軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【59】 新婚初日とパンケーキ

「あ、フィオナさん、おはようございます」

──次の日。

フィオナさんとペロがまだ寝ていたので俺は朝食にパンケーキを作っていた。

冷凍いちごとと砂糖とレモンと白ワインを煮込んだいちごソースを作り、生クリーム泡立てた後、生地を混ぜていたらフィオナさんが起きてきた。

ちなみに生地には小麦粉と牛乳と卵の他に、溶かしバターとベーキングパウダーが入っている。

「おはようございます……」

少し照れくさそうなのがなんだか微笑ましい。

「もう少しで朝ごはん出来るんで待っててくださいね」

俺が熱したフライパンをぬれぶきんに置いて冷ますと、ジューッという音がした。

その上で生地を流し入れると綺麗な焼き色になるのだ。

普段は面倒くさがりな俺だがそこそこ料理は出来る。

生地を焼きながら紅茶の為にお湯を沸かした。

「出来ましたよー」

パンケーキに生クリームといちごソースをのせて紅茶のポットと一緒にテーブルの上に置く。

すると、フィオナさんの目が輝いた。

「俺の代わりに書類読んでもらったりするんで、朝ごはんくらいは俺が作りますね。今日は役場に行って籍、入れちゃいましょうか」

俺の言葉にフィオナさんがはにかんだ。

「ありがとうございます。そうしましょうっ!」

そう言って二人で「頂きます」と手を合わせた。

すると、ペロがモソモソと起きてきた。

「おお……おはよう。良いものを食べておるな」

そう言ってじゅるりと涎を垂らした。

「ペロの分もあるぞ」

広くなった居間で三人で優雅な朝食を摂っていると、ペロがボソリと呟いた。

「そういえば、いつナーミャに挨拶に行くんじゃ?」

「あー……。今特にすることないからなぁ。いつでも良いんだけど早い方がいいんじゃないかな」

チラリとフィオナさんの方を見ると、頷いた。

「──そういえば、昨日の今日でしたので、まだ両親にカワグチ様と結婚することになった事を話していませんでしたわ。食べ終わったら魔道具で聞いてみます」

食べ終わって俺が食器を洗っていると、フィオナさんが魔道具で連絡を始めた。スピーカーになっているので話し声が聞こえる。

「お父様? フィオナです」

『おお、フィオナか。何かあったか? アルカディアのショッピングモールがナーミャでも話題になっている。私達もまた遊びに行こうと思っているのだが』

「実は、報告したいことがありまして。私、結婚することになりましたの」

フィオナさんがそう言うと受話器の向こうでフォンティーヌ公爵が黙り込んだ。

『それは──。一体誰とだ?! まさかリオネル殿下じゃあるまいな?! 一度お前を酷い目に合わせた相手だぞ? よく考えた方が……』

「違いますわ! カワグチ様です!」

すると、受話器の奥で息を呑む音が洗い物をしてる俺にまで聞こえてきた。

『──っ、よくやった!! そうか、カワグチ殿か!! フィオナ! さすが私の娘だけあって見る目がある! 彼はリオネル殿下よりずっといい! 彼はとても人柄がいいし、とてつもない能力も、持っている!! フィオナを任せる男としてこれ以上の人はいないと思っていた!』

なんと、受話器からフォンティーヌ公爵から大絶賛されているのが聞こえてくる。

え。なんか、照れるんですけど。どこをどうとって俺の人柄が良いと思ったんだろう……。

なんだか胸が 擽(くすぐ) ったくなってくる。

「ふふっ、昨日カワグチ様がプロポーズしてくださったんですの。それで、カワグチ様がナーミャに挨拶に伺いたいと言ってくださいまして。お父様やお母様、それにノエルの都合の良い日を是非教えて頂きたくて」

