軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

今度こそ第二マンション建設

「この、チョコレートとクッキー生地の調和は素晴らしいですね。こちらは芋の風味とピリ辛いフレーバーが最高です」

コンビニの中でお菓子の袋を開けて食べているアンドラスは満足そうだ。

本当によく食べるなこの悪魔。本当に悪魔なんだろうか?

俺たちも欲しいお菓子を回収し、他にもティーバッグやコーヒーは今でも飲めそうなのでその辺りも持っていく。

やがてアンドラスもその場で食べるのは終わりにし、特に気に入ったお菓子を持ち帰るために持ってきていたアタッシュケースに詰めていく。

「お菓子を入れるには随分厳重ね」

「重要な品物ですから。それでは、今日の目的も無事果たせたことですし、この後はいかがしましょう。もう帰宅しますか?」

「目的全然まだよアンドラス君!」

「…………おっと。大変失礼いたしました、新マンションの建設をしなければいけませんね」

アンドラスの中ではそっちがついでみたいな扱いになっている。

やはり彼は魔界や地獄じゃなくてお菓子の国から来た悪魔だと思う。

それはともかく、ここまで来れば建設予定地もすぐ近くだ。

コンビニを出て数分歩くと、おおよそ地図で目星をつけておいた場所に到着した。

そこは元は駐車場だったようで、地面には白線と数字が今でものこっている。

そこそこ広いスペースがあって、他の場所との違いがわかりやすいし、近くには結晶化した街路樹もあるし、さっきのコンビニもあるし、この位置ならば場所を知っていればたどり着くことは難しくないだろう。

橋を渡ってずっと東に、CDショップが見えたら左折、まっすぐ行くとコンビニと結晶化した街路樹があるので、その近くの駐車場跡に第二マンションを建設。

覚えておいて、帰ったら住民達にも教えよう。

「ここでいいのね、本当に」

「ああ。ガレキだらけのところに作るのはイマイチだしな」

俺は蛍光する大きなこんぺいとうのようなものを取り出した。

これが、「第二マンションの素」だ。

昨日マンションの機能で、第二マンション建設を選択した。

すると、いつものようにマンション通販が届き、箱を開くと中にこれが入っていた。

箱を開いた時に音声の説明もあり、これを地面において、こんぺいとうの突起を押し込むと、そこに俺たちの住んでるようなマンションができるらしい。

俺は駐車場の中でなるべく平坦なところを選んで地面に置き、こんぺいとうを押し込んだ。

こんぺいとうの形が崩れ地面に広がり、強く輝きを放つ。

「まぶしっ! これでいいの!?」

「説明通りにはした……見ろ!」

光った場所からにょきりと黒い棒が二本生えてくる。

これは――マンションの門だ。

一つ目のマンションのある空間へと入るための門、それと同じものが地面から生えてるんだ。

完全に門が生えると、地面の光は消え去った。

「同じ、ね」

「ええ、我々の住んでいる空間への入り口と同一に見えます」

「ということは、これが第二マンションの入り口で間違いないだろう。入ってみよう」

歩いて門をくぐると――。

草原に青い空、間違いない。

そして小さな一階一室だけのベージュ色の壁のマンション。

同じだ、俺が初めてマンションを創造したあの日に見た光景と。

第二マンションは今ここに建設された。

「へえー、本当にあっちのマンションと同じように別の場所にワープするのね……って、小さっ! 何このちっちゃい箱は」

「初期マンションはこんなんだったんだよ。天音はそこそこ大きくなってからしか見たことないけど」

「マンションどころか、普通の戸建てよりも小さいじゃない。ちょっと豪華な体育倉庫よこんなの」

なかなかの言い様だが、たしかにそんなものか。

だがたしかにここから段々大きくなっていったんだ、初心を思い出すな。

「あらためて見ても驚きですね、マンションの外も、昔はこんなただの草原だったとは。あちらの方は、木々があり、家庭菜園があり、花壇があり、とても華やかで、元々こうだったとは信じられないほどですね」

当初を知らない天音もアンドラスも、興味深そうに第二マンションを見ていた。

そして俺も、珍しく感慨深くなってしまう。この小さく虚無なところから、アンドラスのいうようにあの色々あるマンションになったのだとあらためて思うと。

「………………だが、いつまでも思い耽っててもしかたないな。中に入ろう、そして美容室にしよう」

マンションの中に入り、101号室に入ると、いつもの間取りが現われる。

そして奥にはいつもの通販端末。

それを操作していくと、【サービス通販用部屋割り当て】の項目があり、

◆美容室化 150000MP

◆接骨院 100000MP

◆カラオケボックス 150000MP

と出てきた。

このマンションはまだ初期段階の大きさで、あっちのマンションのようなしっかりしたエントランスや管理人室がなく、入るとすぐに部屋がある。

なので、第一マンションでは管理人室からやる操作も、部屋の端末からできるようだ。また、第一で解放した機能はこちらでも使える。

天音が端末をのぞき込みながら言う。

「ちょっと震えるわね、150000MPも一気に使うなんて」

高額のPCを通販で買ったときに、最後の購入確認ボタンを押すときに心拍数が上がったことを思い出す。

もうやることは決まってても、それでも躊躇してしまうあの感覚。

だがそれを振り切って、俺はタッチパネルに指を乗せた。

画面が切り替わり、どの部屋をやるかを選択する画面が出てきた。

第二マンションの101号室を選んでタップする。

『該当の部屋から退出しドアを閉めて下さい。確認でき次第、改造が開始されます』

画面にそう表示された。

さすがに中にいたまま部屋を変えるのは無理か。

俺たち三人は外に出て扉を閉める。

マンションの外まで出て、しばらく待っているとガチャガチャガリガリと、隣家がリフォームしている時のような音が響いてくる。

「……止んだ」

三十分ほどで音が止まった。

俺たちは、101号室のドアノブに手をかけ、一気に開いた。

「うわあ! マジじゃない!」

椅子、ミラー、シャンプー台にワゴン。

ハサミ、コーム、ドライヤー、それとシャンプー、リンス、カラー、タオル。

その他美容室に必要なものが、開放的な空間にきれいに配置された、そこはまさに美容室だった。