軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【40】カワグチの秘策。

「か、影武者? マジで?」

思わずほとんど噛んでないのに生ハムを飲み込んでしまった。

「…はい。父本人は王城で今臥せっております。宰相様の一派に毒を盛られたという話もあるのですが、何とも言い難い状況でして」

(うわぁ、ドロドロやん…)

「…じゃあ殆どヴァラの意向としてはラングスチアを侵略しようとしているようなものだな」

そう言ってリオネルさんが顔を曇らせる。

「──実は先日の黒装束の者達は私が闇ギルドに依頼して派遣しました」

ソフィア王女の言葉に俺は目を見開く。

「…え?」

「危害を加えずに、人が見ている前でわざとセイワ共和国の存在を匂わせてほしい…と。

だから、本来であれば彼らにはカワグチ様やラングチスアの王族を傷つけるつもりは元々なかったのです」

(…あー、だからセキュリティが働かなかったのか)

おかしいとは思っていたのだ。ペロがクリームパンを開けただけで激しく反応したセキュリティが、いかにも怪しい人達がホテルによじ登っていたのに全く働かなかった…ということが。

「…なるほど…、そういうことだったんですね。納得」

「──お願いしますっ! どうか、カワグチ様の不思議な力でアルカディアの民と我が国の兵に犠牲者が出ないようにして頂けないでしょうか!

もう、国内には頼れる方々がいないのです!」

そう言われて、俺は神妙な顔をする。

「うーん…わかりました。何か方法がないか考えてみます。ちなみに、宰相様やお妃様がアルカディアに侵攻する計画を立てているのはいつですか?」

その言葉に、彼女が頷く。

「──八日後の正午です。けれど、なるべく私が情報を漏らしたとはわからないフリをして頂きたくて」

「わかりました。…でも、皆さん王城に帰ったのに、ソフィア王女一人だけ近辺の村に残っていたらバレるのでは…」

すると、彼女は首を振る。

「幸い、よく慰問に訪れていた孤児院がありまして。院長先生にもきちんと連絡して情報を漏れぬように頂いている状況です」

眉尻を下げながら不安そうな顔をするソフィア王女にリオネル王子がドヤ顔で言った。

「心配するな。なんとかするから。──な、カワグチ殿」

(いやいや、なんとかするのは俺なんですけど。…この人、何ソフィア王女に勝手にカッコつけてんだよ)

少しイラッとする俺だった。

◇◇

「…そうですか。まさかヴァラがそんな事になっていたとは」

ランチ後に役場までグレイスさんに会いに行った俺は、八日後に攻め込まれる予定である事、そして、ヴァラの国内の意見が真っ二つに割れていることを説明した。

「…一番いいのは侵略された際、こちらが圧倒的な力を見せつけて降伏させるのが一番いいですが…、セイワ共和国相手に果たしてそんな事が出来るのか…」

(しかも、ソフィア王女は無血で…だとか言ってたよな。そんな事本当に出来るんだろうか)

グレイスさんの言葉に俺は考え込んでしまう。

「とりあえず、わかりました。状況をセイン様に早急に伝えさせて頂きます。カワグチ様の方でも何か考えておいて下さい」

そう言われて、俺は頷いた。

──家に帰ると、タブレットを出してスキルに搭載されたAIに話しかける。

(はあ…疲れたな)

とりあえずお茶を入れてベロと一緒に煎餅と一緒に飲みながら一息つく。

平和な日本から来たまたしては、侵略すると言われても、あまり実感が湧かない。

『アルカディアがもし攻め込まれて、敵も味方も無傷にするにはどうすればいい?』

すると、タブレット画面に回答が表示された。

『それは──』

俺はそれ見て、急いでクリスさん達のいる、兵舎へと急いだ。

「カワグチ殿っ! どうされましたか?」

受付にクリスさんに会いたい事を伝えると、すぐに出てきてくれた。

どうやらあのあとグレイスさんからクリスさんにも連絡がいっていたらしく、俺がどう出るか気になっていたらしい。

俺は先程タブレットで提案されたプランをクリスさんに伝えると、彼は目を見開いた。

「…そ、そんな事が本当にできるのですか?」

「はい。けれど、想定以上に敵の武器が多かったり、相手によっては怪我人などが出てしまうでしょう。

俺が前に出るので、騎士団の皆さんには万が一に備えて護衛をして頂いてもよいですか?

