軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8話

『【速報】クロ、実はスタッフ説』

『箱企画でスタッフ席に居た件』

『配信者なのに裏方してるの何?』

LIVENTO大運動会から数日。

切り抜き界隈は妙な盛り上がりを見せていた。

原因はもちろん俺だ。

「……なんでこうなった」

事務所の休憩スペース。

俺はスマホを見ながら小さく呟く。

SNSトレンド、おすすめ欄、切り抜き、考察。

やたら流れてくる。

「だいぶバレましたね」

隣で真琴がコーヒーを飲みながら言った。

「いや裏方やってる事は別に隠してないですけど」

「視聴者知らなかったじゃないですか」

「まあ……」

知られていなかった。

というか、わざわざ言っていなかった。

配信中に話す内容でもないし。

すると。

「クローー!!」

騒がしい声。

星宮アリスがスマホ片手に突っ込んできた。

「見た!?!?」

「何をです?」

「これ!!」

画面を押し付けられる。

SNS投稿。

《考察》

・クロ、マネージャーと距離近すぎる

・箱企画後も一緒に居たらしい

・同じ時間にログイン消える

・実は同棲説ある

「……は?」

数秒固まる。

「なんでそうなるんですか」

「知らなーい!」

アリスが爆笑していた。

後ろでは天音ルナまで笑っている。

「いやでも出るでしょこれは」

「出ませんよ普通」

「お前ら普通じゃないからなぁ」

酷い言われようだった。

その横で。

「……同棲?」

白雪ミオが妙に真面目な顔をしていた。

「違いますよ?」

真琴が即答する。

「家近いだけです」

「鍵知ってるのに?」

「緊急対応用です」

「泊まるのに?」

「終電逃したので」

「ご飯買ってくるのに?」

「放置すると伊織が飯食べないので」

ミオが黙った。

数秒後。

「……ほぼ同棲では?」

「違います」

また声が綺麗に重なる。

アリスが机叩いて笑っていた。

「ほんっと息合うなぁお前ら!」

「四年ですし」

「夫婦じゃん」

「違います」

最近こればっかりだな。

「というか」

ルナがスマホを見ながら言う。

「クロ、今普通に人気だよねこの話題」

「嫌なんですけど」

「距離感バグってるVとマネって切り抜き伸びてる」

「最悪だ……」

俺は机へ突っ伏した。

なぜこうなる。

ただ仕事していただけなのに。

「伊織」

「はい……」

「諦めましょう」

真琴が完全に落ち着いた声で言う。

「いや真琴さんダメージ無いんですか」

「別に事実じゃないので」

「メンタル強……」

「あと」

真琴が少しだけ笑った。

「面白がられてるだけです」

「まあそうですけど……」

実際、炎上ではない。

むしろ逆、リスナー達は妙に楽しんでいた。

『クロ、マネと距離近すぎて草』

『なんか空気が熟年』

『仕事仲間感も強い』

『でも恋人感とは違うんだよな』

『分かる』

……なんなんだその分析。

「リスナー理解度高くないですか」

「長年見られてますからね」

真琴が平然としている。

その時、俺のスマホが震えた。

配信通知アプリ。

切り抜き。

【クロ、配信中よりスタッフ席で盛り上がる】

「もう嫌だ……」

「配信しましょうか」

「現実逃避みたいに言わないでください」

でもまあ。

配信付ければ、少し落ち着くかもしれない。

数十分後。

『うおおおおお』

『ゲリラ!?』

『例の件について』

『同棲ってマジ?』

『マネージャーどこ!?』

「お前らさぁ……」

配信開始直後からそれだった。

コメント欄が早い。

「違いますからね?」

『否定早いw』

『でも家来るんでしょ?』

「仕事です」

『鍵知ってる?』

「緊急用」

『泊まる?』

「終電逃した時だけ」

『飯買ってくる?』

「たまに」

『同棲では?』

「違います」

コメント欄が草で埋まる。

絶対面白がってる。

「というかお前ら距離感の話好きすぎだろ」

『クロが珍しい』

『マネとの空気感が自然すぎる』

『長年一緒感ある』

「まあ長いですからね」

新人時代から配信も案件も失敗も全部見てきた。

だから今更変に気を遣う関係でもない。

『真琴さん今いる?』

「居ますよ」

『!??』

『また!?』

『草』

その時。

画面外から声。

「伊織、お湯沸きましたよ」

コメント欄が爆発した。

『!?!?!?!?』

『居るじゃねぇか!!!!』

『同棲だろこれ!!』

『生活感がリアルすぎるwww』

「いや待ってください」

俺が頭を抱える。

「普通に編集室です」

『会社!?』

『会社なのかよw』

『でも一緒に居るの草』

笑いが止まらないコメント欄。

その向こうで真琴が少しだけ吹き出していた。

……絶対楽しんでるなこれ。