首を押さえる。
だが、もう遅い。
明らかに致命傷だ、助かる道理がない。
「地獄で反省するがよい」
「き、貴様……な、何者だぁ……!?」
「悪党に名乗る名はない」
最後の一閃。
その言葉を最後に頭目の意識は消えた。
この世界から永遠に。