軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【28】万引犯を検知しました。

「んー、そもそもどうして、僕が領主に相応しいと思うんですか? 僕、貴族でもなんでもないのに」

すると、グレイスさんは眉尻を下げる。

「まず、カワグチ様は異世界人で特殊な能力を持っていますよね? あと、街の公共物を作っているのもカワグチ様です。それなら特例として貴族と同じくらいの地位と見られる事は多いのですよ。それに、領主になっても住民を住みよくして、街をつくる──ほら、別にやる事は変わらないんですよ?」

「えー、でも、余計なデスクワークとか増えますよね?それがやりたくないんで。その為にマンション貸してたんですよ……」

あ、なんか、グレイスさん、困ってるな……。

「まあ、文官達がもちろんサポートすることにはなりますが。判子を押すだけでも嫌ですか? それ以外は貴方に自覚は無くても、結構きちんと今の時点で領主の仕事はされてると思うんですが…。それに、他に領主が出来たとして色々口を出されるのも面倒だと思いますよ?」

あ、確かにそれはそれで面倒くさそうだな……。

いろいろ聞いて、一番面倒くさくなさそうなところで妥協しよう。

「……判子だけ押せる人、雇うとかまずいですよね?」

俺はまずいとわかっているものの、一応ダメ元で言ってみる。すると、フィオナさんが困惑した顔をする。

「カワグチ様。それはさすがにまずいと思いますわ。せめて内容くらい読んでから判子を押さないと」

「あー……やっぱりそうですよ、ね」

俺が困っていると、グレイスさんが頷く。

「まあ、私の方でもセイン様に相談してみます」

そうだ。もしかしたらセインさんがなんとかしてくれるかも!

「あ、そうですよね。プレオープンの日にセイン様来るんでしたっけ」

「ええ、いらっしゃいます」

おお、じゃあその時に相談すれば良いな!

ということで、街の名前や領主問題は保留になった。

◇◇

「す、すごい…!! 畑が空に浮いてる……」

「なんですかここは……! 見たこともない高い建物や透明な建物がいっぱいだ」

フィオナさんとペロと役場の噴水前のベンチで肉まんを食べてだべっていると、お昼過ぎに元エレイン村の村人達がコンビニ前に着いた。

ちなみにグレイスさんは村人達のお昼を用意したり忙しそうである。

「其方館はこれからこの街に住むことになる。先程お目にかかった者もいるかもしれないが、ここを開発してくださっているカワグチ殿だ。そして、神獣のペロ殿だ」

グレインさんに紹介されたので俺が前に進み出る。

「あ、どーも今日は。カワグチです。皆さんの家はもう用意したんで、お昼を食べたら案内します。グレインさん、グレイスさん。エレイン村の皆さんは役場のカフェテリアでご飯食べる感じですか?」

「そうですね。」

グレイスさんの言葉に頷く。

「あー、じゃあ食べ終わったらまた魔道具で呼んでください。皆さん、困ったことがあったら基本エレイン村の村長さん経由で僕に伝わるんで、何かあったら村長さんにお願いします。それではまたあとで!」

俺はフィオナさんとペロとショッピングモールに遊びに行くことにした。

「アイスクリーム屋がオープンしたみたいなので行きません?」

「まあ! コンビニのものとは違いますの?」

フィオナさんが目を丸くしているので俺は頷く。

「いろんな味があるんですよ! それにコンビニのものとはまた違うと思いますよ」

「それは楽しみじゃっ! 其方のマンションに住んでから美味いものばかり食べておるのう」

ペロがブンブン尻尾を振っている。

三人でアイスを買ってフードコートでゆっくりする。

俺はレインボーカラーのぱちぱちキャンディの入っているアイス。ペロはレモンマシュマロアイス。フィオナさんはチョコレートアイスにブラウニーが入っているアイスを頼んだ。

