軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【78】温泉宿の監視カメラに映っていました

「出来たー!!」

コンビニと事務所を建てて、俺は安堵の声をあげる。すると、フォンティーヌ公爵がホッとした顔をした。

「これは心強い。カワグチ殿、本当に感謝する」

「ええ。どうか、これからは関係者に″来客があった際はコンビニかこの建物の中で打ち合わせをするように″と、指導して下さい。打ち合わせ用の部屋もあるので大丈夫でしょう? 他の駅の領主にも同じように伝えた方がいいかもしれないですね」

すると、公爵が頷いた。

「ああ。もちろんだ。ライオネル様に許可を頂け次第、駅の建設予定地の地図を渡そう。今後、こういうことがある前に対策を打たねばな。各領主にも、測量隊が消えたと連絡はさせてもらった。これからカワグチ殿がコンビニと事務所を建ててくれることを伝えておこう」

慌ただしく関係者の人達が動き出す。そんな中、公爵夫人がニッコリと笑った。

「では、私達はホテルの方にいきましょうか。カワグチ様、あなた、ペロさんと温泉に入りにきたのでしょう? ずっと働き詰めだったのだから少しはゆっくりしなくちゃいけないわ」

確かにダラダラするのが俺のポリシーだったが、最近色々ありすぎて働いてしまっていた。

「父上ー! 僕達は、先に温泉に行っていますね」

クリスさんがそう告げてくれ、温泉に向かうことになった。

◇◇

「おお! 公爵夫人!! きて下さりありがとうございます」

新しく支配人になった男性が、感動したように公爵夫人に声をかけた。

「いえ、それより最近どう? 変わったことなどはなかったかしら?」

「はい。だんだん賑わってきてはいますが。良い変化ばかりですね」

ペロは温泉に来れたことがよほど嬉しいのか、しきりに尻尾をフリフリ降っている。

「ナツキッ! あとで売店に行こう! あのお菓子を買いたいわいっ」

ペロが食べたがっているのはジャガイモのスティックのお菓子だった。一箱の中に色んなフレーバーで味付けされたジャガイモ菓子が入っているらしい。

「おーいいぞ。あとで買いにいこう」

ペロと話していると、ふと売店の近くの防犯カメラが目に入った。俺は少し気になったので尋ねてみる。

「すみません、ここって客層は地元以外はナーミャの貴族がやはり多いんでしょうか? チラッと商人も来るようになったと伺いましたが、その人達はどこから来ていますか?」

「そうですねぇ。ここはナーミャでも端の方なので……。色んな国からいらっしゃいますよ? 最近、ヴァラとセイワ共和国の国境が封鎖されたので、周り道をして、ナーミャを経由していく人達も増えましたし」

