軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【7】追放令嬢の実家に行ってみた。

「あ、おはようございまーす」

──次の日。

九時くらいに起きた俺とペロがコンビニに行くと、フィオナさんが神妙な顔でイートインスペースでサンドイッチを食べていた。

「おはようございます……」

「──どうしたんですか? 何か考え事ですか?」

俺が尋ねると、フィオナさんがポツリと呟いた。

「あの国は、どうなってしまうのかなぁと思いまして。その、父と母は貴族然とした人間でしたし私の事をどう思っているのかよくわかりませんが……。──私、弟とは凄く仲が良かったんです。カンデラ家は昔は評判は良かったんですが、前領主が馬車の事故で亡くなり、弟である現在の領主に変わってから評判が悪くて。前領主の娘がいた筈なのに、社交界に出てくるのは自分達の娘だけ。──監禁してるっていう噂まであるんです」

朝から思い話を振られ、俺とペロは固まってしまったが、フィオナさんはさらに続ける。

「しかも前夫妻が亡くなったのがその子がまだ一歳の頃でして、どんな令嬢か誰も見た事がなくて。やりたい放題なんですわ」

するとペロが少し気まずげに言う。

「なんだか人間の世界も大変じゃの」

「ま、でも、気にしたって仕方ないですよ。だってフィオナさん、もう追放されちゃったんですよね?顔、割れちゃってると思いますし。──僕も近くの街とかいってみたかったんですけどね」

俺がそう言うと、ペロがハッハッと息を吐いた。

「──ん? 行けるぞい? ワシが連れてってもいいが、せっかくだし、アレに乗ってけばいいんじゃないかの?ドラゴンなら”あにめ”一本分もかからない時間で着くぞ?」

つまり、三十分かからないってことかな?

外を見ると、さっきサラダチキンをやったドラゴンが大人しく水を飲んでいた。

「……あ」

なんか、実際に行けるとなるとちょっと面倒に感じてくるのはどうしてだろう。

「お願いしますっ! カワグチ様。どうか私の実家であるフォンティーヌ家と、カンデラ家の令嬢がどうなっているかだけでも見てきてくれませんか? ──金貨二十枚ほどお支払いしますわ!!」

その言葉に俺はピクリと反応する。

金貨二十枚……。つまり、ちょろっと行ってくるだけで二十万だと?

