軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あいつの話

「あ、九重さーん!」

話している自警団に近づいていくと、山根が気づき手を大きく振った。

それで他の自警団も俺と久我に気づいた。

「近くを通りがかったら、なんか話しあってるから何かあったのかと思って。気にしすぎならそれでいいんですけど」

田茂は十数秒ほど唇を噛みながら考えている様子を見せると、他の自警団に対して目で合図をして、口を開いた。

「いや、君たちも聞いたほうがいいだろう。あながち無関係ではないからな」

山根が自分の隣の平らなコンクリートをぽんぽんと叩いたので、俺達も座ってじっくりと話を聞くことにした。

「それで、何があったんですか」

「この前、俺達が捉えた南の無法者どもの仲間がいただろう?」

「ああ! あいつな! 隼人! 俺をこき使ったあのボケナス! いい気味だったなーあの時は。あいつがどうしたんだ? 拷問とかしちゃった?」

ウキウキで尋ねる久我。恨みは深そうだ。

「俺達を何だと思ってるんだ。丁重に尋ねただけだよ」

「案外協力的だったっすよ。色々聞いたんすけど――」

――・――・――・――・――・――・――・――・――・――・

拘束された隼人は自警団が住居にしている小学校の体育館の、ステージ脇の小部屋に連れて行かれた。

そこで椅子に座ったまま足を椅子の足にくくりつけられ、正面には田茂と山根が立って隼人を見下ろしている。

「さて、お前には色々聞きたいことがあるが」

「全部正直に話して欲しいっす。そうすれば解放……するかわからないけど、ここで普通の扱いはするっすよ」

隼人は二人に向かって顔をあげると、唇を持ち上げて皮肉っぽく笑った。

「アメとムチってやつか? 面倒なことしてんじゃねえよ」

「お前が聞いたことに答えてくれるなら、面倒なこともないんだが。答えてくれるのか?」

「どうせ、俺達の一味のことを聞きたいんだろう? どこにアジトがあるとか、どんな能力持ってるかとか。それであいつらをシメたいっつーわけだ」

「わかってるなら話が早い。話してくれないか、お互いのために」

隼人は田茂と山根をじっと睨みつける。

そして、

「はっはははは! ざまーみろ! これであいつらも痛い目見るな!」

「……は?」

「あいつらクソ野郎だからな、人をこき使いやがって、今週の魔石が少ねえだの食料を持ってこいだの、口うるさく言うくせに、俺にはろくに飯もなんも寄越しやがらねえ。自分たちはアジトに色々かき集めていい暮らししてるっていうのによ! あいつらが自警団の連中にボコられたらいい気味だぜ」

田茂と山根は予想外の反応に目を見合わせる。

「あのー、もしかして、仲間のこと嫌ってるんすか?」

「ああ? 当たり前だろ、あんなムカつく奴ら。上だけいい思いして下っ端はショボい生活しかできねえし」

「じゃあなんでずっと一緒にいたんすか?」

「逃げようとしたらぶっ殺されるからに決まってんだろ、分かれよ馬鹿。それに、こんな世界じゃ逃げてどこいってもクソみたいな暮らしなのは変わんねえだろうし。……と、思ってたけどお前ら自警団って俺よりいい暮らししてそうじゃねえか。これはお前らの味方して恩売っておいた方が良さそうだ。へへ。いい暮らしできて、うぜえ奴らをお前らが潰してくれる。うーん、最高」

