軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

路地裏の錬金術師−4

アレックスは、メグとスーザンの二人が何の話をしに行ったのか分からず、ロブと顔を見合って首を傾げていたが、二人が店の中に戻って来たことで、視線をロブから玄関の扉へと向けた。

何故かメグとスーザンは真剣な表情でこちらに向かって来ている。

アレックスは戸惑いながらもどうしたのかと尋ねると、スーザンが改装を早く終わらせる方法があると言い出した。

ロブがどう言う事かとスーザンに尋ねているが、スーザンはロブに返事をする事なかった。

スーザンがアレックスを見ながら口を開いた。

「作業に関わる事なんだけれど、アレックスは亜人についてどう思う?」

「えっと……」

不意打ちに近い形での亜人という言葉に思わず心臓が跳ね上がる。

アレックスは思わずスーザンから視線をそらしてしまう。

どうしても隠すほどの事ではないのだが、アレックスは人間とオーガのハーフなのだ。

兄弟子のマーティーから亜人は、怖がられる事もあるので隠した方が良いと言われている。兄弟子の友人であるジョシュも知っていて、亜人である事を尋ねてこなかったのだと理解している。

何か返事をしないといけないと思って、スーザンの顔を見た時にメグの顔も視界の中に入った。

メグの顔は気のせいでなければ目に涙が浮かんでいるように見えるる。

何故泣きそうなのかは分からないが、この話題が重要なことは理解した。

スーザンが真剣な表情で再び尋ねてきた。

「王都には亜人が少ないけれど居るんだ。アレックスの故郷には亜人は居なかったんじゃないかい?」

「いえ、私の故郷にも亜人はいました」

「ん? 居たのかい?」

「はい」

スーザンの表情が変わって、目を見開いて驚いた表情になっている。

話の流れ的に改装作業に亜人を入れたいという事だと理解した。

しかし、どうしてこんな話の流れになっているのか分からずに困っていると、ロブが横から声をかけてきた。

「故郷に亜人がいたって事は、もしかしてアレックスも亜人なのか?」

ロブが言った事に違和感を覚えます。

アレックスも? も?

「アレックスもって、もしかして?」

「ワシとスーザンはノームだ」

「あ、なるほど。私は亜人と人間のハーフなんです」

ロブに続いて思わず言ってしまったが、ロブが亜人ならハーフだと言っても怖がれることはないだろう。

予想通りロブは「なら明日からの作業には亜人を雇っておく」と言った。

ロブの変わらない対応に安心しながらも、好きに雇って貰って良いと伝えた。

ロブに兄弟子から聞いていた亜人はやはり怖がられるのかと尋ねると、路地裏の住人であれば問題ないと教えられる。

ロブは路地裏についての昔話を披露してくれた。

路地裏は約百年前の戦争時に各地から避難や戦うために王都に来た亜人たちが集められてた地区で、戦争の終結後も多くの亜人が路地裏に残った。

戦時中だった事もあって、多くの地区が住むための建物を決められた区画を無視して増築した。結果、王都の多くの地区が都市計画とずれてしまったので、再開発をすることになる。

当然路地裏も再開発地区に指定されたが、亜人特有の問題があって再開発が進まなかった。

王国側も理解を示して無理な再開発はしないままに現在にまで至るのだとロブが教えてくれた。

ロブとスーザンは戦時中に避難をしてきて、そのまま王都に住んでいるのだと言う。

同じようにメグの祖父と祖母も亜人で、路地裏の亜人たちのまとめ役だったのだとロブが話してくれた。

「若いのは亜人が多い理由を知らない場合が多いが、路地裏で亜人だと言っても怖がられることはないのは説明した通りな訳だ」

「そんな理由があったんですか」

「アレックスの知り合いで路地裏に住んでいた可能性もあるとは思うぞ」

「そうなんですかね? 戦争について詳しくは聞いていないんですよね」

「そうか。答えにくかったら良いのだが、アレックスは何のハーフなんだ?」

「ここまで話したら構いませんよ。オーガです」

「オーガ!」

とても驚かれて、そんなに驚く事なのかとアレックスは戸惑う。

何故そこまで驚いているのか尋ねてみると、オーガは戦時中に路地裏にも住居はあったが、男女共に戦争の最前線で戦う事が多かったので滅多に見かける事がなかったのだと、ロブが教えてくれた。

