軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

招待状−3

国王陛下は何から話したものかと呟き、口元に手を持っていき悩んだ様子だ。

アレックスは話し始めるのを待っていると、国王陛下が父との関係を説明し始めた。

国王陛下は錬金術を覚えているのだと話し始めた。錬金術を習った師匠に当たるのがアレックスの祖父であるハインリッヒであり、アレックスの父であるハインリッヒは兄弟子に当たると言う。

……父が兄弟子?

祖父が師匠で父が兄弟子⁉︎

アレックスが混乱していると、国王陛下が何故錬金術を祖父に習う事になったのかを話し始めた。

アレックスの曽祖父に当たる人が、シュタイン共和国と呼ばれた共和政を引いていた国から、国民を連れて逃げてきたのが始まりだと言う。

曽祖父がオルニス王国に逃げてきた理由は百年前の戦争に関係があり、戦争ではいくつかの国が消えており、消えた国の中に曽祖父が元首をしていたシュタイン共和国があるのだと言う。

国王陛下の話を聞いてアレックスは色々と疑問が浮かぶ。

何故曽祖父が国民を連れて逃げる? そもそも共和政と元首?

初めて聞く言葉だ。

「国王陛下、共和政と元首とは何かお尋ねしても宜しいでしょうか?」

「アレックスには元首や共和政というのは分かりにくいかもしれんな。シュタイン共和国は貴族の中から国王つまり元首を選ぶ共和政なのだ」

国王陛下から共和政にも種類はあるので、興味があるのなら王宮の図書館で調べると良いと言われる。

曽祖父が生きた国には興味がある。

これ以上共和政について国王陛下に質問をするのは失礼だろう。以降は図書館で調べてみる事にする。

「オルニス王国の初代国王はシュタイン共和国の出身だと書き残されている。国として王国と共和政という違いはあるが、国同士の付き合いは友好国として長く続いていた」

「曽祖父は友好国であるオルニス王国へと逃れてきたのでしょうか?」

「その通りだ。オルニス王国も暴走した魔物の脅威に晒されていた。受け入れるのは簡単ではなかったようだ」

しかし国や人とは交渉できても魔物は交渉で引かせる事はできない。魔物がどれほど居るか分からないと、シュタイン共和国の国民を当時のオルニス国王は受け入れると決めたと国王陛下が語った。

そして受け入れられた曽祖父たちシュタイン共和国の国民が差し出したのが、錬金術の技術だと言う。

シュタイン共和国は商人と錬金術の国だったのだと国王陛下が教えてくれた。

曽祖父はシュタイン共和国でも有名な錬金術だったと言う。

曽祖父の子供であるアレックスの祖父も同じように高度な錬金術を使え、曽祖父と祖父はオルニス王国の錬金術師をまとめる立場に立ったのだと国王陛下が語った。

「曽祖父と祖父が錬金術師をまとめる立場なのですか?」

「オルニス王国の錬金術師は戦前は一子相伝の技術とされていたが、戦中に錬金術師の数が足りずポーションが足りないと問題になったようだ」

シュタイン共和国は、現代のオルニス王国と同じような形で錬金術師をまとめ上げていたようで、シュタイン共和国の出身の錬金術師を中核にして、構造を急激に変えたのだと国王陛下が語った。

受け入れたとはいえ、他国の出身者を中核にして構造の改革をするのは、普通ではないとアレックスにも分かる。

それだけ戦争が激しい物だったのだろう。

「当時のオルニス王国の国王は、環境を変えるなら上から変えたほうが上手くいくと考え、自ら錬金術師の勉強をしてポーションを作り始めた。その師匠として選ばれたのが其方の曽祖父であるハインリッヒというわけだ」

「国王陛下自らがポーションをお作りに?」

「そうだ。それだけポーションの数が不足しておった」

故郷でも戦争のことは聞いていたが、ポーションが不足するほどだとは知らなかった。

しかもポーションを国王陛下自らが作っていたとは思わなかった。

国王陛下の話を聞いた後に気づいたが、アレックスもそうだが父もポーション作りが得意だった。

祖父や曽祖父もポーション作りが得意だった可能性がある。

国王陛下に教えるのならポーション作りが得意な方が良いだろう。

「戦後も錬金術を覚えるのは王家に残り、余も錬金術を覚えることになったのだ」

「父が頼る錬金術師がいないと言っていた意味が理解できました」

「ハインリッヒも流石に余を頼れとは言えなかったか」

「国王陛下を頼れと言われても正直戸惑ってしまいます」

「だろうな」

国王陛下は笑っている。

アレックスが頼る相手は国全体の錬金術師が関係があるとも言えるので、ハインリッヒの子供であると話せばどこの工房でも受け入れられただろうと、国王陛下は笑いながら話してくれた。

曽祖父、祖父、父が受け継いできたハインリッヒという名前は想像以上に影響力があるようだ。

やはりアレックスもハインリッヒという名前を受け継いだ方が良いのだろうか?

アレックスは本来聞くべきではないと思いつつも、ハインリッヒの名前の意味を知っているのは国王陛下しかいないと、名前を受け継ぐべきか尋ねた。

国王陛下は受け継がないことがハインリッヒの願いだろうと言う。

「シュタイン共和国だった場所を魔物から解放したのはアレクシア伯爵なのだ。アレックスはハインリッヒの子でもあるが、同時にアレクシア伯爵の子でもある」

「母が魔物から解放をしたのですか」

「そうだ。ハインリッヒは恩があると余が始祖鳥を見に行く時に同行し、アレクシア伯爵にお礼を言って求婚をした。求婚については余も驚いたがな」

父と母の出会いは国王陛下が始祖鳥を見に行った事がきっかけだったのか。

しかし父が母にお礼を言うのは分かるが、求婚をしたのは謎ではある。

故郷で父は最初母に相手にされなかったと言っていたのを思い出す。

父や母から出会について詳しくは聞かなかったが、モイラおばさんから母が断るにも、父は弱そうで殴れなくて困ると言っていたとは聞いた事がある。

何にせよ、父がアレックスにハインリッヒの名前の意味を伝えなかった意味は分かった。

母の子供であるアレックスに、亡国のシュタイン共和国という国を背負わせたくはなかったのだろう。

父からシュタイン共和国の話を聞いていた場合は、アレックスもハインリッヒを名乗っていた可能性が高い。

アレックスは今からでもハインリッヒを継いだ方が良いのか迷う。

国王陛下はアレックスが考えていることが分かったのか、ハインリッヒを名乗る必要はないと言う。

続けてシュタイン共和国だった場所は現在オルニス王国の領土ではあるが、自治を許しており、国を名乗れるほどに回復をした場合は独立させることも考えていると国王陛下が語った。

戦争中にシュタイン共和国の国民はそれだけの功績は上げているという。

「アレックスが一人で背負う物ではない。オルニス王国全体の問題なのだ。それに王ではなく友として、弟弟子として、ハインリッヒの願いを叶えたい」

「承知致しました」

「うむ。シュタイン共和国については話さぬことも考えたが、キャサリンとの関係を考えれば誰かがハインリッヒの事に気づいたであろう。其方の父の願い覚えておいて欲しい」

「はい」

誰かがハインリッヒの事に気づくと言われて、キンバリーが名前を聞いた事があると言っていたのを思い出した。

いつかはキンバリーが事実に気づきそうだ。

今日、国王陛下から父やシュタイン共和国について話を聞けたのは、アレックスにとって運が良かった。

父についての話を聞く人が違えば、アレックスはハインリッヒと名乗っていた可能性が高い。

そうなれば父の願いとは別の結果となっていた。