「まあ! カワグチ様っ、なんだかコンビニのアイスも美味しいですけどこちらの方が濃厚な気がしますわ」

「あー、特にフィオナさんのは中にブラウニーっていうチョコレートケーキも入ってますからね」

「さっぱりしているのにまるで本当の果物のような酸味と甘みがあって最高じゃっ」

ペロも気に入ったようであっという間に完食してしまった。

ちょうどアイスを食べ終わった頃に、魔道具にグレイスさんからあと10分くらいでショッピングモールに着くと連絡が来た。

「あー、じゃあ手を洗ったら行きましょうか」

こうして午後はエレイン村の住人達の案内をする事になった。

◇◇

「うわぁっ!! なんだこれ?!」

村人達が何を案内してもいちいちびっくりしてくれるのが毎度のことながら少し楽しい俺だった。

「はーい、じゃあここから皆さんの村だった住宅街にいけまーす」

百均の後ろにできた自動ドアを通りセキュリティチェックを通ると橋を渡れるように仕組みになっている。

──ちなみに俺のマンションの住人や俺の魔法で改装された住宅に住む者は生体認証で通れるらしい。

「な、なんなのこの高さの橋は!!」

「しかもめちゃくちゃ幅が広いっ!」

村人達は恐々と柵から街を覗き込んで驚いた顔をしている。

「見て! あの建物! 空に畑が浮いてるわ」

「あ、エレイン村の農家さん用にも同じものを作るので。あとで農家をやる方は村長経由でグレイスさんに申し出てください。明日以降に畑を出しますんで」

俺の言葉で何人かが呆然としながらも頷いた。

『エレインタウン』に着くと、何人かが歓声を上げた。とりあえず移動用のエレベーターの使い方だけ教えると、あとは文官達にバトンタッチした。

子供達は嬉しそうに走って公園の遊具を使い、大人は自分達の家があるのを見てホッとした顔をしている。

「カワグチ様。村長のディグレーです。なんと御礼を申し上げたら良いか……」

「あ、全然ですよー。それより何か不便や困ったことがあったらグレイスさんに言って下さいね。

取りまとめて可能なことなら対応しますんで」

そう言うと皆さん頷いてくれた。

「家の中が綺麗になってる!」

「見たことのない魔道具があるぞ」

あ、そうか、家電の使い方を教えなきゃならないのか……。

俺はグレイスさんの方を向く。

「魔道具の使い方については文官さん達の方で説明して貰っていいですか?」

「はい。勿論です」

「あとは、エレインタウンの人達にショッピングモールについても説明して、中を案内してください。とりあえず明日以降に働ける人から面接を始めて頂けると……」

俺はお辞儀すると、ペロとフィオナさんと一緒にマンションに戻ることにした。

◇◇

「ねえ、カワグチ様。今頃ショッピングモールは大丈夫でしょうか?」

ペロとフィオナさんと俺の部屋でホラー映画を見終わった後、フィオナさんがそんな事を言い出した。

「んー、大丈夫じゃない?」

俺がテキトーに答えるとペロも首を傾げた。

「だがのう。いきなり人口も増えたからトラブルになってないといいが」

「ええ……今までは全然お客様はいなかったでしょうけど。きっと引っ越してきてすぐに足りないもののお買い物に行ってますわよね……」

そう言われると、流石にちょっと心配になってきた。

「──じゃあ、様子を見に行ってみますか」

三人で再びショッピングモールに向かう。

……俺らも暇人だな。

さっきから家とショッピングモールの往復しかしてない。

そんな事を思って歩いていると、目の前にタブレットが出てきた。

『管理人権限:万引犯を発見。 防犯レベル1作動。──実行しますか?』

……まじかー。

エレイン村の人……?

なんか悲しい。とりあえず拘束っと。

YESを選択すると、店内から外にも聞こえるくらいのボリュームで警告音が聞こえてきた。

ビー!! ビー!! ビー!!

『──万引犯への攻撃を実行します』

遠くから悲鳴が聞こえてきて店内が騒然としている。

「──あっちだ!!」

俺達は店内に入ると、ペロとフィオナさんと一緒に声が聞こえた方向に駆け出していった。