軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【80】やっと帰れたのにまた出張です

『カワグチ殿、色々と頑張ってくれてありがとう』

次の日、セイン様から連絡が来た。

「いやー大変でした。ネックレス送ってくれて、ありがとうございます。無事アルカディアにも届きました」

すると、セイン様は満足したように息を吐いた。

『よかった。無事届いたみたいで。それでさ。なんとかセイワ共和国の王族の洗脳を解きたいと思っているんだよね。僕の方で水面下で動くよ。だから、その間に君にはラングスチアの各駅にもコンビニと事務所を作ってもらってもいいかな?』

「あー、昨日フィオナさんともそうなるだろうねって話してたんですよ。いいですよ。でも、今日一日くらい休暇を貰ってもいいですか?」

『うん。もちろん。沢山働かせてごめんね』

珍しくセインさんが謝るのでニヤッとしてしまう。

「いやー、本当ですよ。僕、ダラダラしたくてこの世界に来たんですからね? 鉄道がうまく開通してセイワ共和国の洗脳が解けたら、何か奢ってくださいよ?」

『ははっ。僕に何か奢れなんて言えるのは君ぐらいだよ。了解。じゃあ明日からよろしくね。駅の場所の書いた紙をすぐに送っておく。各領主にも連絡をしておくから』

セインさんはそう言ってから電話を切った。

「大丈夫でしたの?」

フィオナさんが心配そうに俺に声をかけてきた。

「うん。とりあえず俺はフィオナさんの言っていた通り、ラングスチアでも各駅に建物を建てることになりそうかな。申し訳ないけれど、明日出発する。あとはセインさんの方でセイワ共和国の洗脳を解きたいって言ってる。どうにかスキル無効化のピアスを王族に渡したいって話だけど」

「……そうですの。でもセイワ共和国は現状、王族もカミシロ様の”部下”になっているわけでしょう? 最初の一人の洗脳を解くまでが大変そうですわね。まさかセイン様が直接行くわけではないですわよね」

その言葉に俺は考え込んでしまう。

「それは流石にないんじゃないかな? 偵察に魔道士も潜り込ませているみたいだし。多分洗脳解除は実践に長けている人がやるんだと思う。で、味方が増えてきて話し合いができるようになった段階でセイン様がセイワ共和国に行くんだと思うけど」

「……その時、貴方も呼ばれるんじゃないかしら」

フィオナさんはどこか心配そうである。

「まあもし呼ばれたとしても、俺は洗脳無効化のネックレス持ってるしさ。大丈夫じゃない? きっと」

まあ、なるようになるだろう。

その日は結局、フィオナさんと買い物に行ってから家でのんびりした。

たまに自炊もしてみた。

俺、一応フィオナさんに働いてもらっているし名目は”領主兼主夫”だしな!

今日はフィオナさんが食べたいというのでカレーライスを作ってみた。

「ナーミャの人ってカレー味好きだよね。リオネルさんもカレー味のカップ麺好きだったし」

「まあ、そうですの? でも確かに香辛料が効いた料理を好む人が多い印象ですわ」

何度もフィオナさんはカレーライスをお代わりした。

ペロもいるので4合米を炊いたが、フィオナさんが沢山食べるのであっという間になくなった。

「お主のカレーはなかなか美味いのう」

ペロも満足そうにお腹をさすっている。

「そういえば、リオネルさんって元気なんかな?」

話が出たのでなんだか気になってしまった。

「ええ。この前、鉄道事業の件でお話ししたんですが。元気そうでしたわ。奥様のユリア様とも仲睦まじいようですし。あ、それと、婚活パーティーにきていらっしゃったランガス伯爵令嬢のことは、覚えていらっしゃいます?」

そう言われて俺は首を傾げる。

「ランガス伯爵令嬢? ……誰だっけ?」

「ほら! 実家で虐げられていると仰って、残った食べ物を全部持ち帰ろうとしていた方ですわ」

ああ……! そういえばそんな人もいた気がする。

「その人がどうかしたの?」

「役場の職員として正式に採用されたみたいですわ。この前グレイスさんと話していたら挨拶して下さいまして」

どうやら彼女は本当にアルカディアに住むつもりらしい。

「へえ、それはよかった。頑張ってるんだよね?」

「はい。ただ、カフェテリアのジュースを、ペットボトルに入れて毎日持ち帰っていたのが見つかったみたいで。怒られていましたわ」

うーん、やっぱり意地汚さは変わっていないようだ。

俺はカレーのお皿を洗うと、明日の準備を始めた。

さっき買い物に行った際、訪問予定の領地の領主にお土産も買っておいたのだ。

ナーミャではフォンティーヌ領を含めると駅が全部で九つだった。だが、ラングスチアの駅はアルカディア以外に十一個もある。最終駅は皇都だが、全部の駅にコンビニを建てるのなら、長期出張になりそうだ。

