軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【34】楽園の防衛線。

「リオネルさん! このお菓子、絶対好きだと思います!」

俺は久しぶりに会ったリオネルさんとカレー煎餅を食べながら家からホテルに持ってきたゲーム機で遊んでいた。

ちなみに今日は街を作る系ゲームである。

とは言っても、街を作らず初心者の俺たちは金がないのでひたすら商店で売る用の魚を釣る事に没頭していた。

「…うまい! このカリカリした食べ物にカレーの風味がついているのが最高だな」

バリバリと煎餅を食べながらゲームに夢中になっていて、ペロがいなくなった事に気づかなかった。

「…あれ? ペロ、いなくないか?」

リオネルさんにそう言われて気づく。

「あれ? 本当だ。トイレにもいないっすか?」

「…いないようだが…」

すると、ベランダの方からのそっとペロが入ってきた。

「あれー、ペロ! どうしたん?」

「…ちょっと外の空気を吸いに行ったらハエがいたから追っ払っただけじゃ」

そう言ってペロは少し気まずそうな顔をした。

「そっか! カレー煎餅ペロの分も買っといたぞ。ペロも食えよ」

「ああ、もらおう」

ペロはそう言ってバリバリと煎餅を食い出した。

(うん、良かった。今日もプレオープンだけど平和だわ。皆嬉しそうだし良かったなー)

「そういえば、ナーミャでの仕事が落ち着いたら、私はこの街のナーミャの大使館の代表として常駐する事になった」

そう言って、リオネルさんが嬉しそうに笑った。

「へ? 大使館の代表? へー、異世界にもそういうの、あるんすね。あ、じゃあ一緒にゲームやり放題っすね」

俺の言葉にブンブンと頷いた。

「ああっ、宜しく頼む。まあ国内は兄上がいるからな! 私は第二王子だし好きな事をさせてもらう事になった!」

「結婚相手とかはいいんすか? そういえば、結婚相手決まってなかったですよね?」

俺が尋ねると、リオネルさんは微妙な顔をした。

「…そうなんだよな。それが問題だ。だが、ナーミャで結婚してしまったら私は国内で公爵位を貰うか、その令嬢の家に入る事になってしまうだろう? …出来たらこの街にいたいから、ラングスチアの令嬢と結婚したい」

「そうなんすね。じゃあ婚活も頑張らなきゃいけないですね」

すると、リオネルさんは溜息を吐いた。

「そうなんだよなぁ…。なぁ、どこかこの街に女性と出会えそうな所はあるか?」

「うーん、ていうかこの街だったら住んでるのは村人だけじゃないですかね…。あ、あれじゃないですか?! ショッピングモールが本格オープンしたら、ラングスチアの貴族令嬢をナンパするしかないんじゃないですかね」

俺の言葉にリオネルさんは、目を見開いた。

「…な、なんだそれは? ナンパとはなんだ?」

「あー、好みの子がいたら声をかけるんですよ。『お姉さん、良かったら僕とこれからでかけませんか』って。出来るだけ警戒されないように自然にやるのが大事です。

大丈夫です。リオネルさん、顔がいいのですぐ彼女出来ますって」

すると、ずいっとリオネルさんが迫ってきた。

「もう少し詳しく聞かせてくれ!」

二人でそんな事を話していると、ペロがポツリと呟いた。

「なぁ、カワグチよ。お主、セインに言われた避難場所、早く作った方がいいと思うぞ?」

そう言われて俺とリオネルさんは顔を見合わせる。

「…そうか? そんなに急ぐ必要なんてないんじゃ…」

俺の言葉にペロがずいっと迫ってくる。

「いや、いいから作れ。何かあってからでは遅い」

ペロの声はいつになく真剣だった。

(…んー、ペロって意外にも心配症なのかな?)

「…ま、いいか。んじゃ、作りに行きますかー。リオネルさんも行きましょー」

俺達はエレベーターでショッピングモールの地下に行く。

流石にこの時間だとテナントも閉店しており人はいなかった。

俺がタブレット画面を出すと、

『マンションまでのセキュリティ付き通路、および、各建物のエレベーターを地下まで延長しますか?

