軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

サービスサービス

西へ西へと向かった俺たちはその後も順調に魔石を集めていき、5kmくらいまで遠征して帰ってきた。

やはり遠くは質のいい魔石が多く、普段よりもずっと効率的に魔石を収集することができた。

そしてマンションに戻ってきて、換金ならぬ換MPの時間だ。

天音と共に魔石を全部入れると、【6202】MPになった。

一日でこれはかなり多い。

毎日遠征したら、一週間で相当なMPを稼げる。

「ふふふふふ、これはいいわね。明日も行くでしょ九重くん」

「ああ、そうだな。この数字を見せられたら行かないわけにはいかない」

それから数日、俺は天音と共に遠征を行った。

最初と同じく西方面だが、少し北や南に進路をずらすだけでも、手つかずの魔石が次々に見つかる。

ゴールドラッシュで西へ西へと向かった昔のアメリカのようだ。

そうして荒稼ぎして一週間がたった日だった。

魔石を投入すると、いつものように【6630】MPと数値が出たところまではいいが、それからだ。

部屋に戻り、晩ご飯をマンション通販で頼もうとしたとき、新たな項目があることに気付いた。

【サービス通販】

というものがトップページに表示されている。

そろそろ項目数が増えてきたので、無理矢理スペースに割り込むように窮屈そうな追加で少しレイアウトが崩れてきているように見えるな。

……いや、レイアウトのことは今はいいだろう。

そんなことより、久しぶりに通販に新たな項目が追加されたんだ。

サービス通販というものが何か、まずは見てみなければ。

【サービス通販】の項目をタップすると、画面が切り替わる。

◆整体 ――800MP

◆美容院――カット 500MP

――カラー 500MP

◆ホームクリーニング 2000MP

◆家庭教師 2時間 500MP

※必要MPは基本値です

……なんだ、これは?

いや、わかる。書いてあることはわかるが、予想を超えていてにわかには信じられなかった。

色々なものがある通販でも、さすがに人間がやることは無理だと思っていたら、マンションは予想を超えてきた。

サービス業にも対応してくるとは。

天音ご所望の整体もあるし、天音じゃなくても美容院なんかは結構嬉しいところだろう。今はハサミを買って鏡見ながらカットしてるから適当の極みだから。

とはいえ、この世界で髪に気を使う必要あるんだろうかという疑問はあるが。

「だけど、そういうところにまで気を配れるようになってこそ、本当に元の世界と同じような生活を取り戻したと言えるのかもな。そう考えればこれもまた重要か」

結構色々あるけれど、気になるのはどういう仕組みなのかってことだな。

やる人が必要だけど、アンドラスみたいに召喚されるのだろうか?

だが髪の毛切る専門の悪魔なんているのか?

謎は尽きない。

とりあえず、やってみればわかることか。

試しに美容院をタップしてみると。

・訪問 カット1000MP カラー1000MP

・店舗 カット500MP カラー500MP ※美容室が割り当てられた部屋が存在しません!

二種類あって、訪問と店舗。

ということは、訪問は家に来て髪を切ってくれて、店舗は店舗に行くということだろう。

訪問の方が高いのも、普通はそうだな。塾より家庭教師の方が高いことを考えても納得ではある。

だが店舗のほうは赤文字で書かれていて、エラー表示になっていた。

美容室が割り当てられた部屋が存在しないとはどういうことだ。

たしかにそんな部屋は存在しないけど、こう書くと言うことは。

「……もしかして、それ用の部屋を作れるということなのか」

たしかに美容院はそれ専用の器具とか色々置いてある室になっている。それを用意しなきゃいけない、ということのようだ。

しかしそんなものをどう用意しろと……まさか。

俺は管理人室に向かい、アンドラスに通販端末の起動を頼んだ。

すると【サービス通販用部屋割り当て】という項目があらたに増えている。

「これは見たことありませんね」とアンドラス。

「食べること以外の項目に気付かなかった可能性は?」と俺。

「その可能性は否定できません」と笑うアンドラス。

冗談はともかく、タイミング的に今出たものだろう。

それをタップすると。

◆美容室化

という項目があった。

それをタップすると説明が表示され、『空き部屋に美容室としての機能を持たせられます。解除すると元の空き部屋に戻ります』とのことだった。

つまり、このマンションは住むだけじゃなく、店にも出来るってことだ。なかなか面白いじゃないか、マンションの一階がコンビニになってるの建物なんかも昔はあったし、それと似た感じにもできると。色々拡張できそうで夢が広がる。

だが……必要なMPは脅威の150000MP。

「これはかなりの高MPですね」

「……ああ。さすがに高すぎるな」

「これならこのMPでごちそうを食べる方がよいかと思われます」

「同感だ」

他にも、空き部屋を改造する項目は◆接骨院 ◆カラオケボックス などあったが、いずれも高く、やはりMPがネックだった。

よっぽど金満になってからでしか手が出ない。そんな大富豪になってからの貴族の遊びだなこれは。

こっちは今のところは厳しそうだから、やってもらうなら訪問か。

割高だが、しかし美容室を作るのに比べればずっと安い。

それに訪問で設備が不十分だとしても、それでも十分ありがたい。さすがに無理だろうと思った人の手によるサービスを受けることができるのだから。

せっかくだからこの『サービス通販』一度使ってみたいな。

どれにするか……美容院もいいが、まずは遠征の疲れをとるか? 整体を頼んでみよう。ふくらはぎがパンパンなんだ。

マンション通販の端末を操作し、端末から整体の訪問を選ぶ。

すると10秒後にもうインターホンが鳴った。

「本当に来た、いったいどこから誰が来るんだ?」

ドアを開いて整体師を迎え入れるとそこには――シルエットがいた。

まるでのっぺらぼうのマネキンを一色で塗りたくったような、群青色の影が俺の玄関に立っていたのだ。