「それじゃ明日早いんで寝ましょうか」

「ええ」

俺たちがベッドに入るとペロもソファにゴロンと横になった。

こうしてアルカディアでの束の間の休暇が終わってしまった。

◇◇

「まあ! このお肉の入ったクレープ、とってもおいしいですわ」

次の日の朝。

俺はラングスチアの屋台で買ったクレープを朝ごはんにフィオナさんとペロと食べていた。

フィオナさんはクレープが気に入ってくれたらしい。おかわりして色んな味のものを食べていた。出来立てを食べれるのは、アイテムボックスのお陰である。

「この芋のお菓子も美味しかったんで仕事の合間に食べてくださいね。またお土産買ってきます」

朝食が終わると、俺とペロは兵舎からタロウを借りて旅立つことになった。

「おお、カワグチ様。出発ですか?」

朝早くから出勤していたクリスさんも見送ってくれた。

アルカディアの騎士団員達はここでの生活にだいぶ慣れてくれたみたいだ。

「ええ。最近は不便なことはないですか?」

俺が尋ねると、クリスさんは顎に手を当てて少し思案をした。

「そうですね。不便ってほどじゃないですけど、兵舎にある食堂が昼時になると凄く混むんですよ。食堂以外に、コンビニも作ってもらいたいですね」

「わかりました。じゃあ帰ってきたら作りますね」

俺は約束してからタロウに乗った。クリスさんとフィオナさんが声をかけてくれる。

「「お気をつけて」」

「はい。タロウ! ペロ! 行くぞ!」

その瞬間、「グルオオオオッ」とタロウが咆哮した。

俺達は飛び立った。ラングスチアの駅にもコンビニと事務所を作らなければならない。

◇◇

「えーっと。ここら辺かな。あ、いたいた!」

タロウに乗って三十分経過した。無事アルカディアの隣のマホリラ領についた。

「いやあ、アルカディア伯爵、ご高名はかねがねお伺いしております。私も先日ショッピングモールに行ってきたのですが素晴らしかったです! 今日コンビニが我が領にできると聞いて楽しみにしていたのですよ」

モホリラ侯爵は赤髪のシュッとした感じの紳士だった。

俺がくる前はラミア村などの災害村の支援をしていたらしい。だが、限界を感じていたらしく、助かったと何度もお礼を言われてしまった。

「そんじゃ、建てますよー」

ゴゴゴゴゴ!!!

コンビニと事務所が同時に建つ。一瞬で建てられるとはいえ、数が多く移動距離も多いのでなかなか大変である。

「おおおおーー!!」

出来上がったコンビニと事務所を見て、侯爵が嬉しそうに歓声を上げた。

「このようにスキルで建物を建てるのを初めて見ました! 素晴らしいですな」

俺は一通り使い方について説明した。すると、そのあと、侯爵がランチに誘ってくれた。

「せっかくなので、我が領の名物を食べていきませんか?」

今日は作業が早めに終わったので了承する。

ランチには牛肉っぽい肉を使ったトマト煮込みのような料理が出てきた。

「おお、これは美味しいですね」

「はい。この肉はこの近辺で取れるボア系モンスターの肉を使っているんですよ。多分アルカディア領でも取れると思いますよ」

なるほど。近くの名物料理を食べながら、さらにアルカディアの名物料理を考案するのもいいかもしれない。

アルカディアには特にまだ名物がない。

俺がスキルで出した料理は名物と言えるかもしれないが、スキルで生み出した以外の料理も作りたいところだ。

アルカディアはナーミャに近いから、香辛料を効かせたビーフカレーなんかもいいかもしれないな。

俺はこれから、建物を建てに行く際、できるだけ現地の名物も食べようと決心した。