田茂と山根は予想外の反応に言葉を失うしかなかった。

――・――・――・――・――・――・――・――・――・――・

「――ってな感じで、むしろノリノリだったっすね」

「あいつ~、ちゃっかり取り入ったのかよ。なあ、素直に喋っても何発かぶん殴っといてくれよ」

「えー、そしたら僕らの方が悪者になっちゃいますって」

久我は不満そうだが、素直に喋ったのならそれ以上やることはない。

まあ、人を捕えて奴隷みたいにしてるやつの組織が、奴隷以外だからって丁重に扱うわけもないよな。トップだけが甘い汁を吸ってるってのはよくある話だ。

「で、素直に話してくれたのはいいけど、それが何でこの場での話し合いにつながるんだ?」

「南の奴らは、近々俺達自警団に大規模攻勢をかけてくる」

「なんだって?」

予想外の台詞を口にした田茂は、しかし冗談を言ってる様子はない。

田茂がこんな時に冗談を言う性格じゃないことは、わかっているはずだ。

「本当なのか」

「ヤツから他に聞き出した内容――ヤツが知ってる範囲での他の奴隷が捉えられている場所や、知ってる範囲での南の無法者の使うマホウを実際に確認できた。確認できた中で嘘は一つもなかった」

「それなら、信憑性はかなり高いか」

「ああ。だから襲撃情報を逆手に取って、準備を万全にして迎え撃つことにしたんだ。奴らが自警団を壊滅させるつもりなら、かなりの数の人員で責めてくるはず。トップも指揮をとるために来るだろう。そこで逆に奴らを壊滅させる。これまでみたいなパトロールで追い払うだけじゃなく、根本的・恒久的解決を図るんだ」

田茂の言葉に、その場にいた他の自警団の面々も力強く頷いた。

どうやら自警団はこのチャンスに徹底的にやるつもりのようだ。

「そんなわけで、今はどこで迎え打つかってことを現地を見ながら話し合ってたんすよ。小学校でやりあったら、住む場所がめちゃくちゃになっちゃって困るっすから」

なるほど、それはそうだ。

敵からしても、乗っ取れば快適に住めそうなところより、別のところでの戦いになる方が都合がいいだろうし、外で戦いを挑めば乗ってきそうだな。

そしてこれは俺達にとっても朗報。

南の無法者には何回かあったし、魔石集めの時に邪魔されたこともある。

俺以外の住民も、人影を見かけたから慌てて逃げたとか、そういう話をしていたし、行動が制限されてしまっている。

自警団が南の無法者を打倒してくれれば、自由に町を歩けるようになって大いに助かる。この戦いは俺達にとっても重要だ。

聞いておくべき重要なことは他にもある。

「その襲撃はいつですか?」

「今からちょうど1週間後の夜中だと言ってたっす。それで、小学校に来るならこの辺を通ってくるだろうから、ここで待ち伏せしようかって考えてるんすよ」

「九重くん、君と一緒に暮らしてる人に、当日はこの辺りに近づかないよう伝えておいてくれ。深夜にあえて外出することもないと思うが、念の為に」

「わかりました、皆に言っておきます。それじゃ、くれぐれも気をつけてください。待ち伏せするなら有利とは言え、戦いは危険でしょうから」

「ああ、ありがとう。だが必ず町の平和を守ってみせる。待っていてくれたまえ」

田茂は自信ありげにそう断言した。

「おもしれーことになってきたな! どうするよ九重?」

俺達は自警団と別れ、マンションへと帰っていった。

その帰り道で久我が俺に尋ねてくる。

「どうするって?」

「とぼけるなよ、わかってるくせに。俺達ただ待ってるだけでいいのか? つまんなくね? 仕返ししたくね?」

「やれやれ、彼らがやってくれるっていうんだから、あえて危険を冒す必要もないだろう。……と言いたいところだが」

いつまでも南の無法者達のせいで行動半径が狭まっているのも面白くない。

そろそろそういう縛りにも飽き飽きしてきたところだ。この戦いで自警団には是が非でも南の無法者達を壊滅させてほしい。

「念の為俺達も準備しておこう。”確実”に終わらせるために。マンションで快適な暮らしを送るためには、マンションだけじゃなく、住んでる町の環境も大切だからな」

「そうそう、駅チカとかコンビニが徒歩一分のとこにあるとかな! 環境は良くしなきゃならないんだよ!」

俺と久我は、マンションに帰るまでの道のりを、来たる決戦への作戦を話しながら歩いていった。