軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53.王都での再会

「こら、エミリア様だろ。侯爵令嬢に失礼だと、あれほど教えたのに」

マリーさんが少し慌てた様子で、コリー君を窘める。

「だって……」

シュンとするコリー君

「いいんですよ、エミリア姉ちゃんで。マリーさんも気にせず、エミリアとお呼びください。ね、ヴィルお兄様」

「こちらの美形は、侯爵かい! じゃなかった、侯爵であらせられますか?」

マリーさんが少し戸惑いながら尋ねると、ヴィルお兄様が苦笑いを浮かべた。

「エミリアが望むように、楽にしてくれるとありがたい。その……、敬語も苦手ならそのままで。不敬とは言わないから安心してくれ」

「あー良かった、むず痒くてたまらなかったんだよ」

マリーさんは安堵の表情を浮かべ、自然体に戻った様子だった。あら?

「あの、ベンさんは?」

「ああ、ベンね。エミリアから手紙をもらって、今日来ることを知ったから、家で、食事の用意をしているよ。ベンはコックだからね。腕によりをかけて、うまいもん食わせるって、はりきってるよ」

「俺も、さっきまで手伝っていたんだぜ」

「そうなのですね」

ヴィルお兄様は、私たちの様子を見ていて、ふと真剣な表情になった。

「マリーさん、こんなところでなんですが、感謝を述べさせてください。リアに会えたのは、マリーさんのおかげです。リアに優しくしてくれてありがとうございます」

言葉には、深い感謝と誠意が込められていた。

「いや、大したことなんてしていないよ。それに、助けてもらったのは私たちの方だし……」

マリーさんは少し照れくさそうに答えたが、ヴィルお兄様はさらに続けた。

「それでもです。心身ともに弱っていたリアに寄り添ってくれた。本当にありがとう」

「い、いや、貴族様にお礼を言われると何とも……エミリア何とかしておくれよ」

「ふふ、マリーさんったら。あ、よかったらこれを」

困った様子のマリーさんに、セバスが準備していた領地の野菜が入った箱を差し出した。

「リアが、きっとマリーさんは高価なものは望まないと言ったので、領地の特産の野菜です。マリーさんへのお礼です」

ヴィルお兄様がそっと付け足す。

「うわ! 野菜かい? すごいね。見たことないものがたくさん。ベンが喜ぶよ。悪いねぇ。ああ、高価なものはいらないさ。いや、高価なものも嬉しいよ。だけど、盗まれるんじゃないかって毎日、はらはらするのも嫌だし、変に金目のものなんかあったら、またベンの悪い虫が騒ぎ出すかもしれないだろ? ああ、野菜が一番。食べ盛りの子もいるしね」

マリーさんは笑顔で話し、その楽しそうな様子に、私も自然と笑顔になった。

「アリー、やさい、だいすき」

「俺は、肉の方が好きだぞ」

子供たちが元気に答える。その言葉に場が和み、笑い声が広がった。

「はは、そうか。野菜は定期的に届けるつもりだったから……ああ、わが領地は、燻製肉も特産だ。それも入れよう。鮮度を保つ魔道具があるから、距離はあるが大丈夫だ」

ヴィルお兄様が提案した。

「まじか、言ってみるもんだな、母ちゃん」

コリー君が、喜びを隠しきれない様子で言うと、皆が再び笑った。マリーさんだけが少し恥ずかしそうにしていた。

コリー君が、箱を覗きながら言う。

「芋もたくさんあるぜ。練習し放題だな、エミリア姉ちゃん」

「ば、ばか、あんた。令嬢はそんなことしなくても……」

慌てるマリーさん。ヴィルお兄様が目を丸くして私を見つめる。

「リア、芋の皮をむいたのかい? 初耳だ」

「ええ、少しお手伝いを。駄目でしたか?」

私は少し不安げに答えた。令嬢がすることではないから、叱られるかもしれないと心配になったが、ヴィルお兄様はいつものように微笑んだ。

「何も問題ないよ。でも、リアの手料理か……いつか食べさせてくれるかい」

「はい! ドニに習います。食べてください、約束ですよ」

ヴィルお兄様の言葉に、私は少し驚きながらも嬉しくなった。自分が作った料理をヴィルお兄様が喜んでくれる姿を想像すると、微笑みがこぼれた。

「食事も用意してくれているというから、行っておいでリア。セバスは付いていくが、私たちがいたら気を遣うだろうから、どこかで時間をつぶす。夕方には、迎えに行くから楽しんで」

「そうだな、リアちゃん安心して。ヴィルの面倒は俺が見るから。なあ、ヴィル、仲良く買い物に行こうぜ」

彼の声はいつもと変わらず軽やかで、どこか楽しげな響きを持っている。

「なぜ私が、お前に面倒を見られないといけない……」

ヴィルお兄様が少し不満そうに答えた。

「そう言うなって、珍しい魔道具、お前も興味あるだろう?」

セシル殿下はそんなヴィルお兄様の態度を気にすることなく、にっこりと笑いながら肩を組んだ。

「……本当に珍しいんだろうな」

ヴィルお兄様は、少しそわそわしながら、セシル殿下の言葉に興味を示しているようだった。