あと、クリスさんには敵の来る方角などを正確に予測して頂きたいです」

その言葉にクリスさんが真剣な顔で頷いた。

「──わかりました。カワグチ様に頼りきりになってしまうのは恐縮ですが、なるべく無傷で侵攻を食い止めましょう。

その上で、セイン様にはセイワ共和国と今後について交渉して頂きます」

──その日の夜。

村人や文官や兵士、そしてマンションの住人達には八日後にセイワ共和国国が侵攻してくる事が伝えられた。

住人達は当日はショッピングモールには出勤しなくても良いこと。

そして、外には出ずに地下通路に潜るようにと指示が出された。

俺はアルカディアの住人達の避難に向けて、何か足りないものがあったらすぐに購入出来るように地下通路の真ん中にここに来たばかりに作ったような無人のコンビニ『ペロマート二号店』を作る事にした。

「カワグチ様! ここら辺がいいと思いますわ」

セイワ共和国の侵攻が発表されて心配して訪ねてきたフィオナさんとペロと一緒に、俺は地下通路のどこにコンビニを作るべきか悩んでいた。

「うーん…そうですね。ここにしましょうか」

そういって、俺はタブレットを出す。

『スキルポイントを5消費して、テナント(コンビニエンスストア)を生成しますか?

MPを10消費します。』

そのメッセージにYESを選択した瞬間──。

パアアアッと地下通路の一角が白く輝いて、『ペロマート』というロゴが入ったコンビニエンスストアが出現した。

「まあ、凄いですわっ!!」

そう言ってフィオナさんがウキウキしている。店内に入ってみると、懐かしの無人レジだったが、俺がプレオープン前に改装した通り、カゴを置けば品物の値段が表示される仕様に変更されていた。

(…今見たら、テナントにドラッグストアもあったんだよな)

中には当日不安で具合が悪くなったり、子供がいる家もあるかもしれない。

俺は、ドラッグストアも地下通路にオープンさせる事にした。

パアアアッ!!!

白い光と共にガラス張りのドラッグストアが誕生した。

ガラスには、『ペロドラッグ』というロゴが印刷されている。

「おお!! 店内がよく見えていいのう」

そう言ってペロがご機嫌で店内に入っていく。

そこには薬やオムツなどの日用品のほかに美容グッズや洗剤なども沢山揃えてあった。

「まああ!! これはなんですの?!」

化粧水やクリーム、化粧品を見てフィオナさんが目を輝かせる。

「あー、これはこうやって使うんですよ」

そう言って、マスカラの使い方を教えてあげるとめちゃくちゃ喜んでいた。

(日本で、姉ちゃんがやってたのをよく見てたからな)

「まつ毛が長いですわぁー!!」

言いながら、いろんなコスメを爆買いしていた。やはり、女性なので化粧品が好きらしい。

こうして、俺はセイワ共和国の侵攻に向けて、着々と準備を進めていった。

◇◇

「ついにこの日がきたのう…。」

そして、あっという間に八日間が経過した。

俺は後ろにクリスさんやグレインさんを含む騎士団のメンバーを従えて、ショッピングモールの屋上に立っていた。

「ああ、そうだな」

怖い気持ちがないとはいえないが、俺にはある秘策がある。

(大丈夫だ! きっと出来る!)

俺は拳を握りしめると前を見据えた。

「「来たぞ!」」

グレインさんの言葉で俺は顔を上げてタブレット画面にタッチした。