その言葉に俺はハッとする。

「あの、もちろん客室はプライバシーがあると思うので厳しいと思うのですが。よかったら、ロビーだけでも監視カメラの映像を見させて頂くことは出来ないでしょうか」

すると、支配人は頷いた。

「ええ、公爵様の関係の方なら勿論です。事務所に来て頂いていいですか?」

俺はクリスさんと公爵夫人、それにペロと一緒に事務所に入っていった。

手前にあるモニターには、監視カメラの映像が映っている。

「セイワ共和国の商人がきたという日の映像を見せて頂いてもいいですか? あと一昨日の映像も見せて下さい」

俺達は一時間くらいかけて映像を順番に見ていく。

途中でペロが飽きてしまったので、公爵夫人と一緒に抜け出し、お菓子を買いに行った。

クリスさんと俺は残って、真剣に映像を見る。

すると、黒髪でカミシロさんに似ている男性が、ロビーで誰かと話しているのが見えた。

「停止してくださいっ!」

映像を止めて拡大する。

すると、ローブをかぶっているが、その男性は間違いなくカミシロさんだった。

「やっぱり! クリスさん、このローブの人と話してる男の人なんですけど。もしかして測量隊の人達の中で偉い人とかじゃないですか?」

俺の言葉にクリスさんが眉を寄せる。

「恐らく。父にも確認してもらう可能性がありますが。呼びますか?」

「ええ、お願いします」

クリスさんが早速公爵に魔道具で「見てもらいたいものがある」と連絡した。すると、20分くらいでやってきた。

「父上っ! この映像でカミシロと話しているのって測量隊の人じゃないですか」

公爵がジッと映像を見つめる。

そして、溜息を吐いた。

「ああ。これは間違いなく測量隊のリーダーだった者だ」

「……それじゃあ」

クリスさんの言葉に俺は頷く。

「ええ……。これで確定しました。恐らく、洗脳されて、どこかに移動したのでしょうね」

一昨日。つまりカミシロさんは俺とセインさんにラングスチアから返されたあと、すぐにここに向かったのだろう。

明確に鉄道事業を邪魔したいという意図を感じる。

「こうしちゃおれん! すぐにライオネル様に報告をせねば!」

公爵はすぐに慌ただしく出掛けてしまった。

「支配人さん、ありがとうございました。この事は他言無用でお願いします」

俺がお礼を言うと、彼は神妙な顔をした。

「ええ……わかりました。なんだか大変そうですね。あの、もし良かったら今後商人を名乗る怪しい者が来たら公爵家に報告した方がよろしいでしょうか」

「はいっ、お願いします」

俺達が事務所を出ると、ペロと公爵夫人がロビーに併設されたカフェでパフェを食っていた。

「あー、ペロ! いいもの食べてるなっ!」

「ここのパフェは絶品だわいっ! ナツキもクリスも食べるが良い!」

夫人がシャインマスカットっぽいパフェ、ペロが苺のパフェを食べていたので、クリスさんが桃のパフェ、俺は抹茶パフェを注文した。

「あー、労働後の甘いものは沁みますね……」

「本当じゃわいっ! やっぱり疲れている時には甘いものじゃなっ」

俺たちはパフェを食べ終わったあと、ゆっくりと温泉に入った。

ちなみに途中から公爵も来た。そして、皆でゆっくりと晩ご飯を食べた。

結局俺達はフォンティーヌ家の屋敷には戻らず、その日はホテルに泊まる事にした。

明日から俺はコンビニを作るためにナーミャの各駅を回ることになるからだ。

この街を起点に少しずつ移動することになる。

公爵が俺に地図を見せた。

「先ほど、ライオネル様から許可を頂き、この地図を手に入れた」

温泉を上がり、公爵に見せられたのは、路線図と駅を建設する場所が詳細に書かれた地図だった。

「了解です。明日から順番に回っていくことにします」

見ると、アルカディアに行くまでに八駅もある。

つまり1日二駅回ったとしても、帰るまでに四日ほどはかかるということだ。

結構忙しくなりそうだ。

「はあー。温泉もご飯も最高じゃったのう」

部屋に戻ると、ペロは大分お疲れモードでベッドにダイブした。

「ごめん、ペロは寝てていいよ。俺はフィオナさんに連絡するわ」

言いながら俺は魔道具を使ってフィオナさんに連絡をした。

『ナツキ様っ』

連絡をするとすぐに彼女が出てくれた。

「フィオナさん。ずっと留守にしててごめん。今、俺たちナーミャのフォンティーヌ領にいるんだよね。実は鉄道の測量隊が消えちゃってさ。ちょっとゴタゴタしてる。アルカディアに帰るの、もう少し遅くなりそうだわ」

俺はラングスチアであったことを、かいつまんで話した。

『……まあ。そうでしたの。実は、セイワ共和国の王太子には、昔お会いしたことがありまして。その頃は国もまともで、彼も良い人だったんです。国がおかしくなってしまったのは、洗脳されていたからだったのですね』

「うん。恐らく。あ、それで、作業員の洗脳を防ぐためにさ。防犯カメラ……監視の魔道具のようなものを設置したくて。コンビニを作れば、防犯カメラがついてるだろ? だから、俺がコンビニと事務所を各駅に作ることになった。八駅あるから、すごく急いで移動してもアルカディアに戻るまで、四日はかかるかな」

すると、魔道具の向こうでフィオナさんは息を呑んだ。

『まあ! わかりましたわ』

「アルカディアは今のところどう?」

『ええ、今の所は怪しい事はないですわね。少しずつ一昨日から商人や冒険者も入り込んで参りましたわ。身分証のチェックなどを改めて徹底させますわね』

俺はベッドで健やかに寝息をたてるペロの隣に横になった。

明日からはいよいよ各駅を回ることになる。

……早く帰ってダラダラできたらいいんだけどな。

そう思いながら目を閉じた。