MPを200消費します』

と出たのでYESを選択する。

パアアアッと壁が白く眩く光り出す。

あまりの眩しさに目を瞑る。恐る恐る目を開けると、その先に地下通路が出現していた。

「…すっげえ」

地下通路は、通路というより新たな広大な『空間』だった。まるで、日本の都会の地下街のように広々とした空間だった。

作った俺自身も驚いて呆然としてしまった。

隣のリオネルさんは驚きすぎたのか、無言のまま固まってしまっている。

「──確かにこれは凄いのう」

地下通路はきちんと歩きやすいように照明があり。清潔感があった。広場や休めるようなところまである。

所々にあるエレベーターは俺なら今まで作った建物と繋がっているのだろう。

兵舎に繋がっていると思われるエレベーターはセキュリティゲートがあり、関係者しか入れなくなっているようだ。

「リオネルさん、大丈夫ですか?」

俺が顔を覗き込むと、彼がハッとした顔をした。

「…ああ」

「せっかくだからマンションまで行ってみますか」

そう言って三人でぶらぶらと歩いて行く。

──どうやらスカイファームタワーもエレベーターで繋がっているようだ。

「あ、多分あれっすね」

見ると、役場と文官用マンション、それに俺達の住んでいるマンションが繋がっていた。

だが、マンションの前には指紋認証があり、認証されれば自動ドアが開く仕組みになっていた。

「入ってみるのじゃ」

そう言って、ペロが肉球を差し出すと自動ドアが開いた。

中は空港のラウンジのように椅子や机、それにソファが立ち並び、ドリンクバーやトイレ、おむつ替えスペースなどがある作りになっている。

本や雑誌やマッサージ機、軽食まで置いてある。

「おお、これなら地下に逃げ込めば安心だな。特にやる予定ないけど、勉強とかするのにも良さそうだな」

そう言って俺はふかふかのソファにダイブする。

せっかくなので、リオネルさんと俺、それにペロでコーヒーやジュース飲んでからグレイスさんに報告に行く事にした。

ピンポーン。

俺達がグレイスさんの部屋のインターホンを鳴らすと、テレビモニターを見たのかグレイスさんが慌てて飛び出してきた。

「なっ、カワグチ様! それにペロ様と隣国のリオネル王子まで、一体どうしたんですか?!」

そう言われて俺はへらりと笑う。

「あー、あの。敵が来た時用の避難場所。作っときました。」

その言葉にグレイスさんは目を見開いた。

「…は?」

◇◇

「…な、なんですか!! これはー!!」

ラウンジと地下通路を案内すると、グレイスさんが絶叫した。

「すんません、ペロが早めに作っとけって言うので事後報告になっちゃいました。地下なら外で戦ってても安心かなーなんて…」

俺の言葉にグレイスさんが目をくわっと見開いた。

「それはそうですけど…!! 夕飯のおかず余ったんで持ってきましたみたいな気軽さで、地下通路を作らないで下さい!」

「あー、なんかすみません…」

すると、グレイスさんがブツブツこんな事を言い出した。

「…今すぐセイン様に報告して、グレイン様にも報告しなくては…」

──すると、十五分もしないうちに二人が慌ててやってきた。

「これは凄いな…!!まさか地下にこれほど広大な空間を作ってしまうとは!」

そう言ってセインさんが両手を開いてぐるりと周りを見渡した。

だが、グレインさんは少し心配そうな顔をした。

「…確かに外での戦いを住人達が避けるのにはいいだろうが、逆に敵に入り込まれたら厄介なのでは?

ショッピングモールや役場とも繋がっているのだろう?」

「大丈夫ですよ。セキュリティゲートになっていて、住んでいる人以外入れないようになってるんで!

まあ、役場とか公共の場は誰でも入れるようになってますけどね。しかも、この通路、セキュリティ利いてるらしいんで」

俺の言葉にグレインさんは少しホッとした顔をした。

「──そうか。まあ、それなら構わないが」

こうして、ショッピングモールのプレオープンの日、地下通路もこの街に誕生する事になった。