ロブのようなノームは裏方をするのが基本だったが、オーガは戦時中に二つ名を持った者も多く、路地裏でオーガを見かけると人気者だったとロブが懐かしそうに話してくれた。

そんな過去があったのかとロブの話に驚きつつも興味深く聞いていると、スーザンからオーガの特徴はないのかと尋ねられた。

小さいが角があると言って結んでいた髪の毛を解く。

元々髪の毛を伸ばしていた理由は別にあるのだが、角を隠すのに丁度いいと髪を結ぶ事で角を隠しつつ、魔道具となっている髪留めで軽く認識阻害をしている。

解いた髪を手櫛で整えつつ、髪の毛の中から角を見えるように出した。

「本当にオーガなんだね」

「ハーフなので角が小さいですけど」

「十分な大きさじゃないかい? 昔見たオーガとそう変わらない気がするけどね?」

「そうなんですか? 故郷だと三倍以上の大きい人が多かったのですが」

「三倍以上?」

スーザンからオーガは角の大きさで強さが分かると言われているが本当かと聞かれて、絶対ではないがそうだと答える。

スーザンが「三倍?」っと呟いて戸惑っているのが分かる。

スーザンに変わって再びロブが故郷が何処かと尋ねて来た。

村の名前を言っても分からないだろう。

オルニス王国の由来になっているオルニス山の中腹にある村だと言うと、今度はロブが固まってしまった。

戸惑いつつもロブとスーザンに大丈夫かと問いかけると、ロブが固まった状態から戻って、凄いところに住んでいるなと呟いた。

故郷のオルニス山は魔物や大鳥が大量に住んでいるところではあるが、歩き方を覚えれば住めないほどの場所ではないと伝えたが、普通は無理だとロブに言われてしまった。

無理だったら村がないので、無理ではないのだが……。

ロブはオルニス山の村と口に出した後に、アレックスを見て確認したいのだがと声をかけて来た。

「アレックスの故郷はスプルギティ村だったりしないよな?」

「そうですけど、田舎の村なんてよく知ってますね」

「田舎というか、秘境というか。何にしろオルニス王国では有名な村だな」

「そうだったんですか」

「というか待て、オーガの大雀という事は鬼雀か! しかもスプルギティの鬼雀……」

「鬼雀ってなんですか?」

鬼雀という言葉に聞き覚えがない。

ロブに聞き返したところ鬼雀について教えてくれた。

オーガが育てた大雀は鬼雀と呼ばれて、軍鳥として最高評価を受けているとロブが言う。

初めて知った事に驚きつつも、ピュセーマは移動が大変だという父の為に、村の皆が特に優秀な大雀を用意したので、鬼雀と呼ばれる大雀の中でも特に優秀という事になってしまいそうだ。

ピュセーマは相棒なので欲しいと言われても売る気はないが、相棒が凄いと言われるのは誇らし気持ちになる。

ロブから鬼雀の育て方を聞かれたが、村での方法しか知らない為、知っている方法だけ話していった。ロブはそれでも楽しそうに話を聞いてくれた。

ロブとの話が終わったところで、スーザンが実はメグも亜人とのハーフだと切り出してきた。

アレックスは自身と同じハーフの亜人に会ったのは初めてなので、驚いてメグに話しかける。

「メグもハーフなんですか。自分が言うのも変ですが珍しいですね」

「私も初めて自分以外でハーフに会いました」

「ですよね。私もです」

楽しそうに喋るメグの顔に涙は浮かんでおらず、亜人だと言うことで過去に怖がられた事があったのかもしれない。