軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

トロールの日焼け止め−3

アレックスは洞窟の中を確認して、此処が目的地である事を確認する。

湖から洞窟までの距離は直線距離だと近いが、洞窟を見つけるのに一時間以上探し続けていた。

もし同じ依頼があるのなら、次回はもっと早く辿り着けるが、依頼が来るかは分からないのが問題だ。

洞窟は人の出入りがないようで、事前の情報通りに鉱山にはなっていないようだ。

人の出入りが少ないと魔物が巣にしている場合があるので、慎重に進む必要がある。

腰に下げている作業用のポーチ型魔法鞄の中を確認する。

まずは両手が使えるように精霊のランタンに光を付けて浮かべる。

精霊のランタンは浮遊して所有者に追従するようにしてある便利な魔道具だ。

次に洞窟など空気に毒がある場合に装備する大鳥の加護と呼ばれる、大鳥の綿毛から作られたアクセサリーにも見える魔道具を腰に下げる。

メグも此処までは同じ装備を持っていたようで、一緒の物を装備している。

更にそこから採掘用のツルハシ、くさび、金槌、粉塵用のマスク、防護メガネなどの道具を問題ないか確認して戻す。

最後に剣や防具の状態を確認して、メグに問題がないか尋ねる。

「メグの装備は問題ない?」

「問題ありません」

「それじゃ行こうか。先に進むから後ろはお願い」

「はい」

洞窟に入る前に、ピュセーマとアネモスに何かあったら飛んで逃げるように伝えておく。

二人で確認しながら慎重に洞窟内に入る。

洞窟を進んでいくと洞窟の内部も天井がかなり高くなっている事に気づく。

トロールの身長が三メートル前後ある事を考えれば、天井が高いのは当然かもしれない。

洞窟の横幅に関しても、二人で横に並んで歩いても問題がないほどの広さがある。剣を振っても問題はなさそうだ。

慎重に進んでいくと、洞窟は意外な事にすぐに行き止まりになった。

行き止まりになっていると言うことは、採掘が行われていた可能性が高い。壁面に近づいていくと、壁面の一部が明らかに白くなっている。

鉱石については錬金術で使わない物な上に、物自体も珍しい物のようで、トロールの石とニコルに見せて貰った本には書かれていた。本に書かれていた特徴は、白い鉱石と有ったのでこの壁面の白い鉱石で間違いないだろう。

