軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キャサリン殿下−7

キャサリン殿下を連れて始祖鳥を見にいく時期は、始祖鳥が生息する場所の雪が溶けてからになるとトレイシーに説明する。

トレイシーは頷いた後に、その時に一緒にオルニス山に帰ると言う。

「帰らないの?」

「アレックスも居ないし、帰っても暇なのだ」

「暇なのか。家は良いの?」

「長老に任せてきた」

「なら良いのかな?」

マーティーは普通の錬金術師なので、アレックスのようにアクセサリー作りを得意としていない。

トレイシーとマーティーの仲が悪いわけではないが、趣味が合うとは言えない。他にも理由はあるのだろうが、結果的に暇になってしまったのだろう。

トレイシーが王都に残るのは良いのだが、過ごす家が必要になる。

キャサリン殿下とジョシュに確認をする。

二人して顔を引き攣らせながら、アレックスの家に置けないかと言う。

部屋は余っているのでトレイシーを家に置くのは問題はない。トレイシーにも尋ねると、問題はないと言う。

「アレックスの近くなら色々と頼みやすいので丁度いい。色々と素材を持ってきたぞ」

「それは助かる。けど私はしばらく忙しいよ?」

「急いではいないのでゆっくり待つ。それにアレックスなら私が好きそうな物を作っているだろ?」

「そうだね。作っているよ」

手元にある真珠布や真珠粉はキャサリン殿下に渡した物しかない。

今は応接室から出て、別の物を持って来れるような雰囲気ではない。

キャサリン殿下から許可を貰って、真珠布や真珠粉をトレイシーに見せる事にした。

キャサリン殿下は快く許可をくれたのでトレイシーに説明をする。

トレイシーが目を輝かせて最初に真珠布を見始めた。

やはりトレイシーが服が欲しいと言うので、アレックスがパティに相談をしようとしたところで、キャサリン殿下がパティにトレイシー用の服を注文をしてくれた。

パティは緊張しているのか覚悟を決めた表情で、服の大きさや、どのような服が良いかトレイシーに聞き始めた。

トレイシーとパティはどのような服が良いかと話していると、パティの硬さは徐々に取れていくのが分かる。

「完成がいつになるかはお伝えできないですが宜しいでしょうか?」

「構わないよ。どちらにせよ魔道具にする必要があるし、アレックスに預けておいて」

「かしこまりました」

パティは硬さは取れたが、かなり丁寧な接客をしている。

トレイシーは穏やかな性格なのでそこまで心配する必要はないのだが、初対面でしかもドラゴン相手なので勝手が分からないのだろう。

トレイシーから服の受け取りを頼まれたので了承した。

パティと会話をしていた通り、トレイシーの服は魔道具にして破れないようにしてある。ドラゴンになったら服が違う物に変わったり、魔法鞄に仕舞われるようにしたりする。

次は化粧品についてトレイシーに説明をする。

メグにお願いをしたいが、メグの硬い表情を見てアレックスが化粧の説明をする事にした。

トレイシーの顔に白粉を付けて鏡で見せると喜んでいる。

更に口紅を付けると色気が出てくる。

トレイシーは喜んでいるが、アレックスが友人としてトレイシーを見ると変な感じではある。ドラゴンの性別は両性なので判断が難しいのだが、トレイシーはどちらかと言うと男側なのだ。

元々トレイシーは綺麗なものが好きなので、髪が長かったりアクセサリーを品よく付けている。そこに女性用の化粧までするとどうしても女性的に見えてくる。

「楽しいなこれは!」

「気に入ったなら良かったよ」

「ああ。だが私には白粉は白すぎるので違う色が良さそうだ」

「口紅も別の色にした方が良いかも。トレイシーは目が赤いから似合って入るけど、もう少し真珠粉を減らした方が良いかも」

「これはこれで良いが、そうだな」

化粧品については専門外なので、どうすれば良いかなどの話ができない。

化粧をするのは無理でも会話くらいはできるだろうと、キャサリン殿下やメグに任せる事にした。

最初はやはりパティと同じように緊張しているようで、中々会話が上手くいっていないので、アレックスが時々会話に入って緊張をほぐそうとする。

トレイシーの気やすさによって、キャサリン殿下やメグも徐々に緊張がほぐれて来たのか、楽しそうに会話を始めた。

トレイシーとの化粧品についての会話が終わると、キャサリン殿下が帰る時間を想定より超過している事に気づいた。

キンバリーに尋ねると、キンバリーも気づいていなかったのか、キャサリン殿下にどうするか尋ねている。

キャサリン殿下は悩んだ後にどうするか決めたようだ。

「トレイシーとの話し合いは何よりも優先すべきでしょうが、しばらく王都に滞在するとの事ですから今日は帰っても良いかもしれません」

「アレックスの家に住むとなれば準備もあるでしょう」

「そうですね。そういえばアレックス、家具はあるのですか?」

キャサリン殿下に聞かれて、すっかり忘れていた事を思い出した。

今からトレイシーの家具を揃えたのでは今日の夜までに間に合わない。

焦っていると、キャサリン殿下から王宮で余っている家具を持って来させると提案された。アレックスはありがたく貰っておく事にする。

キャサリン殿下が帰るために護衛に守られながら応接室を出ようとする。

アレックスが応接室の扉を開けると、店の窓から外に大量の兵士がいるのが見えた。

思わず扉を塞ぐ形で止まってしまったので、背後に居るキンバリーから声をかけられた。

「アレックスどうした?」

「外が」

「外?」

キンバリーが隣に来たので窓を指差す。

キンバリーも窓から外を確認したのか、驚いたような声を上げた。違うとは思うが、一応護衛の兵士ではないのかと質問をすると、キンバリーが店に近い場所は騎士団が護衛していると言う。

ではあれは何なのだろうか?

トレイシーも気になったのか近づいてきて外を見始めた。

そういえば、トレイシーは護衛がいるのに何で店の中に入れたんだ?

トレイシーが店に入ってくる前の事を思い出すと、大鳥たちの警戒した鳴き声の後に店の扉が開いた音がした。すっかり忘れていたが、トレイシーはドラゴンの姿で王都に来た可能性がある。

トレイシーにドラゴンの姿できたのかと尋ねると、頷いた。

キンバリーが納得した様子で頷いた。

「ドラゴンに準備もなしに挑むのは無謀です。第一王女を守るためとはいえ攻撃するのは躊躇されます」

「それで様子見をしているんですか?」

「ええ、ドラゴンですから国王陛下に報告がされて、兵士に指示が出たのだと思います」

ドラゴンが王都に現れたとなったら国王陛下まで報告が行くのか。

ドラゴンについては問題がないと話に行くため、アレックスとキンバリーで外に出て説明をする事に決めた。

アレックスが玄関の扉を開けると、玄関の前にはピュセーマが座り込んでいた。

ピュセーマを撫でると、一瞬アレックスに視線を向け短く鳴いた。

アレックスとキンバリーがピュセーマより前に出て、指示を出している騎士を呼び寄せる。

キンバリーとアレックスの証言によって、ドラゴンが敵対的な相手でない事が保証されると、指示をしていた騎士は大きく息を吐いて空を見上げた。

騎士は「良かった」と呟いた。

心の底からそう思っているであろう呟きだった。

指示をしていた騎士を伴って店の中に戻ってキャサリン殿下と話をする。

話し合いの結果、店の外にいた兵士たちは順番に撤収する事になった。

国王陛下へ報告する必要があると、キャサリン殿下も急ぎ王宮へ帰る事になった。

アレックスは帰っていくキャサリン殿下を見送った。