軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04

ミレットの案内で、森の中を歩いていく。迷わずに薬草の群生地に到着した。

ミレットと出会った場所から、ゆっくり歩いて1時間ほど進んだところだ。

「このあたりが、群生地のはずなんですけど。でも匂いがないかも……」

どうやらミレットが探している薬草は匂いが強いらしい。

生えていれば、匂いが漂ってくるのだそうだ。

それでも、ミレットは一縷の望みをかけて薬草を探す。

俺もミレットに薬草の特徴を聞いて一緒に探した。

しばらくして、ミレットは力なく肩を落とす。

「……やっぱり。ここの薬草ももう食べられちゃったのかも……」

「他にはないの?」

「ここから30分ぐらいいったところに、たくさん生えている洞窟があります」

「じゃあ、そっちにもいってみよう」

「でも……」

「なにかあるのか?」

「はい。その洞窟には最近バジリスクが住んでいるみたいで……」

恐ろしい魔獣バジリスク。討伐ランクはB。Bランク冒険者のパーティならば、なんとか狩れるという意味だ。

当然、ソロならば難易度は跳ね上がる。目が合ったものを石化させる能力や猛毒の尻尾は、ソロだと特に凶悪になる。

その上、血は猛毒だ。剣などで切り裂くと、猛毒を浴びる羽目になる。

石化や毒化を喰らった後、回復してくれるヒーラーがいなければ待つのは死のみだ。

「バジリスクか。そりゃ怖い」

「そうなんです」

「でも大丈夫だぞ」

「ふぇ?」

「おっさんはな。バジリスク退治うまいからな」

反対するミレットを説得し、洞窟へと案内させた。

「薬草の匂いは?」

「……します」

「じゃあ、ここで待ってて」

「やっぱり危ないです」

「だいじょーぶだいじょーぶ。なにかあったら、大声あげてね。すぐ駆けつけるから」

洞窟の中へと入っていく。

「お、これが薬草だな」

洞窟にはバジリスクを恐れて猪の魔獣も入ってこないのだろう。手つかずの薬草があった。

一生懸命薬草を採取していると、

「シュルルルル」

洞窟の奥から不気味な音が聞こえ始めた。バジリスクが出てきたのだ。

気にせず採取を続ける。

バジリスクは逃げもせず、怯えもしない俺を警戒したのだろう。一気に近寄らず、じりじりと近づいてくる。

俺はバジリスクの方を見ない。だから石化の視線は効果がない。

だが、バジリスクは尻尾に猛毒の針を持つ。

充分に間合いを詰めたと判断したのだろう。バジリスクが高速で猛毒針を繰り出してくる。

「危ないだろ」

バジリスクの方を見ずに、魔法障壁を展開する。

ものすごい音をだしながら、猛毒針が障壁にぶつかる。

「グギギ……」

悔しそうにバジリスクはうめく。

そしてまた、猛毒針を繰り出してくる。

とてもうるさい。

「邪魔すんな」

俺は魔法障壁を高速でバジリスクにぶつけた。

「グエっ」

バジリスクは壁の向こうまで飛んでいく。

「ギギギ」

バジリスクも一度ではあきらめない。再び毒針を繰り出す。そしてまた俺は弾き飛ばす。

「これでいっか」

薬草を十分採取してから、バジリスクに向き合う。

当然、目は見ない。

いつ洞窟から出てくるかわからない。

それにバジリスクの針などは薬の材料にもなるのだ。

「さて。恨みはないのだが……」

言葉の途中で、バジリスクの目が光り、高速の猛毒尻尾が襲い掛かってくる。

俺は転がっていた小石を拾い、魔法で加速して撃ち込んだ。

バジリスクの眉間を貫き脳に刺さる。出血はほぼない。

バジリスクはすぐに動かなくなった。

「バジリスク退治は久しぶりだったけど、腕が落ちてなくてよかった」

俺は安堵する。倒せる自信はあるが、不手際があって洞窟に血をばらまいたら薬草が汚染されてしまう。

あらかじめ採取した分はあるとはいえ、来年も再来年も薬草は生えてくるのだ。

「おーい、ミレットー」

ミレットを呼ぶと、恐る恐るといった感じでやってくる。

「アルさん、大丈夫でしたか?」

「大丈夫だぞ。バジリスクは洞窟の外で解体するから運ぶの手伝って」

「えっ? うそ……、倒したんですか?」

「うむ」

「す、すごいです!」

ミレットがはしゃぐ。

「どうやって倒したんですか? アルさんはほんとうにバジリスク退治得意だったんですね。すごいです!」

感動している。照れくさい。

適当にバジリスク退治のコツを説明しながら、バジリスクを解体する。

尻尾や牙、眼球などは高値で売れる。

血も薬の材料になる。革も有用だ。捨てるところがない。

ミレットは薬師だけあって、解体助手としては申し分のない働きをしてくれた。

解体が終わるころ、日が沈んできた。

「この洞窟で野宿するかー」

「そ、そうですね」

ミレットは少しだけ言いよどんだ。

「む? あ、妹さんのために急いで薬草届けたい気持ちはわかるけど、夜の森の中を走るのは結構面倒だよ?」

「そ、それもそうですけど、そうじゃなくて」

「む? なにか問題があるの?」

「よ……」

「よ?」

「夜の野宿が怖いというだけです! すこしだけ、すこしだけですけど!」

ミレットは繊細なようだ。

二人で携行食を一緒に食べる。

それからミレットは俺の渡した毛布にくるまり洞窟の壁にもたれかかった。

「毛布借りちゃいましたけど、アルさんは大丈夫なんですか?」

「あったかい季節だからな。大丈夫だぞ」

森の闇は深い。

ミレットが怖がらないよう、洞窟の入り口近くに焚火をおこして、その横に座った。

少したって、ミレットがじっとこちらを見ていることに気づいた。

「寝ないのか?」

「まだ眠くなくて」

野宿に慣れてなければ、なかなか寝付けないのも致し方ない。

「ねえ、アルさん。どうしてあんなところにいたんですか?」

「あんなところ?」

「ほら、わたしが狼に襲われていたところです。道からも遠いし」

「依頼元の村に向かうために道を歩いてたんだけど、襲われてそうな声がきこえたから見にいった」

「そうなんですか。ありがとうございます」

「気にすんな」

少し考えて、ミレットは心配そうな顔になる。

「依頼は大丈夫なんですか? 遅れたりしていないといいのですけど?」

「大丈夫大丈夫。期限なんてないようなもんだし」

「ちなみにどこまでいくんですか? わたしの知ってる場所なら案内しますよ?」

「ムルグ村ってところ、そこで衛兵を募集してたから応募したんだ。知ってる?」

「ムルグ村ってわたしの村です!」

ミレットが大きな声を上げた。

「まじか」

それはよかった。今後の村での生活が過ごしやすくなりそうだ。

俺が内心喜んでいると、

「じゃあ、アルさんはしばらくムルグ村で暮らすんですね」

「その予定だぞ」

「そうですか!」

しばらくして、

「えへへ」

ミレットの囁くような声が聞こえた。