軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

重量0

ついに魔法の鞄を手に入れた。

通販の商品ラインナップに出てからずっと欲しいと思っていたものだ。

お金をためて欲しかったものを買う、この楽しさは崩壊前から変わらない。

自分の手元にそれがあるという事実だけで、浮かれた気分になってくる。

ようやく手に入れたのだから、使わなければもったいない。

ということで翌日は朝6時にマンションを出発した。

さすがに張り切りすぎかとも思ったが、張り切って悪いことはなにもない。朝日を浴びながら魔石集めに邁進していこう。

いつも通り黙々とガレキの中から魔石を探しだし、回収していく。

だがいつもとは違うのは、魔石を回収して入れるのが大きなバックパックではなく小さな鞄だということだ。

しかし、小さくとも鞄より大きな魔石を次々に呑み込んでいく。

そしてその近辺にある魔石を一通り回収したら、別の場所に移動する。

その時に鞄は真価を発揮した。

「軽い……!」

そう、軽い。

これまでは魔石をたくさん回収するほど、背中が重くなっていった。

しかも魔石の角が背中を圧迫して痛いし、魔石が多いのもそれはそれで辛いものがあった。

だがこれにはそれがない。

中にどれだけ入っていても重さは0だし、形状も関係なし。

家を出たときと同じ負担ゼロで歩けるのは、これまでと全然違う。

一箇所目を回収したあとでも、軽い足取りで素早く二箇所目での魔石回収に向かえる。

そして二箇所目でも魔石を回収。

以前ならこの辺でバッグが一杯になって、いったんマンションに戻らないといけなかった。

重たいバックパックを背負いマンションに戻り、それからまた探索の場所へと戻っていく。体力も時間も消耗してしまう。

だが、今日はそれがない。まだまだ魔法の鞄には魔石が入る。しかも重さもゼロ。ダイレクトに次の場所に移動できる。

この時短と体力節約は大きい。

俺はすぐさま三箇所目にいって、引き続き魔石を集めていった。

そしてその日は四箇所までまわって魔石を回収した。

最後の一箇所での魔石を入れてもまだ鞄が溢れることはなく、容量には余裕があるようだ。

帰り道の足取りも軽い。

重くないというだけではなく気分的にも。

そしてマンションに戻り魔石をMPに換金したが、それはおおよそ普段の平均の3割増しくらいだった。

早速効果有り。

結構なMPを使ったけど、3割多くMPが手に入るなら……鞄の値が5000MPだから……おおよそ20000MP稼げば支払った分ペイしてお釣りがくるな。

結構すぐじゃないか?

一ヶ月もかからずに買った分は取り戻して、その後は3割増しの恩恵を受け続けられる。

「やっぱり買って正解だったな」

明日の魔石探索も、やることはこれまでと変わらないのに待ち遠しく思いながら、俺はその日一日を終えた。

翌日からも同じように、これまでより効率のいい魔石稼ぎを行っていった。

やっていることは同じなのに、効率が上がるとなぜか面白く感じる。そのため探索時間も延びて3割よりさらに魔石をたくさん回収できるように。

楽しい時ほど時間は早く過ぎる。

あっという間に二週間がすぎ、MPがまた貯まってきた。

実のところ買いたいものはもう決まっている。

俺は通販端末を起動し、電化製品の欄へ。

例の魔電量販店にあれば話は早かったけど、これはなかったのだ。

「このポータブルCDプレイヤーは」

音楽が聴きたいとずっと思ってたんだ。主に雪代のせいで。

雪代が楽器を弾いていたのを聞いてから、久々に音楽を聞きたいと思っていたその欲求を満たすため、俺はポータブルCDプレイヤーと、イヤホンと、スピーカーと、CDを通販で購入する。

前はスマホで音楽を聴いていたけど、この世界じゃスマホがあってもしかたないからな。携帯電話基地局も折れてる世の中じゃ。

パソコンもないので電子データで音楽をダウンロードすることもできない。

となると、CDが一番いいということだ。

まさか、以前はほとんど聞いていなかったCDをこんな世の中になってから聴くことになるとは、人生わからないものだ。

ちなみにこれらの値段はそこまで高額ではなかった。全部合わせて数千MPくらいで、全然許容範囲。これで音楽が聴き放題なら安いもんだ。

早速、探索でマンションの外の廃墟を歩きながら音楽を聴いてみた。

………………。

さらに作業中にもイヤホンをつけて聴きながらやる。

………………。

「いい……」

単調な作業でも音楽があるだけで苦じゃなくなる。

昔も作業中は音楽かけながらやることが多かったな。

崩壊後の生活も、もうかなりかつての現代的生活に迫る生活水準に近付いて来たってことか。

しかし、音楽は心地良いのだが一つ問題がある。

この音楽、謎のミュージックなのだ。

どういうことかというと、俺が知ってる歌手が歌っていた曲ではなく、誰が作曲したのか誰が歌ってるのかも謎の曲なんだ。

もしかしたら俺が知らないだけで実在する曲なのかも知れないが、多分マンションが作った楽曲なんじゃないかと思っている。

実在するメーカーと違うものが出てくるお菓子と同じメカニズムだ。

その楽曲のCDはマンション通販の音楽コーナーに何百種類もあった。

ポップス、ラップ、ロック、クラシック、Lo-fi……一通りは揃っているが、どれも知っているものはなかった。だが視聴したら確かにそのジャンルだなと納得はできるように作曲はされていて、なかなか出来がよくて驚いたな。

マンションが作詞作曲をする、すごい時代になったものだ。

まあ別に、知らない音楽だから悪いってわけではない。

ちゃんと曲としては成り立っているし、歌声も悪くはないので、知らない洋楽を聴いてるような感覚で、これはこれでテンションは上がるので。

音楽効果か、俺の作業効率はさらに上がり、魔法の鞄とあわせて魔石をさらに稼げるようになった。

いつか知ってる自分が好きなアーティストの音楽をまた聴きたいものだ。そうすればさらに作業も捗るだろう。

「どこかに生き残ってるCDショップでもあればいいんだがな」

あるいは、魔石をさらにマンションに捧げれば、通販がまた進化して過去の楽曲を購入できるようになったりしないか。

考えつつ、初めて聞く音楽を聴きながら、俺は魔石を掘り出していく。