「──もちろんです。住人が困っているのに大家としては放っておけないですからね」

俺はニッコリと笑顔を作る。

「じゃ、ワシも暇だから行ってくるわい」

こうして俺達は朝ご飯を食べ終えると、すぐに出発した。

◇◇

「おおー。すっげー」

ドラゴンは昨日から俺が餌をやっていたから普通に懐いてくれたので、嫌がる事なく背中に乗せてくれた。

寒そうなので日本製のウインドブレーカーを着たが、結局ペロが結界を張ってくれたので適温が保たれている。

「なかなか景色がいいのう」

ハーマンさんが乗ってきた鞍に手綱もついており、意外と怖くない。

ドラゴンは割と一般的な乗り物なのか、ちらほら見かけた。

俺達はあっという間に隣国の王都に着いた。

そして、他の人達がドラゴンを預けているらしい大きな広場に降り立った。そして、まずは地図を書いてもらったフィオナさんの実家に行くことにした。

「へえ、結構、綺麗な街じゃん」

ちなみに隣国の王都は石畳が整備されており、噴水や花壇があるヨーロッパのような街並みだった。

川に煉瓦で出来た立派な橋がかけれていた。その上ではヴァイオリンのような弦楽器を演奏している人や花を売っている人もいる。

色んなお店がひしめき合っておりなんだか面白い。憩いの場所っぽい噴水のある広場では屋台も出ていた。

「いい匂いがするのう……」

ペロが涎を垂らしているので笑ってしまう。

「食べてみるか」

串焼きを買って食べると、結構美味かった。

「うん。焼きたてだと結構美味いな。──よし、それじゃあ食い終わったら行こうか。あ、でもその前に服屋でちゃちゃっと着るものも買うわ」

言いながらペロと立ち上がり、俺は服屋に向かった。

なんとなくマンションの部屋にあった日本のファストファッションだと浮いていると感じたからだ。

茶色いズボンと革靴、そして麻の服に緑のローブと革の鞄を買った。それからフォンティーヌ家に向かった。

「おおっ!! でっけー!!」

俺が屋敷を見上げて感嘆の声を上げると、門番が訝しげに見てくる。

「何者だ!」

「あ、僕、カワグチナツキと申します。えー、フィオナ様を隣国で保護しまして。ご家族のご様子を気にしていたので、様子を見に来たんです」

その言葉に門番の兵士は目を見開いた後、わなわなと震えた。

「嘘を申すなっ!! 御家族の心中も知らずによくも勝手な事を!!」

「いや、本当ですって。ほら」

この前撮ったペロとフィオナさんの写真を見せると兵士は固まった。

「──なっ、なんだ?! この魔道具は!! ……わかった。旦那様の許可を得たらお通しする。しばし待たれよ」

そう言われて俺は五分ほど門の前で待つ。

すると、慌てた様子で少しキツイ顔をした金髪のナイスミドルと茶色い髪の目が大きく可愛いらしい感じの貴族夫人がやってきた。

あ、お父さんとフィオナさん、そっくり。

「私が当主であるリュート・フォンティーヌだ。其方がフィオナを保護してくれたお方だというのは、本当か!!」

「あ、はい。そうです」

そう言われて俺は先ほどの写真をフィオナさんの写真を見せる。

「──貴方っ!!」

夫人が涙目で言うと、公爵が泣き崩れた。

「お、おおおおおおおお……」

なんだ。ちゃんと愛されてたんじゃん。マンション代、公爵家に請求すればよかったかな。

俺はそんな事を思ってしまった。

◇◇

「そうですか。そういう流れでフィオナは貴方の経営される集合住宅に」

「──まあ…! でもあの子、ずっと貴族令嬢で使用人が常にいたのよ? ちゃんとやっていけてるのかしら…?」

公爵夫妻の言葉に俺は朝「オーホッホッホッ」と笑いながらランニングしてたフィオナさんを思い出す。

「……楽しそうにされてましたけど」

すると、バンッと扉が開いた。

「父上!! 姉上の安否が判明した聞いたのですが!!」

そう言って茶髪の優しそうな顔の美丈夫が入ってきた。

あ、弟はお母さん似だな。

「──カワグチ殿。紹介する。こちらがフィオナの弟で次期当主のノエルだ」

「初めまして。フィオナ様を保護した者です。こちらは神獣のペロです」

俺の言葉にノエルさんは目を見開いた。

「……よかった。姉上は無事だったんですね」

「ええ。ところで、今丁度、公爵様に説明しようとしてたんですが、こんな事がありまして」

俺は、公爵様がフィオナさんを実は大切に思っていたのがわかったので、全て話してカンデラ家のことは丸投げすることに決めた。

だって、俺が普通にカンデラ家に行っても屋敷に入れて貰えんと思うしめんどいし。

──全部話し終えると公爵が目を丸くする。

「な、なんだと。カンデラ家が魅了の首飾りを男爵令嬢に渡した? さらにその令嬢に王族を魅了させてフィオナを追放させて、後釜に収まった……だと?」

「──許せないわ!!」

公爵夫妻が怒りで震えている。

ノエルさんは悔しそうに拳を握りしめていた。

「はい。しかも、前のご当主の娘さんが監禁されてる噂がある……と、フィオナ様が気にされていて。僕も力にはなりたいですが、この通り貴族でもなんでもないので。──できればカンデラ家の件は公爵様にお願いしてもいいですか?」

俺の言葉に三人が頷いた。

よっしゃーーーーー!!

これで面倒が一つ減った!

「……ああ。それにしても、もうしばらく姉さんに会えないんですね。追放されてしまいましたし。今頃魅了は解けているんでしょうけど、王宮の方で何か発表されるまで、ここには戻ってくることは出来ないでしょうし」

ノエルさんの言葉に俺はキョトンとしてしまう。

「……え? ドラゴンで30分くらい、えーと……。食事を取る時間より少ないくらいの時間で僕の経営する集合住宅まで来れますけど。──様子、見にきますか?」

その言葉に公爵家の三人が顔を見合わせた。