「メグ、今から採掘するから一応防護メガネと粉塵マスクをしておいて」

「わかりました」

メグに予備の粉塵マスクと防護メガネを取り出して渡す。

しっかりとメグが装着したことを確認すると、アレックスも同じように装着していく。

メグに周囲の警戒をお願いして、ツルハシでまずは壁面を崩せるか確認してみる。

軽くツルハシを壁面に振り下ろすと、大きな音が鳴って鉱石の一部が欠けた。

これはスキルを使えば簡単に採掘できそうだ。

身体能力を上げるスキルを使って体を痛めない程度に力を入れて振るう。

故郷でもスキルを使って採掘をしていたので、ツルハシが壊れないように特注で作って貰っており、アレックスが全力で使っても問題がない物になっている。

ツルハシが壁面に当たると洞窟内に凄まじい音が反響するが、壁面の鉱石が砕けて一度で大量に掘り出せる。

何度もツルハシを振るうと、結構な量の鉱石が取り出せた。

力任せにやっていたからか粉塵が大量に舞い始めた。粉塵を魔法で洞窟の外に飛ばしても良いのだが、十分に鉱石は掘り出せている。

採掘した鉱石を回収して洞窟を出る事にした。

ポーチ型魔法鞄に鉱石を入れると、行きとは反対にメグを先頭にして洞窟の外に出る。

洞窟の外に出ると安心する。

「魔物が出なくて良かった」

「ダンジョンでもなければ洞窟では戦いたくないので、本当にそう思います」

「メグはダンジョンに行ったことあるの?」

「私は数回ですが行っています」

アレックスは見学程度にしか行ったことがないが、ダンジョンは自然の魔力が貯まることで出来る特殊な空間で、強い魔物が生まれる条件が整っている。

なのでダンジョンを発見した場合は、ダンジョンが消えるように魔力を拡散させなければいけない。

魔力を拡散させる為にはダンジョンを攻略する必要がある。

ダンジョンを攻略するのは大変だが、見合うだけの価値がある物も取れる。

魔力で変異した魔物や採取できる物は、普通の素材に比べて優秀な効果を持っている事が多い。

錬金術師としてはダンジョンの素材は手に入れたい物でもある。

ダンジョンについて考えながら、今洞窟で採掘してきた鉱石をポーチ型魔法鞄から、普段使っている大型の魔法鞄へと移し替える。

日焼け止めを作るための次の素材は、植物の種子から取れる油のようだ。

しかし次の場所に向かったら採取中に暗くなってしまいそうだ。

メグと相談すると、次の場所で野営が間に合うかどうか微妙だとなり、今日は此処で野宿をする事になった。

野宿するための準備を始める。

まずはピュセーマとアネモスのために餌と水を用意して、次に薪になりそうな木を拾って火を起こした。

魔法鞄の中から調理道具を取り出して簡単な料理を作っていく。

作った料理をメグと分け合って食べ始める頃には空が徐々に暗くなってきていた。

食事をしながらメグと話していると、採取の手際が良いことに疑問を持たれた。

「アレックスが戦えるのは以前助けられて知っていますが、採取もできるんですね」

「田舎だったから簡単に買い出しに行けなかったし、父は人間で戦える人では無かったから自然と採取をするようになったんだ」

「やはり錬金術の為に素材を採取していたんですか」

「そうだね。全部の素材じゃないけど、近くで採取できるものは大体自力だったかな。採取位置を知るためにギルド員にもなっていたし」

メグはどうしてギルド員をやっているのかと尋ねると、吸血鬼の特性上戦う事が向いているのは知っていたので、試しにギルドに入ったら思った以上に楽しかったのだと教えてくれた。

戦うことは嫌いではないが、普段は魔物ばかり狩っている訳ではなく、依頼を受けて護衛などもしているのだとメグは言う。

ギルドで手早く稼ぐのなら魔物を狩るのが効率は良いのだが、危険と隣り合わせでもある為、戦闘だけで稼いでいる人は少数だと聞いている。

ギルドでは依頼を受けて稼いでいる人が圧倒的に多いらしい。

ギルドに持ち込まれる依頼は店の改装から、特定分野の教師募集、欲しい商品の取り寄せなど多岐にわたる。

ギルドの依頼には採取も含まれており、ギルドには依頼を達成する為に大量の採取情報が集まっている。王都に来た時に稼ぐ為に真っ先にギルドに行ったのはその為だ。

メグから今まで受けた変わった依頼などを聞きながら食事を食べ終える。

食事が終わった後は寝るための準備を始める。

交代で眠る必要があるので、どちらが先に寝るか話し合ってメグが先に見張りをする事になった。

野営のコツは寝れる時に寝る事と昔教わったので、魔法鞄の中から魔道具のマントを取り出して身につける。

メグに見張りを任せ、眠るように意識をすると、意識が遠くなっていく。

「アレックス、交代です」

アレックスはメグの声で起きて、すぐに見張りを交代する。

見張の最中は火の調整をしつつ、お湯を沸かして白湯を飲む。

白湯を飲みつつ、見張りを続けて気づいたのだが、この場所は動物が少ないようだ。

普通なら夜行性の動物が動く音や気配がするのだが、見張りを始めてから数回しか動物を確認できていない。

オーガは夜目が利く。

注意して動物の確認をすると、小動物ばかりのようだ。

植生をみると何故そこまで動物が居ないのか不思議ではある。

不気味だと思いながら警戒していると、夜空が徐々に明るくなっていく。