『そんなのいつでも大歓迎だ! 今日でも明日でも良いぞ!』

そう言われて俺は食器を拭いていた手を止める。

「……婚姻届を出すのはすぐ出来ますし、じゃあ今日すぐ行っちゃいます? その。フィオナさんの体調が悪くなければ」

俺の言葉にフィオナさんの顔がジワジワと赤くなっていく。

「だ、大丈夫ですわっ。──お父様、でしたら、本日お昼前にはいけそうですわ」

三人で外に出ると、凄く良い天気だった。

ペロはテクテク歩きながらワンッと嬉しそうに吠えた。

「……天気のいい日に結婚できて良かったですね」

「ええ、そうですわね」

俺達が役場に婚姻届を出しに行ったら、グレイスさんも出てきて文官達にめちゃくちゃ拍手されてしまった。

恥ずかしいが、なんだか嬉しい。

──ちなみにこの世界は婚姻届と言っても書類に書くのではなくて、特別な魔力が込められている羊皮紙に二人の魔力を登録するらしい。

「──ではここに魔力を一緒に流して下さい」

そう言われて俺たちは手を重ねて魔力を羊皮紙に流す。

その瞬間、不思議なことに羊皮紙に俺たちの名前が金色に浮かび上がった。

「へー……。すごい」

「綺麗なもんじゃのう……」

俺とペロが感心していると、フィオナさんが嬉しそうに笑った。

「美しいですわよね。ナーミャでもほぼ同じなんですが、この羊皮紙に登録するのは、令嬢達の憧れなんですわ」

俺達が話していると、グレイスさんが遠慮がちに尋ねてきた。

「ご結婚おめでとうございます。ところで、こんな時に申し訳ないのですがフィオナ様に仕事の引き継ぎはいつできそうでしょうか?」

そう言われて俺達は顔を見合わせる。

「……そうですわね。今日この後、カワグチ様とナーミャに挨拶に行くことになっているんですの。すぐに帰って来れるからわからないので、五日後はどうかしら?」

すると、グレイスさんが嬉しそうに頷いた。

「はい。ありがたいです。ではおかえりをお待ちしておりますね」

俺達は祝福されながら外に出た。

「あ、そう言えばお土産買ってなかったです。ショッピングモールで買っていきましょうか。ついでに時間取って貰えそうだったらホテルに泊まっているセイン様にも挨拶しましょう」

「そうですわね。ショッピングモールには珍しいものが揃っているので、きっと喜びますわ」

──結局俺たちは、お酒やお菓子、ドーナツやアイスクリームからおつまみまで色々買ってアイテムボックスに入れた。

セイン様も三十分くらいなら会えるとのことで、ロビーで待ち合わせした。

「──やあ、二人とも結婚おめでとう」

セインさんが右手を挙げてきたので挨拶する。

「いえいえ。この度はご迷惑をおかけしてすみません。もし尻拭いでお金が必要になったら教えてください。次に何を建てるか考えましょう。」

「本当にね……」

少しだけ恨みがましそうにセイン様は溜息を吐いた。

「──あと、相談なのですが、貴族は結婚する時相手の家にお金をお渡しすると聞きました。でも僕、現金は貴族はの人たちに比べるとそんなに持っていなくて。ですからフォンティーヌ領に結婚するにあたって何かスキルで建ててあげてもいいですか?」

俺が尋ねると、セイン様が考える素振りをする。

「うーん……。ショッピングモールは微妙かな。これは国家で取り組んでいるプロジェクトだしね。──まあでも、マンションかホテルくらいなら結納金がわりに作ってもいいよ」

その言葉に俺のテンションが爆上がりした。

「本当ですか?! ありがとうございます! 良かった! これで色々悩まなくて済みます」

「他に何かあったりする?」

リオネルさんに尋ねられて俺は頷く。

「フィオナさんと結婚出来ることになったのは、グレイスさんのおかげなので何かしたいのですが」

「うーん。じゃあ、グレイス本人に聞いてみて。ショッピングモールはだめだけど、それ以外ならグレイスにスキルで作ったものをあげていいよ」

──こうして俺たちは色々な人達に見送られて、ナーミャに挨拶に行くことになった。